私あの人と友達になれそうです❓
「なんだか外が騒がしい気がしますぅ」
鈴は嫌な予感がして目を覚ましました。猫神様の鏡(監視モニター)を覗き込むと、そこには岩壁にへばりついて、じりじりと壁をなめるように調査している不審な男の姿が。
「……あ。やっぱりシオンさんですぅ。懲りない方ですねぇ……」
「ニャ! あの変態魔導師、また来たのかニャ!?」
「……やれやれ、アステリアの宿に大人しく泊まっていると思ったのですが」
ミィアとヒルダも呆れ顔で画面を覗き込みます。しかし、ここは「猫神様のダンジョン」。鈴たちの本当の我が家であり、その存在が世間にバレるわけにはいきません。
「鈴殿、ここは私とミィアで追い払いましょう。隠れ家の場所を悟られないよう、少し離れた場所に先回りします」
「お願いしますぅ! 私とセイナさんは、念のため奥で隠れてますねぇ」
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外:岩壁の前
シオンは、陶酔したような表情で分析していました。
「間違いない……この純度、この高密度の魔力……鈴の魔法だ。この壁の向こうに、彼女の聖域が……!」
「……おい、そこで何してるニャ? この壁磨き変態男」
「なっ!?」
シオンが驚いて振り向くと、そこには腕を組んだミィアと、腰の剣に手をかけたヒルダが、いつの間にか立っていました。
「あ、あんたたちは…… なぜこんな場所から現れた!?」
「それはこちらのセリフだ。シオン殿、貴殿ほどの魔導師が、ただの岩壁を相手に朝から何をされている。王女殿下と共に王都へ帰ったのではなかったのか?」
ヒルダの冷徹な視線に、シオンは一瞬ひるみますが、すぐに胸を張って言い返しました。
「ふん、俺は鈴の真理を追究する者だ! この壁から漏れ出す魔力の残り香を辿れば、必ずや隠れ家を……」
「ここはただの行き止まりだニャ。あんた、疲れすぎて幻覚でも見てるんじゃないかニャ?」
ミィアが鼻で笑いながら、わざとらしく壁をコンコンと叩きます。
「ほら、さっさと街に帰るニャ! これ以上ここを汚すと、あたしが爪とぎの刑に処すニャ!!」
「くっ……! だが、俺の魔導計算によれば……!」
ヒルダが静かに一歩踏み出し、凄まじい威圧感を放ちました。
「シオン殿。これ以上、我々の主の静寂を乱すというのなら……手加減は致しかねますよ?」
「……ちっ。今日は引いてやる。だが覚えておけ、俺は諦めないぞ! 鈴の残り香がある限り、俺の親衛隊としての使命は終わらん!!」
シオンは吐き捨てるように言うと、未練たらたらに壁を一度振り返ってから、アステリアの街の方へと走って逃げていきました。
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ダンジョン内部:隠密作戦成功
「ふぅ……。なんとか行ってくれましたねぇ」
結界の陰でセイナ(ぬいぐるみ)を抱きしめながら様子を伺っていた鈴は、大きなため息をつきました。
「……あの、鈴様。あのシオンというお方は……なんだか、私と同じくらい『執着心』が強い気がしますぅ……。ある意味、お友達になれそうですぅ……っ」
「ひ、ひぎゃあああ! セイナさん、あんな人と友達になっちゃダメですぅぅ!! 恥ずかしい方向性が違いすぎますぅぅ!!」
鈴の絶叫が、今日も平和(?)なダンジョンに響き渡るのでした。




