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【SS】幸せの分散はもう終わり、置いて行かれる女の子たち〜本気の恋でLINEを消した日 ~僕らの傷跡まで  作者: 水波瀬 凪
【第一章】幸せの分散はもう終わり、置いて行かれる女の子たち〜本気の恋でLINEを消した日

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4/6

4人目~【担当美容師、柚葉】私のカットが一番似合ってたのに

ある日、新規でやってきた凪くんを担当した。


鏡越しに目が合った瞬間、彼の「天使系」のビジュアルと、カラコン越しでも伝わる綺麗な瞳に、思わず手が止まってしまうほどの衝撃を受ける。


凪くんはわたしのカットを気に入り、毎月指名してくれるようになっていた。


施術中、シャンプーで髪に触れるとき、カット中に鏡越しにじっと見つめられるとき、心臓は毎回破裂しそうになっている。


ある時、凪くんの髪型をセットしながら


「凪くんって本当にイケメンだから、彼女さん幸せだろうな」


と冗談っぽく言うと、凪くんは鏡越しに笑顔で


「彼女いないよ、俺、柚葉(ゆずは)さんとの時間、幸せだし」


その瞬間、自分でも気づいてしまった。


ああ、私もう、とっくに好きだったんだ。


最後の一押しで、完全に恋落ちした。



「新しく入ったトリートメント、凪くんの髪質に合うから試してほしい。もしよかったらモデルとして、営業後に無料でやるよ」


そこから個人的なLINEを交換した。


営業後の静かなサロン、2人きりの空間。


ドライヤーの音だけが響く中、凪くんがふと


「いつも綺麗にしてくれてありがとう」


と言ってくれた。


付き合っているわけではないけれど、月1回のカットと、時々営業後に2人きりで過ごす秘密の時間。


わたしにとって、それは日々の厳しい仕事を頑張るための


「極上の幸せ」


だった。




ある日、凪くんがどこかいつもと違う表情で来店。


シャンプーして、いつも通りセットをしていると、鏡越しに、凪くんが言う。


「柚葉さん、今日でここに来るの最後なんだ。引っ越すとかじゃなくて、本気の彼女ができて。その子が『男の美容師さんに変えて』って言うから」


「え…」


「今までたくさんカッコよくしてくれてありがとう。LINE、消さなきゃいけないんだ。最後にお礼、言いたくてさ」




凪くんが去った後、彼が座っていた誰もいない椅子を見つめる。


LINEを開くと、すでに彼のアカウントは消えている。


だけど、泣かない。


「あの天使をそこまで束縛したくなるなんて、一体どんな可愛い女の子なんだろう」


と少しの敗北感を感じつつ、


「私のカットが一番似合ってたのに。バカ。……幸せになりなよ」


と、美容師としてのプライドと、恋の終わりをハサミの音に紛れ込ませる。


彼のその造形の美しさは、まれに見る「作品」としても貴重だと思った。





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