21.領地へと向かう。
私は馬を走らせて実家の領地へと向かう。
馬車での移動だと時間がかかってしまうので、疲労はたまるかもしれないが急ぐ必要があるから。
バーリクとチーチェ。
私の可愛い弟と妹。
その二人に加えて、領地まで件の商人の手にある。
……嫌な予感しかしない。
そもそも両親にあれだけの額を借金させて、それでいてその形として私のことを娶ろうとしている。その時点で中々問題を起こしそうな気配のある商人である。
あと弟妹だけを残して、領主とその夫人を王都にやるような人間がまともだとは思えない。今頃、領地がどうなっていることだろうか。
そんなことを考えるとなんだか心配で仕方がない。
弟と妹は今頃、どんな思いをしているだろうか。きっと両親に置いて行かれて、商人が領地を牛耳る形になっており不安に思っていると思う。まだ小さな二人からしてみればその状況は怖ろしいことだと思う。
というか、私だってそういう訳の分からない状況になったら不安になると思う。
そう考えるとやはり急がなければならない。
でも焦ることはしない方がいい。
どんな時でも冷静に。自分が出来る最善をすること。
それが騎士として重要なことなのだから。
私が騎士としての仕事を経験していなかったら、こういう状況で焦って、行動できなくなっていただろうなと思う。実家に居たままだったら余計にそうだっただろう。
そう考えると騎士になれたことは本当に私にとって良かったことだったと思う。
……マヒーユ様と距離を詰めれて、話を聞いてもらって。
うん、そういう経験があるからこそ私は今、此処にいる。
私はバーリクとチーチェに幸せになってほしい。忙しいからという理由で帰れていなかったけれど、それでも大切な弟妹なのだ。
ちゃんと休憩はして進む。辿り着いた時に動けないでは、何も意味がない。
村で休める時は休む。けれど、それが出来ない時は野宿をする。
きちんと食糧なども確保する。食事もきちんととる必要がある。
両親のことは騎士団に任せているからこれ以上、借金を重ねることはないと思う。
今回の一件をなんとか片付けられたとしても結局また借金をされてしまったらどうしようもない。同じことがまた繰り返されてしまう可能性が高いのだ。
根本的な問題を解決しなければどうにもならないのだから、私が力ずくでどうしようも出来ないのなら騎士団の人たちに相談してなんとかしてもらう? そういう先のことを考える。
考えても仕方がないことだけど、こうやって空を見上げていると私はそうやって先のことを不安に思ってしまった。まずは目の前のことを片付けなければならないというのに、こうやって先のことを考えてもどうしよもないと自分の頬を叩く。
「よしっ……まずは情報収集をしていく」
周辺の領地に辿り着いた段階から、実家の領地に関する情報を集めることにする。
……悪い噂が多い。借金をしていることは周りにとっては周知の事実であり、それはもう嘲笑されているようだ。
私の実家は、貴族家としては下位だ。それこそ平民と変わらないぐらいだ。
そんなお金もなく、領地運営の才能もない。
私が騎士になって家を離れてから、より一層借金は酷くなっていたようで……商人たちからしてみればよい鴨でしかないだろう。
私を妻に迎えようとした商人が両親たちを煽てて、それだけ借金させたようだ。
借金の形に私を差し出すという段階になる前に、もっと借金が少ない状態で私に相談を先にしてくれたらよかったのにな。
「あの領主は商人を置いて王都に出かけたらしい」
「また借金を重ねようとしているらしいという噂だ」
「あの商人に娘を嫁がせようとしている話だからな」
――噂が流れている。
それは両親のことを悪いように言う噂が多い。
そこには事実も混ざっているが、誇張されたものもある。このまま爵位を商人に与えるのではないかとか、そのためにこうやって商人に領地を任せているのだとか。
……それは勝手に行っていいものではない。
王国の領地は国王陛下から与えられているものであり、爵位などに関しては陛下の許可を得なければ手に入れることなど出来ないのだ。
それが自由にこなせてしまえば、乗っ取りなども容易に出来てしまう。まぁ、正式な手続きをしていても乗っ取りというのはたまに行われることはあるのだけど……。
両親の誇張された噂に関しては、その商人が敢えて流しているものだろうと想像が出来る。
私の両親は、あまり細かいことを考えないタイプだ。貴族としては珍しいというか、貴族には向いてないというか……騙されやすい。その結果、こういう状況に陥っているのだから、本当に色々と改めてもらわないとならない。
情報を集め、そして武器を整え……そうやって進んでいき、領地へとようやくたどり着いた。
騎士になる以前に住んでいた、私の故郷。
……両親の借金の影響か、すたれているように見える。




