第4話 変わっていく
20実際投稿の予定が忘れてました( ˊᵕˋ ;)
明日からは20時に…
クラウディオと婚約を結んだことはすぐに噂になった。
エリクと婚約を解消したばかりで、すぐに新しい婚約者を……なんて陰口を言われるかと思っていたのだが、一月経った今もそういった声は少なかった。令嬢たちからも冷ややかな視線が飛んでくるものだと覚悟をしていたが、意外にも令嬢たちは私を応援(?)しているようだった。
「なんでだ?」
素直に零した疑問にアレンは、「お前が相手だと、勝てないと分かってるんだろ」と言う。
そういうものだろうか?
私が首を傾げてしまうと、アレンはそっと周りを見渡して警戒したようにキョロキョロとする。
「見た目にしろ能力にしろ、お前は普通の令嬢と違うからな」
うん、言われてみれば確かにそうかもしれない。
私のように騎士を目指す令嬢などまずいないし、見た目も口調も女性らしいとは言い難い。クラウディオが私のことを好いているかは置いておいて、今まで言い寄られても靡かなかった理由が女性らしいからだとすれば、可憐なご令嬢たちは諦めざるを得ないのだろう。
「うん、納得したかも」
「だろ?」
アレンに向かって頷くと、彼はそういえば、と思い出したかのように声を上げる。
「勝手に決めてたみたいだけど、家の方は大丈夫だったのか?」
「ああ、それね。大丈夫だよ。むしろ、すごく喜ばれたんだ。私の魅力を分かってくれる人が現れた、ってね。親バカ過ぎない?」
私が苦笑してそう言うと、アレンは「まあ、リーシャを心配する気持ちは分かるわ」と言う。
なぜだ。
私は割としっかりしていると自負しているし、自分自身のことはちゃんと管理出来ている。
「解せん」
「ははっ、そういうとこだな」
訳が分からずポカンとしていると、ひとしきり笑ったアレンは目元を拭って息をついた。
「深く考えないところとか、利益があるからと承諾したり、とかな」
なるほど?
「だが、両親は結婚してほしそうにしていた。私は騎士になれるならどうでもよかったが、許してくれる相手なんてそういない。それこそ、本当に彼ぐらいなものだろう。したがって私がオルフェン様の求婚を受けるのは必然なのだ」
「ほんと随分と割り切ってるよな」
「本来、貴族の婚姻とはそんなものだろう?むしろ、かなりの好条件だ。容姿、能力、人柄。どれをとっても彼以上の人はそういないうえに、私を慮ってくれる。伴侶として何一つ文句がない」
私が得意げにそう言うと、後ろから「へぇ」と声が聞こえる。
げ、またか。この人は何故、騎士団の者しか出入りできない場所に入れるのだ?
なぜか上機嫌にニコニコとしているクラウディオに向き直る。
「リーシャに会いたくてね」
そんな浮かれた理由で入れるものか。
ジト、と睨むように見てしまえば、彼は不思議と嬉しそうにはにかむ。意味が分からない。
彼は私の家に、あいさつに来た時も終始こんな感じだった。
父と母が緊張している中、私の騎士服を咎めることもなく美しいと褒めちぎりまくる。そうなるのが嫌でわざわざドレスを選ばなかったというのに、悩むだけ無駄だったらしい。
「君は白がよく似合う。ドレス姿も遠目からしか見たことがないが、とても愛らしいものだった。騎士服はそれと違って、凛とした君の魅力をより惹きたてていて、これはこれでいい」
腰を引き寄せうっとりとする彼に、つい引き攣った顔を向けた私は悪くない。
両親の前で何を言ってくれてるんだ。彼らは親バカなので、クラウディオの言葉に共感しており、とてもカオスな空間だった。私と同じ顔をしていたマノンは、クラウディオの帰宅後にそっと「がんばれ」と肩を叩いて労うように笑っていた。
褒められるのが嫌なのではない。問題なのは、誰の前でもこの態度を崩さないということなのだ。
「君が俺に対してそんな評価をしてくれていたなんて、とても嬉しいよ」
ニコニコと微笑んでいる綺麗な顔にハァ、とため息をつく。
ほら、ピンク色の空気を察してアレンはどこかへ行ってしまったではないか。
「……せめて、そのくすぐったいことを言うのは二人の時にしてください。周りの目が痛いです」
「俺は正直なんだ」
私の抗議にクラウディオは答えにならない答えを返す。
真っ直ぐすぎるから困るんだよな。
普通のご令嬢のような反応を私が返すことはないだろうが、私だって少し恥ずかしい。彼がそう思ってくれていることは重々理解したので、それを少し抑えて欲しいのだ。
彼が私へ過剰に褒めるたびに、周囲の視線が刺さっていたたまれない。まるで、私をお姫様かのように扱うクラウディオには天を仰ぎたくなるのだ。
「そうですか……」
説得をあきらめた私に、クラウディオは子犬のように眉を八の字にして覗き込む。
「嫌だった?」
しゅん、と音がしそうな顔に言葉が詰まる。
わざとだろうということは分かっているのに、悲しげな顔をされるとどうも弱い。捨てないで、と言われている気分で、「嫌ではない」と答えてしまうのだから困ったものだ。
「ところで、ここへはなんの用で?」
話を変えてしまうことにした私は、クラウディオに問いかける。彼は、私の言葉にニコッと笑うと、私の手を取って引き寄せる。別に離れる気などないのに、クラウディオは私を捕まえたがるのだ。
「逢引のお誘いに」
さいですか。
「君の好きなおやつと軽食を持ってピクニックにでも。どうかな?」
彼は私のことをどこまで知っているんだ?
魅力的なクラウディオの提案には頷く以外の選択肢など存在しなかった。




