6人目~【道でスカウトしてきた、春菜】自分の幸せを優先するあんたなんか大嫌い
あの日、街を歩く凪くんを見かけ、その圧倒的なオーラに思わず声をかけた。
「すみません! 芸能に興味ありませんか?」
でも、凪くんの返答はあっさりしたものだった。
「あ、すみません。本業があるので無理です。バイトならいいですけど」
彼は、モデル業を
「あくまでお小遣い稼ぎの副業」
としてしか捉えていなかった。
その余裕というか、彼にとっての優先順位の低さが、逆に
「何としてもこの原石を輝かせたい!」
というプロとしての闘争心に火をつけた。
凪くんを月刊誌E-Ruelle読者モデルとして手配し、私は彼の担当になった。
撮影現場で、彼は指示通りに動く。
見つめられるだけでカメラマンすら恋に落ちる魔性。
でも撮影が終われば
「お疲れ様です、じゃあ明日仕事なので帰りますね」
と、あっさりと自分の世界へ戻っていく。
そんな凪くんを私は必死に口説く。
「ねえ、専属になろうよ。もっと売れるよ」
でも凪くんは困ったように笑うだけ。
「春菜さん、それより今日のお昼、美味しいパン屋さん見つけたんですけど、一緒に行きませんか?」
仕事の話を逸らして、個人的なデートに連れ出す凪くん。
その無邪気な優しさに、私は次第に「仕事」ではなく「一人の男」として彼に溺れていく。
凪くんの読者モデルとしての人気は急上昇。
彼を本格的に売り出そうと準備を進めるんだけど、凪くんはどこか冷めていた。
「まあ、楽しいですけどね。これ以上はめんどくさいかな」
ある日、凪くんが撮影スタジオにやってきて
「もう、読者モデルも辞めます」
「えっ、なんで!?」
「本気で好きな人ができて。……モデルなんてやってたら、彼女が不安になるでしょ?」
凪くんは私の制止を聞かず、アカウントを削除した。
私にとっての
「人生を懸けたプロジェクト(凪くん)」
でも彼にとっては
「愛する人のために捨てられる、ただのバイト」
でしかなかった。
私は消えた画面をぼんやりと見つめた。
私は凪くんをスターにできると思ってた。
本気で。
なのに彼は、そんな未来よりひとりの女の子を選んだ。
「あんたみたいな、自分の幸せを最優先にする天使なんて……大っ嫌い」
誰もいなくなった楽屋で、私はプロとしてのプライドを抱きしめながら、静かに涙を流した。




