13.事態は好転していないけれど、なんだか前向きな気持ち
両親からの返事はまだない。
私がお金に困っているのは事実で、それをどうにかしなければいけないことも本当のこと。
それでも私は何処か前向きな気持ちになっている。
それはマヒーユ様と一緒に魔物討伐を行うのに充実した気持ちになっているからかもしれない。
憧れであるマヒーユ様と一緒に魔物を討伐出来ることは楽しい。少しずつ自分の力が磨かれているのが分かって、それも嬉しいことだった。
マヒーユ様の剣技を間近で見ることで学べることが沢山あった。
綺麗なその剣捌きを見ているだけでほれぼれした気持ちになる。
私も騎士として、剣技を学んでいるから――余計にそう思っている。
「ユリアンリは最近、ご機嫌ね? 何か良いことでもあったの?」
「……秘密」
私は嘘を吐くのも得意ではない。だからシガルトから問いかけられた言葉に、ただそれだけ答えた。
多分、シガルトには私が何か隠していることはわかっていると思う。それでも聞かないでいてくれているのは有難かった。
今、マヒーユ様と一緒に魔物討伐を行えているのはあくまで期間限定のことなのだ。
マヒーユ様が優しいから、魔物討伐に付き合ってくれているだけでそれ以上の何かはないのだ。
だから何かしら事態が終わったら、マヒーユ様との魔物討伐も終わっていくだろう。
色々片付いた後に、マヒーユ様とのこととかシガルトに話すことにはなるのかもしれない。
「まぁ、いいわ。ユリアンリ。仕事が終わった後、ご飯でも食べに行かない?」
「ごめん、ちょっと最近節約をしているの」
両親からの手紙が送られてくる前は、普通に食事に出かけたりなどはしていた。だからシガルトからしてみると私の様子が変わったことは気づいているだろう。私も美味しいご飯を食べに行きたいとは思うけれど、今はお金をなるべくためなければならない。
少しの節約ぐらいでは全然お金はたまらないけれど、何もしないよりはいいはずだから。
というか、今頑張っておかないとおのまま悪い方向にどんどん転がり落ちてしまう気がするもの。
休日も基本的にお金稼ぎばかりしているから、最近は全然友人たちと過ごすということも出来ていない。
どちらかというと、魔物討伐のためにマヒーユ様と過ごしている方が多いのかもしれない。
討伐した魔物の中で、お肉がそこまでお金にならないものに関してはその場で調理して食べたりもしている。マヒーユ様は狩った魔物をその場で調理したりも出来るのだ。
フロネア伯爵家ではそういうことも教えられているらしい。私はあんまりそういうのが出来ていなかったから、マヒーユ様に教わることが出来てとても嬉しくなっている。
味気のない携帯食よりも、その場で調理されたものの方が美味しい。マヒーユ様がその場で用意してくれるものは、簡単に作れるのに美味しいものが多くて凄いなと思った。
そこまで考えて、私は目の前のシガルトに向けてお誘いをかける。
「シガルト、外食は無理だけどご飯は振る舞えるよ。それならどう?」
「あら、今まで料理はしていなかったのにどういった心境の変化?」
「色々あるの」
シガルトには両親からの結婚話については伝えているけれど、借金のこととか、詳しいことは流石に言っていない。
私が最近、お金を貯めようとしていることは分かっていると思うけどね。
「まぁ、いいわ。なら、行くわ。ユリアンリの作ったご飯も食べたいし、ゆっくり話したいもの」
シガルトがそう言って笑ってくれたので、仕事が終わった後、料理を振る舞うことになった。
その代わり今日は魔物討伐には行けないけれど、時々は休まないと身体が持たないから丁度良い。
それにしても何を作ろうか?
簡単な料理しかまだ出来ないけれど、折角だから美味しいといってもらえるものにしたいな。
そんなことを考えながら、私はその日の仕事を終えた。
そのままシガルトと一緒に、私の部屋へと向かう。
両親からの手紙が来てから、お金を稼ぐためにバタバタしていていたのでこうやってゆっくり過ごすのは少し久しぶりなのだ。
「美味しいわ」
私が料理を振る舞うとシガルトがそう言ってくれて嬉しくなった。
今日作った料理は、マヒーユ様から教わったシンプルなものなのだ。素材の味を生かしたお肉の料理。私もマヒーユ様に作ってもらって気に入っていたものなので、シガルトも気に入ってくれてよかった。
もっと美味しい魔物の調理法をマヒーユ様から教わろう。
その日は夜遅くまでシガルトと会話を交わした。
それが楽しくて、私は騎士を続けていくために頑張らなければと改めて思うのだった。




