鈴冒険者剥奪の危機
「……ただいま戻りましたぁ、鈴殿」
「もー、あの変態魔導師しつこすぎニャ! 追い払うのに一苦労だったニャ……」
ヒルダとミィアがダンジョンに帰還すると、鈴はセイナ(ぬいぐるみ姿)を抱きしめたまま、ホッと胸をなでおろしました。しかし、二人の表情はどこか晴れません。
「……あの、鈴殿。ついでに冒険者ギルドに寄って情報を仕入れてきたのですが……少々、困ったことになっています」
ヒルダが真剣な面持ちで切り出しました。
冒険者資格の危機!
「えっ……困ったこと、ですかぁ?」
「そうニャ! 鈴の『冒険者ランク』が、このままだと剥奪されちゃうかもしれないんだニャ! ギルドの規約で、一定期間なんの依頼もこなしてないと、幽霊会員として登録が消されちゃうらしいニャ!」
「ひ、ひぎゃあああ!? そ、そんなの困りますぅ!! 私、一応レベル479ですけど、肩書きがなくなったらただの『引きこもり少女』になっちゃいますぅ!!」
鈴はガタガタと震え出しました。せっかく手に入れた冒険者の証。それがなくなるのは、彼女にとって社会との唯一の繋がりを断たれるような恐怖でした。
「……仕方ありません。恥ずかしいですけど……外に出て、何か依頼を受けなきゃですねぇ……」
鈴は涙目になりながら、しぶしぶと重い腰を上げる決意をしました。
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一方、王都セントシャイア:王宮の広間
その頃、豪華絢爛な玉座の前では、フィオナ王女が深々と頭を下げ、父である国王から烈火のごとき説教を受けていました。
「フィオナ! 休暇と称してアステリアへ行き、港町ヒトミノジにも行ったそうだな
長期間不在にするとは! 王族としての自覚が足りん!!」
「……う、うぅ、お父様……。ですが、わたくしはそこで、……鈴様に出会ったのですわ! あの尊いお姿を、お父様にも見せて差し上げたかったくらいですわ!」
「ええい、黙れ!公務を疎かにするなど許せん! しばらくは外出禁止だ。王都でしっかりと礼儀作法を叩き直してやる!!」
「そんなぁー!! 鈴様に……鈴様に会いに行けないなんて……わたくし、枯れてしまいますわぁぁ!!」
王女の悲鳴が王宮に響き渡りますが、厳格な国王には届きません。彼女はしばらく、豪華な檻(自室)に閉じ込められることになってしまいました。
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現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 備考 |
| 桜井 鈴| 【外出準備中】| 冒険者資格維持のため、しぶしぶギルドへ。 |
| セイナ | 【同行準備】| 鈴の影に潜んで、一緒に外へ出ることに。 |
| フィオナ王女 | 【謹慎処分】 | 王都で絶望中。「鈴様ぁ……」 |
| シオン | 【潜伏中】 | ギルドの近くで「鈴が出てくる」のを張っている可能性大。 |
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「……ふにゃぁ。……外に出るなら、なるべく目立たない、地味な依頼を選びますぅ……」
鈴はフードを深く被り、セイナを懐に隠して、久しぶりの「お仕事」へ向かうのでした。




