恥ずかしいセリフ
「 猫神様、そ、そんなの無理ですぅぅ!!」
シミュレーションルームの中央で、鈴は泣きそうになりながら叫びました。猫神様がニヤリと笑い、手に持った巻物を広げます。そこには、猫神様が夜な夜な書き溜めたという「聞くだけで身悶えするような、甘酸っぱい&恥ずかしいセリフ集」がびっしりと書かれていたのです。
「ダメだニャ、鈴! これを爆発せずに、みんなの目を見て言い切るのが今日の特訓ニャ。恥ずかしさを外に漏らさず、己の魔力回路の中に封じ込めるニャ。さあ、一発目行くニャ!!」
猫神様が容赦なく指示を出します。
「まずはこれニャ! 『わ、私……みんなのことが、宇宙で一番大好きなんですぅ! ずっとずっと、一緒にいさせてくださいねぇ、えへへっ(ウィンク付き)』……さあ、言うニャ!!」
「う、うぅぅ……っ。……わ、わ、わ、私……っ」
鈴の顔が、みるみるうちにパステルピンクを通り越して真っ赤なリンゴのようになっていきます。背後ではヒルダとミィアが、そして足元ではカレンとセレーナ(ぬいぐるみ)が、固唾を呑んで鈴を見守っていました。
「……みんなのことがぁ、う、宇宙で一番……だい、だいしゅ……っ(噛んだ!)、大好きなんですぅぅ!! ずっと、ずっと……っ」
鈴の頭頂部から、シュゥゥゥッ! と蒸気が吹き出します。レベル479の魔力が「赤面爆炎」として今にも炸裂しそうになり、部屋の温度が急上昇しました。
「あぅぅ……い、一緒に、いさせて……っ、くださいねぇ……。……え、えへっ(ウィンク)」
パチンッ、というよりは、羞恥心で引きつったようなウィンクを放った瞬間! 鈴の足元からボムッ! と小さな爆発が起き、無意識の「空間創造」で床にリボンのついた花畑が出現してしまいました。
「ダメニャ! 今、花畑が出たニャ! それに今の爆発、制御できてれば熱に変えられるはずニャ!!」
「む、無茶言わないでくださいぃぃ!! 自分の口からそんなこと言うなんて、もう、もう、お嫁に行けませんぅぅ!!」
「次、行くニャ! 『カレンさんの毛並み、世界で一番ふわふわで……食べちゃいたいぐらい、愛してるんですぅ、ちゅっ♪』ニャ!!」
「にゃ、にゃああああ!! 猫神様、それはカレンさんに対してもセクハラ(?)ですぅぅ!!」
「クゥ~ン?(私は別にいいよ?)」とカレンが首を傾げると、鈴はいよいよ逃げ場を失い、顔を両手で覆ってうずくまりました。
「だめですぅ……。恥ずかしさが……恥ずかしさが、心臓の中で暴れ回ってますぅ……っ!!」
「そこニャ! その暴れる魔力を、ギュッと心臓の奥に押し込むニャ。爆発させるんじゃないニャ、練り上げるニャ!!」
鈴は涙目になりながら、必死に深呼吸を繰り返しました。
恥ずかしさを拒絶するのではなく、その熱量を自分の魔力の一部として受け入れるイメージ。シミュレーションルームには、鈴から漏れ出す強大な魔力の波動と、それを必死に抑え込む彼女の荒い息遣いだけが響きます。
「……わ、私……頑張りますぅ……。……カレンさんの毛並み……世界で一番……っ」
結局、特訓は日が暮れるまで続き、鈴は「もう一生分の恥ずかしいことを言いましたぁ……」と抜け殻のようになってしまいましたが、最後には、真っ赤になりながらも爆発を最小限の火花に抑えることに成功したのでした。




