フニャフニャの女神様
「……あ、あぁ……。神界の……激務が……どうでもよくなっていく……。私は、創造神……? いえ、私は今、広大なエーテルを漂う一粒の星屑……」
サウナを堪能し、鈴の聖水の水風呂へドボンと浸かった女神様は、現在、テラスのベンチでだらしなく口を開けて完全に魂が抜けた顔をしていました。
レベル501の聖女の魔力と、レベル700のカレンの熱波、そして極上の聖水風呂による超コンボの前に、神界の激務でガチガチだったお堅い思考も、すべてが消し去られてしまったのです。
「ふふ、女神様、すっかりととのっちゃいましたねぇ」
「本当ですぅ! お顔がフニャフニャですぅ!」
鈴とセイナのぬいぐるみがクスクスと笑いながら見守るなか、数分後、ようやく魂が肉体に戻ってきた女神様は、シャキッと立ち上がって至高の笑顔を浮かべました。
「素晴らしいわ、桜井 鈴……! 体が羽のように軽いわ。これでまた数千年は神界の激務を戦えるわね! それじゃあ、私はそろそろ神界へ戻るわ。また有給休暇が取れたら、このサウナに突撃させてもらうわね!」
「はいですぅ! いつでもお待ちしていますねぇ!」
女神様が空間の穴へと戻ろうとしたその時、鈴はサウナ室の外でずっと照れくさそうに毛繕いをしていた猫神様の元へ、トトトッと駆け寄りました。
「……猫神様」
「ニ、ニャんだよ鈴、急に改まった顔して……」
鈴はしゃがみ込むと、驚く猫神様の小さな体を、両手で優しく、そして力いっぱい抱きしめました。
「ふにゃぁぁ……! 猫神様、あの時、魂だけになったわたしを助けてくれて、女神様のところへ連れて行ってくれて……本当に、本当にありがとうございましたぁ……っ! わたし、猫神様のおうちの居候になれて、毎日とっても幸せですぅ……!」
「――っ!? にゃ、何を言う……! 我が子をトラックから庇ってくれたのは鈴だ! だから当然のことをしただけ……って、ちょっと苦しい、鈴! あんたレベル501だから地味に抱き締める力が強いー!」
「ふふふ、照れ隠しですぅ!」
顔を真っ赤にしてジタバタする猫神様をぎゅーっと抱きしめる鈴を見て、カレンも「クゥ~」と嬉しそうに鼻を鳴らし、セイナのぬいぐるみもパタパタと二人の周りを飛び回ります。我が家には、これ以上ないほど温かい絆の空気が満ちていました。
そんな感動的な光景を微笑ましく眺めていた女神様は、「あ、そうだわ」と、空間の穴に片足を入れた状態でポンと手を叩きました。
「そうそう、すっかり忘れていたけれど。ちょっとしたおまけの情報よ」
「ふぇ? おまけ、ですかぁ?」
猫神様を抱っこしたまま鈴が首をかしげると、女神様は実に楽しそうに、そしてなかなかの衝撃発言をさらっと口にしました。
「あなたが生前、前の世界で一番仲の良かった親友の『御坂 風』ちゃん。あの子もこっちの世界に数日前に転生させたわよ。今はもの作りの街として有名な『カサート』っていう場所にいるわ。それじゃ、バイバ〜イ!」
「………………は?」
鈴の思考がピキッと停止しました。
御坂 風――生前、引きこもりがちだった鈴の数少ない理解者であり、いつも一緒に遊んでくれた、あの元気な大親友の女の子「風」のことでしょうか。
「え……あの……女神様!? 風ちゃんがカサートにって、どういうことですかぁぁ!? ちょ、ちょっと待ってくださいぃぃーーーっ!!」
鈴が慌てて手を伸ばした瞬間、女神様はひらひらと手を振りながら、空間の穴と共に綺麗さっぱり消滅してしまいました。
あとに残されたのは、静まり返ったダンジョン最深部と、
「か、風ちゃんが……この世界に……!?」
と、衝撃の事実を前にガタガタと震え、完全におめめを回して卒倒しかけている聖女の姿だけでした。
安全で平和だったはずの引きこもりライフに、新たな大波乱(親友の転生)の予感が漂い始めるのでした――!
現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
| 桜井 鈴 | 【衝撃でフリーズ】 | 猫神様を抱っこしたまま白目。「風ちゃんが……もの作りの街に……!?」 |
| 猫神様| 【抱っこされ中】 | 鈴の腕の中で「苦しい…って、風って誰だ!?」と困惑。 |
| セイナ&カレン| 【キョトン】 | 「風様……? 鈴様のお友達ですかぁ?」「ガルゥ?」 |
| ヒルダ| 【メモ準備】 | 「カサートの街に、鈴殿のご友人が……。すぐに調査の手配をせねば」 |
| 女神様 | 【神界へ帰還】| ととのった最高のお肌で「あ〜スッキリした!」と激務に復帰。 |
女神様が去り際に残していった超弩級のサプライズ! 鈴の大親友「御坂 風」が、もの作りの街カサートに転生していることが判明しました。




