へとへとの鈴
「エリーゼ殿、サウナの効能をそれほどまでに理解していただけて光栄です。ですが、このサウナの大本は、鈴殿の慈悲によるもの……」
テラスのベンチで「はふぅ……」と完全に骨抜きになっているエリーゼを見届けながら、ヒルダは居住まいを正して言いました。
「商業ギルドの正式な許可が下りたとなれば、すぐにでもこのサウナをアステリアの公式施設として稼働させたいところ。……私は一度、我が家(猫神様のダンジョン)へ戻り、鈴殿に事後の報告と、街のサウナとの本格的な魔力接続の許可を取りに行ってまいります。シオン殿、王女殿下、ここは任せましたよ」
「ええ、よろしくてよヒルダ! わたくしたちはこの鉄の女……いえ、エリーゼさんが完全に元の社会に復帰するまで、ここでサウナの素晴らしさを語り合っていますわ!」
サウナとピュア・アクアのコンボで超・完全復活を遂げ、エルザを論破したフィオナ王女はすこぶるゴキゲンです。
ヒルダは二人に小さく一礼すると、首にかけた『帰還の肉球』に魔力を込め、一足先に我が家へと転移していきました。
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その頃、我が家(猫神様のダンジョン)
外の世界でサウナの歴史が大きく動いていた頃――
鈴の自室では、ようやく感動の「おいかけっこ」の幕が閉じようとしていました。
「は、はぁ……っ、ふにゃぁぁ……! せ、セイナさん……もう、もう動けません、疲れちゃいましたぁ……っ」
鈴はベッドの上に大の字になって倒れ込み、大きく肩を上下させていました。
いくらレベル501の規格外とはいえ、中身は運動不足の引きこもり美少女です。自分の意思でパタパタと部屋中を縦横無尽に飛び回るセイナのぬいぐるみを全力で追いかけ回した結果、完全にスタミナが切れてしまいました。
「ふふふ、私の勝ちですぅ、鈴様! でも、たくさん運動して、とっても楽しかったですぅ!」
羽をパタパタさせながら、ベッドの鈴のすぐ横に着地するセイナのぬいぐるみ。
そこへ、大広間で二度寝を満喫して完全にととのっていたリボンベアのカレンが、のっしのっしと部屋に入ってきました。鈴の「ふにゃぁ……」というお疲れの声を敏感に察知したようです。
「クウーン……(鈴、たくさん走って汗かいちゃったね。お風呂、一緒に入ろ?)」
カレンは大きな頭を鈴の体にすりすりしながら、優しくお風呂へと促します。
「あぅ……カレンさん。そうですねぇ、汗をかきましたし、セイナさんとの競争でもうヘトヘトですぅ……。よし、カレンさん、一緒にお風呂に入りましょうぉ……」
鈴は起き上がると、パタパタと嬉しそうに後をついてくるセイナのぬいぐるみを脱衣所のカゴへ優しく置き、カレンと一緒に自室の奥にある専用の極上お風呂へと向かいました。
ピュア・アクアの聖水がなみなみと注がれた湯船に、カレンのふかふかの背中に寄りかかりながら、どっぷりと浸かる鈴。
「ふにゃぁぁぁ~~~~~……。極楽、極楽ですぅぅぅ……」
サウナの熱気とはまた違う、静かで優しいお湯の温かさが、鈴の疲れた体を芯からじんわりと癒やしていきます。カレンも「クゥ~」と気持ちよさそうに目を細め、鈴の小さくて白い背中を大きな肉球で優しくぽんぽんと叩いていました。
そんな、世界で一番平和で無防備な「癒やしのお風呂タイム」が始まったまさにその時。
大広間へと転移で戻ってきたヒルダが、ガタゴトと甲冑の音を響かせながら、鈴の部屋の前へと近づいてくるのでした。
「鈴殿! 戻りました! 商業ギルドのエリーゼ殿の攻略に成功いたしましたので、ご報告に――……ハッ、お風呂中ですか!?」
外でサウナの虜になったエリーゼが、押し寄せてくる未来など、今の湯船の中の鈴はまだ、これっぽっちも気づいていないのでした。
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現在の状況
| 登場人物・場所 | 状態 | 現在の様子 |
| 桜井 鈴&カレン| 【極上のお風呂タイム】 | 自室のお風呂。カレンの背中にもたれて「ふにゃぁ~」と完全脱力。 |
セイナ| 【お留守番】 | 脱衣所のカゴの中から、「鈴様、お湯加減はいかがですかぁ?」と声をかける。 |
| ヒルダ | 【報告・お預け】| 鈴の部屋の前まで戻ってきたが、お風呂中と知って廊下でソワソワ。 |
最高の休日を締めくくるお風呂タイムに入った鈴ですが、外では「鉄の女エリーゼ」がすっかりサウナ(と鈴の聖水)の魅力に取り憑かれ、新たな嵐の予感が漂い始めています!




