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書きかけの僕ら  作者: 黎明の星
1年目冬

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78/124

第78話『予定あります』

第78話『予定あります』


クリスマスまであと少しになった昼休み、学生ホールでもその話題があちこちから聞こえていた。

陽華は向かいに座るミオが、窓の外へ目を向けたのに気づいた。


「駅前、また飾り増えてました」

「増えてたね。この前よりだいぶ明るくなってた」

「もうすぐクリスマスですね」


ミオがそう言うと、陽華も箸を止めた。


「ほんとだね。もうそんな時期かあ」


向かいでは遥斗が少し黙っていた。

しばらくして、陽華の方を見る。


「陽華さん、クリスマスって予定あります?」


陽華はすぐに頷いた。


「ありますよ」

「えっ」


思ったより大きな反応が返ってきて、陽華は目を瞬いた。


「家族と過ごします。毎年そんな感じなので」

「……ああ、家族ですか」

「はい」


遥斗の肩から、少しだけ力が抜けたように見えた。

陽華は首を傾げる。


「なんですか?」

「いや、何でもないです」


ミオが一度だけ遥斗を見る。

けれど何も言わず、そのまま昼食へ戻った。

陽華も深く考えず、今度は二人を見る。


「二人はどうするんですか?」

「私は、まだ特に決めてないです」


ミオが答える。

陽華は遥斗へ視線を移した。


「遥斗さんは?」

「俺も特には」

「バイトは?」

「その日は入れてないです」

「じゃあ、ゆっくりできますね」

「……まあ、そうですね」


遥斗は少しだけ笑った。

クリスマスの話はそこで途切れ、三人は午後の授業や冬休みの課題の話へ移っていった。


◇


クリスマスの夜。

陽華が家へ帰ると、食卓はいつもより少しだけ華やかだった。

母が用意した料理の横には、小さなケーキも置かれている。


「おかえり」

「ただいま」


陽華は上着を脱ぎ、自分の席についた。

父もすでに座っていた。

家族で食事をすること自体は珍しくない。

けれど今日は、食卓の端にある飾りやケーキの箱がいつもと少し違う夜を作っていた。

母が料理を取り分けながら、学校の話を聞いてくる。

陽華が授業のことを少し話していると、それまで黙っていた父が口を開いた。


「学校はどうなんだ」


陽華の手がほんの少し止まった。

前なら、その言葉だけで次に何を言われるのか考えていたかもしれない。

けれど今日は、少し考えただけで答えた。


「うん。今、市のコンクールに出す絵を描いてる」

「コンクールか」

「うん。締め切りは一月の終わり」

「そうか」


父はそれ以上何も言わなかった。

陽華も続きを説明しなかった。

すぐに母が別の話を始め、食卓の会話はそちらへ移っていく。

何かが変わったと呼べるほどのやり取りではない。

父との間にあったものがなくなったわけでもない。

それでも陽華は、自分から絵の話をしたことを少しだけ不思議に思った。


◇


食事を終えて自分の部屋へ戻ると、机の上にはコンクールのために描いていた紙が残っていた。

少し大きくしたラフ。

待っている人と、そこへ近づいていく人。

まだ何度も描き直している途中の一枚。

陽華は椅子へ座り、それをしばらく眺めた。


(春の頃は、今こうしてるなんて思ってなかったな)


学校へ通っている。

遥斗やミオと昼を食べている。

玲奈とも、前より自然に話せるようになってきた。

そして今は、自分で出ると決めたコンクールの絵を描いている。

陽華は鉛筆へ手を伸ばしかけて、やめた。


(今日はいいか)


紙をそのまま机に残し、陽華は立ち上がった。

窓の外には、遠くの家の灯りが見えている。

クリスマスの夜は、いつもの家の中で静かに過ぎていった。

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