爆速のカレンエクスプレス
「……あ! そういえば、ですぅ……!」
カサートまでの「馬車で5日〜6日」というヒルダの言葉に絶望しかけていた鈴でしたが、ぽん、と手を叩いて何かを思い出しました。
「鈴殿、何か良い方法でも?」
不審そうに尋ねるヒルダに、鈴はきらきらと目を輝かせながらカレンを振り返りました。
「カレンさん、前に本来なら馬車で2日〜3日かかる港町ヒトミノジから、アステリアまでの距離を……わずか30分くらいで駆け抜けてくれましたよねぇ?」
「クウーン!?」
カレンは「あ、あの時の爆走を覚えているの!?」と言わんばかりに、リボンを揺らして胸を張りました。レベル700、さらにサウナで鍛え上げられたその脚力とスタミナは、普通の馬とは比較になりません。
「そうですぅ! 今回もカレンさんに運んでもらいましょう! そうすれば5日どころか、あっという間に着いちゃいますぅ!」
「な、なるほど……。レベル700の魔物の脚力なら、確かに常識外の速度が出せますが……しかし鈴殿、むき出しのままあの速度で運ばれたら、風圧と振動で我々の体が消し飛んでしまいますよ!?」
ヒルダが冷や汗を流しながら正論を突くと、鈴はフフンと不敵に微笑みました。引きこもり聖女、逃げ足と移動の快適さに関する引き出しだけは、レベル501の頭脳がフル回転するのです。
「大丈夫ですぅ! 猫神様、ちょっとお外(ダンジョンの外)に出てきますねぇ!」
「おう、いってらっしゃい。何をするか楽しみだよ〜」
一行は一旦、猫神様の隠しダンジョンの外へと移動しました。清々しいアステリアの森の空気が広がるなか、鈴は腰に下げたポシェット――神話級の収納力を持つマジックバッグ【深海の深淵】に手を突っ込みました。
「えいっ! 出てきてください、【カレンエクスプレス】ですぅぅ!」
ズゴゴゴゴゴゴ……!!!
鈴がバッグから取り出したのは、普通のお洒落な馬車……ではありませんでした。
カレン用・超音速完全密閉型キャリッジ(装甲馬車)。魔導結界による風圧相殺機能と、極厚のクッションによる完全耐震構造を備えた、まさにカレン専用の超特急車両です。
カレンは「待ってました!」とばかりに自らカレンエクスプレスの牽引フックに体を固定し、女神様から貰ったピカピカの赤いリボンをバチバチと鳴らしました。
「これなら風圧もガタガタもへっちゃらですぅ! ヒルダさん、セイナさん、乗り込んでくださいぃ!」
「す、鈴様、これに乗るですぅ!? なんだか凄くワクワクするですぅ!」
パタパタと飛び回る天使(小)セイナと、観念してシートベルト(魔導製)を締めるヒルダを乗せ、カレンエクスプレスはいつでも発進可能な状態に。
「カレンさん、もの作りの街カサートへ、安全運転(最高速度)で出発進行ですぅ!」
「クウーンーーーッ!!」
ズバァァァン!!! と爆音を響かせ、アステリアの森を文字通り「音速」で駆け抜けていくカレンエクスプレス。馬車で5日の距離を数時間で踏破せんとする、規格外の親友救出(?)ドライブが今、幕を開けるのでした!
現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
| 桜井 鈴 | 【快適なドライブ】 | カレンエクスプレスの中で、お茶を飲みながら「やっぱりこれが一番ですぅ」と笑顔。 |
| カレン | 【超音速爆走中】| レベル700のフルパワー。真っ赤なリボンをなびかせ、大地を爆進。 |
| ヒルダ | 【G(重力)に耐え中】| 窓の外の景色が音速で流れるのを見て、「本当に数時間で着いてしまう……」と硬直。 |
セイナ | 【車内飛行】
「はやい、はやいですぅー!」と車内をパタパタ。 |
|ミィア|目まぐるしく変わる景色に驚いている|
| 猫神様 | 【お留守番】| ダンジョンのコタツで「あいつら、相変わらず無茶苦茶だ」と笑っている。 |




