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22.領地での出来事 ①

 私は久しぶりに生まれ育った領地へとたどり着いた。

 ――小さな子爵領。本当に領民の数も少なく、見知った顔の多い小さな領地。



 大貴族の領地などだと、領地が広すぎて領民の数も数え切れないほどだ。それに比べると、本当に小さい。

 それだけ私の家はこのジェネット王国の中では、下の下である貴族だ。うん、貴族と言うよりも平民に近いかもしれない。



 とはいえ、正式に国王陛下から爵位を賜っている貴族である。

 その貴族領で爵位を持っていないものが好き勝手するのはあってはならないことだ。その商人が私と本当に婚姻を結んでいるのならばそういう権利もあるかもしれないが……そういう事実はない。




 両親のことを王都へと行くように促したのも、私の両親が居ない間に何か起こそうとしていたからだろう。そう思うと私は弟妹たちのことを助けようとして逆に危機に陥る可能性もある。うん、冷静にやらないと。

 私の顔を知っている領民たちもそれなりに多いので、彼らに声をかけて領内の様子を聞く。

 ……なんでも今、屋敷に留まっている商人はまるでこの領地を陛下から賜ったとでもいう風に振る舞っているようだ。領主は私のお父様なのだから、何の許可も得ずにそういうことを行っているのは中々問題である。




「バーリクとチーチェはどうしているか知っている?」



 私の弟と妹のことを確認すると、彼らは知らないと口にした。

 両親たちが領地にいる間には姿が見られた二人は、一切人前に姿を現してないらしい。



 私はそれを聞いて、益々不安になる。

 二人が姿を現さないということは、何かしらのことが起こっているのだろうか。



 バーリクとチーチェが危険な目に遭うのは嫌だ。そういう親のせいで未来が潰されるのは嫌だ。

 でも実際にどう動くのが一番良いのかは明確に分かってない。

 でもひとまず、二人の身柄を確保して救うことが第一。




 それさえ出来れば借金に関してはどうにでもなるはず……。楽観的かもしれないけれど、そう信じている。




 領民たちの中にも色々いる。私に好意的で、私が結婚を良しとしていないことを知って助けてくれようとする人たち。でもそういう自分の味方をしてくれる人ばかりではない。悪い人だって世の中にはいて、私のことを商人に差し出そうとする人だっていた。

 そういう人たちから私は隠れながら、領主の屋敷へと向かうことにする。




 なんだろう、いつもの騎士としての仕事の時よりも緊張しているかもしれない。

 それは他の騎士仲間たちが周りに居ない状況だからかも。騎士の仕事の時は、周りに味方がいて、私は同僚たちに助けられて仕事を行っていたから。

 こうやって一人で何かを成し遂げなければならないことは、不安になるなぁ。




 屋敷のことを遠目に見る。

 なんだか警備をしている者たちがいるが、騎士といった風貌ではない。

 どちらかというとならず者というか……正規のそういう存在ではなさそう。私の実家である屋敷は、貴族の屋敷の中ではちいさな方だ。子爵家としてはそこそこ大きいかもしれないけれど、まぁ、それはお父様の祖父の代で少し栄えていたかららしい。





 さて、どこから忍び込もう?

 真正面から入るのはやるべきではない。

 多分、捕まって大変なことになりそう。




 それにしても警備をしている者たちがいると邪魔だなぁ。子爵家はそういう警備を雇えるほどのお金はないので、商人が雇っているのだろうけれど。

 子供の頃に屋敷から抜け出して遊びまわったりしていたので、そのあたりの記憶から忍び込める場所を考えるか。





 ……忍び込めた所で、弟と妹たちがどこにいるかを探らないとうまく行かない気はする。

 どうにかそのあたりの詳しい情報を集められないかなと警備の者たちの目をかいくぐって情報を集める。

 屋敷に仕えている唯一の使用人が出てくるのを待ったのだけど、出てこなかった。

 もしかしたらバーリクとチーチェと同じく、外に出れなくされているのだろうか。それとももしかしたら勝手に解雇されたりしている?





 情報を集めていても、屋敷内の詳しいことは分からない。

 バーリクとチーチェ以外にも大変な状態に陥っている人がいるならそちらも助けたい。どこからどう取り掛かるか。




 うん、考えても仕方ない。

 考えるよりも、行動した方がいいよね。




 そういう結論に至った私は、屋敷に早速忍び込んだ。




 なんていうか、自分の実家にこうして忍び込むなんて変な感覚。本来ならそういうことをしなくてもいい場所のはずなのに。

 商人の問題とか色々解決することが出来たら、こういう風に忍び込まずに実家に足を踏み入れられるようになるかな。





 そのためにもまずは弟妹たちを助け出さなければならない。

 そういう決意を胸に、私は屋敷内を見て回るのだった。


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