14.少し遠出をして魔物を倒しに出かけてみる。
二日間、休みを取った。
連続して騎士の仕事を休むことはあまりなかったけれど、今回わざわざ休みを取ったのはマヒーユ様と一緒に少し遠出をしてお金を稼ぎにいくためである。
憧れの先輩騎士であるマヒーユ様と一緒にこうやっておでかけをすることになるなんてとても緊張する。いや、日帰りでなら何度も一緒に出掛けているんだよ。でもさ、泊りがけでだとなんだか……ちょっと特別なものな気にならない?
マヒーユ様はただ優しいから、私のことを助けてくださろうとしているだけなのだけど!
私はマヒーユ様と待ち合わせをしている。
王都から少しだけ離れた場所で待ち合わせ。
マヒーユ様の貴重な二日間を使わせてしまうのだから、ちゃんとしないと!
「ユリアンリ、もう来ていたのか。早いな」
「マヒーユ様をお待たせするわけにはいきませんから!」
私がそう言ったら、「別に構わないんだが」と呆れた顔をされる。
「まぁ、いい。とりあえず行くか」
「はい!」
私とマヒーユ様はそれから馬に乗って移動する。騎士の嗜みとして馬に乗ることは出来る。まぁ、乗るのは久しぶりだけど!
人によって自分専用の馬を所有しているのだけど、私みたいな零細貴族の娘だとそういう自分の馬というのは持っていない。いつか自分の馬を持って、相棒みたいになるのもいいなって憧れたりする。
「マヒーユ様は、自分の愛馬ですか?」
「一応、最近使っている馬だな。……馬に愛着を持っていると大変だぞ?」
「え、そうなんですか?」
「何か有事の際には馬を置いていかなければならないこともよくある。本当に食糧がなければ食べることだってある」
「……なるほど、確かにそれもそうですね」
相棒の馬がいるのは素敵だなと思ったけれど、マヒーユ様の言っていることもごもっともだった。
私やマヒーユ様は騎士という立場で、だからこそ戦いの場に赴くことはそれなりにある。
基本的にこの国は今は平和だけれども、もし戦争などが起きた際は私たちが前に立つことになる。生きるか死ぬかの中で、馬を思いやる余裕なんてなくなるだろう。
何かを大切にすることは良いことだとは思うけれど、割り切らなければならないことはあったりするのだなと私は思った。
マヒーユ様と会話を交わしながら、馬を走らせる。
「ユリアンリは、馬の扱いが上手だな」
「本当ですか? マヒーユ様に褒められると嬉しいです!」
マヒーユ様に褒められただけで私はとても嬉しい気持ちでいっぱいになる。騎士になりたいと憧れた時に馬に乗る練習もしていた。それが実ったというか、こうやって憧れのマヒーユ様に褒められると頑張ってきてよかったなと思う。
「マヒーユ様も馬に乗るの上手ですよね!」
「馬の乗り方も母さんと父さんに仕込まれるんだよ。俺の兄妹は皆乗れる」
「へぇ、凄いですね」
皆ということは、マリッサ様とかも乗れるということだろうか? 女性だと騎士になるとか、そういう理由がなければ馬に乗れない人もそれなりにいる。けれどフロネア伯爵家だと男女問わずにそういうのは習うものらしい。
それにしてもマヒーユ様は私のことを褒めてはくれたけれど、スピードは抑えてくれていると思う。
マヒーユ様が本気を出したらもっと速く移動できるんだろうなって思う。
やっぱりマヒーユ様は私のずっと先というか、年も上だから仕方がないのかもしれないけれど向こう側にいるんだなと思った。そう思うと少し寂しい気持ちにはなった。
って、何を考えているの! 自分の考えに思わず首を思いっきりふる。
「ユリアンリ、どうした?」
「なんでもないです!」
私とマヒーユ様は、今は親しくさせてもらっているけれど、それはマヒーユ様が優しいからなだけ!
だから、そんなことを思っているのがまず恐れ多いことだわ!
そう自分に言い聞かせて、その考えを振り払った。
マヒーユ様はそんな私のことを不思議そうに見ていた。
馬を走らせて少しすると、一つの村に辿り着く。この村を拠点として、魔物を倒しに行くみたい。この村にはマヒーユ様は前にも訪れたことがあるらしく、村長の男性には「マヒーユ様が女の子を連れてきているとはな」とニヤニヤされた。何か勘違いされている気がするので、「私はマヒーユ様の後輩です! マヒーユ様に迷惑が掛からないように私のことを広めたら怒ります」と言っておいた。
だって、なんだか私がマヒーユ様の特別みたいに勘違いしている気がするんだもん。そういうのじゃないもの。
でもなんだか、分かっているのか分かっていないのか、笑顔で頷かれた。……本当に大丈夫かな? 変に広まったらマヒーユ様にご迷惑をかけてしまうので嫌なのだけど。




