商業ギルド長エリーゼ
「……はふぅ、いい湯加減でしたぁ……。やっぱり、カレンさんと一緒に入るお風呂が一番落ち着きますねぇ……」
ピュア・アクアの風呂でしっかりと汗を流し、すっかりリフレッシュした鈴は、バスタオルを体に巻き、濡れた髪を拭きながら脱衣所へと戻ってきました。
「お疲れ様でした、鈴様! お体、冷えないうちに早くお洋服を着るですぅ!」
脱衣所のカゴの上から、羽を生やしたセイナのぬいぐるみがパタパタと飛び立ち、鈴の周りを嬉しそうに飛び回ります。
「ふふ、ありがとうございます、セイナさん。……あぅ、大広間の方がなんだか急にガヤガヤし始めましたねぇ? シオンさん達が戻ってきたのでしょうかぁ……?」
鈴が不思議そうに首をかしげ、お気に入りの部屋着に着替えてカレンと一緒に自室の扉を開けた、まさにその瞬間でした。
「この度は、商業ギルドの無礼をお許しくださいまし!!」
「ひぎゃあああああああ!? な、何ですかぁぁぁーーーっ!?」
部屋の前に立っていたのは、ヒルダだけではありませんでした。
サウナと聖水風呂で限界まで「ととのい」、すっかり毒気が抜けて信者へと脳内変換された商業ギルド長、エリーゼが、シオンの帰還の肉球で我が家に勝手に入ってきていたのです!
ヒルダの紹介で鈴がサウナの考案者としるエリーゼ
エリーゼは目を爛々と輝かせて鈴の前に平伏しました。
「あの奇跡のサウナ、そして潤い……! 街の経済を預かる身として、あなた様のような素晴らしい御方を疑ってしまった我が身が恥ずかしい! これからは商業ギルドの総力を挙げて、あなた様のサウナをバックアップいたします!」
「ふ、ふにゃぁぁ……! 怖そうな人が急にお部屋の前に押し寄せてきて、大声で迫ってきますぅぅ……! カレンさん、助けてくださいぃぃ!」
突然の「鉄の女(だった人)」の猛アタックに、引きこもり聖女のライフは早くもゼロ寸前。鈴はカレンの大きな背中の後ろにがばっと隠れ、涙目でガタガタと震え出しました。
浮遊するぬいぐるみと、エリーゼの勘違い
その時、大混乱の空気のなかに、パタパタパタ……と小さな羽音が響きました。
鈴のピンチを察したセイナのぬいぐるみが、鈴の頭の上を庇うようにして、お風呂周辺の廊下を自由自在に飛び回ったのです。
「鈴様にそれ以上近づいちゃダメですぅ! 鈴様がびっくりして困ってますぅ!」
ぬいぐるみが空を飛び、ハキハキと言葉を発したその光景に、衝撃を受けていたのはエリーゼでした。
「……っ!? ま、まさか……あのお姿、あのみずみずしくも神聖な魔力の気配は……『天使族』……ですか……っ!?」
エリーゼはゴクリと息を呑み、飛び回るセイナのぬいぐるみを仰ぎ見ました。サウナで脳内物質が出まくっているエリーゼの目には、パタパタと飛ぶ姿が、伝説の神聖な種族に見えてしまったのです。
「……いや、しかし……」
エリーゼはハッと我に返り、眼鏡を指でくいっと押し上げました。
「天使族にしては……いくら何でも小さすぎやしませんか……?手のひらサイズというか、完全にただの熊のぬいぐるみ……」
「ぬいぐるみの天使さんですぅ! 鈴様が魔力をたくさんくれたから、こうして自由に飛べるようになったんですぅ!」
「魔力によって具現化した、手のひらサイズの天使族……! やはりあのサウナの聖水といい、この御方は本物の神の使い……!」
「違いますぅぅ! ただのおうちのお人見知り聖女ですぅぅ! お願いですから皆さん、一度落ち着いてくださいぃぃー!」
お風呂上がりでさっぱりしたはずなのに、エリーゼの勘違い暴走とストーカーたちの熱視線に挟まれ、鈴の我が家は本日一番の怒涛のパニックに包まれるのでした。
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現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
| 桜井 鈴| 【パニック】 | お風呂上がりにエリーゼの直撃を受け、カレンの後ろで泣きそう。 |
セイナ| 【天使族?】| お風呂周辺をパタパタ飛行中。エリーゼに「小さい天使」と勘違いされる。 |
| エリーゼ(商業ギルド長) | 【信者化・暴走】| 空飛ぶセイナを見て、完全に聖女信仰へ。 |
| シオン&フィオナ | 【便乗】 | 「見ましたこと!? これが鈴様の奇跡ですわ!」|
| ヒルダ&猫神様| 【苦笑い】| 「止められなくてすみません…」「まあ、許可書は取れたから結果オーライニャ!」 |




