【樹】なにを語る~【凪】告げ口の後悔、反省点とこれからのこと
【樹side】~何を語る? 昔のつぐない
湊の彼女であり、遥希まで片想いしているという優芽が、父の再婚相手の娘だと?
あのとき、2人より俺のほうが一番、優芽に近い位置に行けたと、どこか優越感があった。
湊がいたらできなかったことも、遥希だけならなんとでもなるとあの頃の俺は思っていた。
父と俺の男2人生活が一変、いきなり女性2人との同居。
しかも俺たち思春期真っ只中。
良くもまあ、そんな時期に再婚してくれたよな?
授かり再婚ときれいな言い方してるけど
「やったからできたんだよ」
優芽があからさまに言うからさ、
「やったって、なにを?」
わかってたけど、聞いてやった。
「そんなの、えっちなことに決まってる」
「えっちなことって、どうすんの?」
優芽は知ってるの?
「それは…」
一瞬の優芽の恥じらいの表情に、俺のなかの何かが外れた。
湊の彼女だった優芽。
遥希が片想いしていた優芽。
俺だって……
「やだ、お兄ちゃんなにす…」
「ちょっとだけ、な? じっとしてたらすぐ終わるし」
「やだやだやだ! たすけてはるくん!」
そのとき、遥希の名前を呼んだ優芽に俺は、
「なんだよ遥希なんか!」
呼んだって来ねーよ!
でも遥希は来たんだ。
少し、遅かったけれど。
「おま…なにした? おい樹! いったい何?」
半裸で優芽は泣いてるんだ。
「見ればわかるだろ?」
湊よりも遥希よりも、優芽の一番でいたかった。
なのに優芽は、俺のことなんか、まったく眼中になかったんだ。
これで、優芽の中に俺は一生、傷として存在できるんじゃないか?
なんて、あの頃は思っていたが、
十数年のときを経て、もう二度と近づくなと、あの遥希が言ったんだ。
「ゴミ箱にかえれ、クズ」
その言葉は逆な意味で、忘れられないものになってしまった。
【凪side】~告げ口した後悔と反省点とこれからのこと
あの日、遥希が兄貴のこと、クソ、クソッて何回も言ってたからさ、
「それ、直接言えばいいのに」
「は? 言えるかよ、言えねーからこうして…」
俺にそんなこと言われてもな?
どーしたらいいか、さっぱりわかんね。
だから俺が遥希の代わりに、兄貴に言ってやったんだ。
「遥希が兄貴のこと、クソって言ってたぞ」
ほんとは仲良しなのに、変なことでケンカしてるから、仲直りのきっかけ作ってやったつもりだった。
いや、当時中1の俺に、そんな気持ちなんかたぶんなかった。
どこか面白がってたってところかもな?
ちょっとしたいたずらだった。
その直後に交通事故だろ?
兄貴が死んだことで、俺はたくさん後悔したし反省もした。
俺があんな余計なこと言わなかったら、兄貴と車ん中でケンカしてなかったかもしれない。
ケンカしなかったら、オヤジだってまっすぐ前向いて運転してたはずなんだ。
俺が車内で大騒ぎしちゃったせい。
兄貴への遥希の最後の言葉が「クソ」だなんて。
それなのに遥希は、
「凪のせいじゃない、不運な事故だ」
ってずっと言ってくれてる。
兄貴の代わりにって、俺のこと大事にして構ってくれてるんだ。
遥希が連れてきた優芽が、みんなとそんな深い関わりあるなんて知らなかったし、ただ
「かーわいい」
って思って、近づいただけ。
まあ、いまとなっては相手にされてないんだけど。
いまも湊、兄貴は俺の中で生きてる。
遥希がいまいち、優芽を守りきれねーからな、心配で成仏できない!
それでも前よりは、出て来なくなってきた。
「あっちに、いい女でも見つけたか?」
まさかね、湊は俺と違うって。
良く言えば硬派?
てゆーか、単なるヘタレだって優芽も言ってた。
良く「あの人の分まで生きる」なんてこと聞いたことあるけど、
なんで?
俺、自分生きるので精一杯。
兄貴の分までなんて、そんな時間ねーって。
兄貴の分まで、優芽となら遊んでもいいよ?
「あー腹減った」
ポテトとたこ焼き持って遥希んちに遊びいこう。
あ、結菜にもなんか買ってくか。
帰る場所があるって、悪くね―んだな。
生きるのって、大変だなとか、生きる意味ってなんだろとか、思ってた頃もあった。
けどな、俺わかったんだ。
生きるって、フライドポテト山盛り食えること!
幸せなことなんだ。
あの頃の落ち込んだ俺らに教えてやりたい。
人生、わりと楽しいもんだぞって。




