猫耳通信機
「……ふにゃぁぁ。本当に、本当に怖かったですぅ……」
嵐のような乱入者たちが去り、静まり返った自室で、鈴はベッドに力なく倒れ込みました。
カレンがその巨体で寄り添い、頭の上の髪を大きな舌でペロペロと優しく舐めて慰めています。
「鈴様、もう大丈夫ですぅ! 悪い人たちはヒルダ様がしっかりお外へ追い出してくれましたからねぇ!」
背中に生えた可愛い羽をパタパタさせながら、セイナのぬいぐるみが鈴の頬へポフッと着地します。
「ふふ、セイナさん、カレンさん、守ってくれてありがとうございますぅ……。でも、シオンさんたち、またいつあんな風に急にお部屋の前に現れるか分からないと思うと、怖くて夜も眠れませんぅ……」
涙目でガタガタ震える鈴を見て、一緒にお説教を終えた猫神様が「フンッ」と鼻を鳴らしました。
「心配ない、鈴。あいつらの無法っぷりには本気で頭にきたからね。二度とこんなことが起きないよう、『帰還の肉球』に強力なロックをかけてやった!」
「ロック……ですか?」
「そうだ! これからは、今さっき作ったこの『猫耳通信機』を使わないと、我が家への転移は絶対にできない仕組みにしたよ!」
猫神様が肉球で差し出したのは、小さな猫の耳の形をした、なんとも可愛らしい魔道具でした。
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翌日:アステリアの宿屋(サウナ別館)
「……うぅぅ、わたくしとしたことが、なんという過ちを……。鈴様に嫌われてしまったら、わたくしはもう、何を楽しみにサウナに入ればいいのですの……っ」
「フィオナ王女、絶望している暇はない。没収処分を免れるためには、今後は一切の慢心を捨て、鉄の規律に従うしかないのだ……」
宿屋の一室で、絵に描いたようにシュンと落ち込み、魂の抜けた顔で床を見つめているフィオナ王女とシオン。そこへ、ガチャリと甲冑の音を響かせて、お目付け役のヒルダがやってきました。その手には、猫神様から預かった魔道具が握られています。
「お二人とも、猛省しているようですね。……鈴殿から伝言です。『次におうちに直接入ってきたら、本当に着信拒否(出禁)にしますぅ』とのことです」
「「ひぎゃあああーーーっ!!」」
二人が同時に悲鳴を上げて頭を抱えます。ヒルダはそんな二人へ、猫耳の形をした小さな魔道具を差し出しました。
「ですが、商業ギルドのエリーゼ殿から正式な許可をもぎ取った功績は認め、この『帰還の肉球』の正式な所有を許可します。
……ただし、これからは猫神様特製の『猫耳通信機』で事前に我が家へ連絡を入れ、鈴殿か猫神様の【許可】を得てからしか、帰還の肉球は発動できない仕組みになりました」
「通信機……ですか?」
シオンがメガネを押し上げて、その可愛らしい猫耳型の魔道具を受け取ります。
「そうよ。もし事前の連絡なしに転移を試みたら、強制的にアステリアのドブ川へ叩き落とされる術式が組まれている!」
通信機から、猫神様の声がスピーカーのように響き渡りました。
「な、なるほど……。つまり、完全にこちらの行動が管理されるわけだな」
「当然だ! 鈴の引きこもりライフの平和を守るため、お前たちは『完全アポイント制』ニャ! 分かったら、その通信機でちゃんと許可を取ってから、サウナの定例報告に来ることだ!」
「分かりましたわ……っ! 鈴様に二度と嫌われないため、そしてサウナの平和のためなら、事前申請などいくらでもいたしますわぁー!」
フィオナ王女は涙を流しながら猫耳通信機をギュッと抱きしめ、シオンも「通信機能付きの魔導具か……さすがは神の技術、素晴らしい性能だ」と、新たなルールに完全に服従することを誓うのでした。
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現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
| 桜井 鈴&セイナ | 【安心の引きこもり】 | 自室。完全アポイント制になり、「これでお部屋の平和は守られましたぁ」と笑顔。 |
| シオン&フィオナ | 【完全服従・ルール厳守】| 宿屋。猫神様特製の『猫耳通信機』を宝物のように扱い、次回の連絡の練習中。 |
| 猫神様&ヒルダ| 【防衛成功】 | 「これで勝手に入ってきたらドブ川行き!」「良い薬になりましたね」 |
| カレン | 【のんびり】 | 鈴のベッドの横で、静かになった部屋を満喫してゴロゴロ中。 |
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「ふにゃぁぁ……。これでもう、急に変な人が入ってくることはありませんねぇ、セイナさん」
「はいですぅ、鈴様! これからはずーっと、静かにおいかけっこができますねぇ!」
猫神様の爆速DIYによる通信機のおかげで、完璧なセキュリティを手に入れた鈴の我が家。
二人がルールを守ることで、ようやく「アステリア支店サウナ」も正式に始動できそうです!




