【遥希】なんでこんなことになってる?~【湊】遥希も優芽も大切で~【遥希】湊の死と樹のこと
【遥希side】~ちょ…なんでこんなことになってる?
「ちょ、待てよそれ、ヤバいって」
さっきまでゲームしながら
「湊おまえ他校に彼女いるんだろ」
紹介しろよな! とか言ってふざけあってたよな?
「は? 遥希こそどうなんだよ」
「俺は…」
「いるのか?」
「うん、一応好きな子はいる」
「へーどんな子?」
「湊も良く知ってる子」
名前を口にしたとき、湊の表情が一瞬ゆがんだ。
あ、なに? ヤバ、まずかった?
「遥希それな、俺の彼女だ」
「え、まさか湊の彼女?」
「なに人の女、勝手に好きになってんの?」
「ごめ、知らなくって俺」
「手出したりしてねーよな?」
「してないよ! まだ遠くから見てるだけで」
片想いなんだから、なにもするわけない。
「いま、なんだって?」
「え…」
「まだ、って言わなかったか?」
湊が俺に詰め寄る
顔、近すぎ…
「まだ、てことはいずれ手を出すつもりなのかな、な? 遥希くん」
「ださないよ、湊の彼女って知ってたらそんなことできな…」
「そんなことって?」
「え、いや」
俺、なんで責められてる?
いや、攻められてる!?
湊が俺の顎に指先を伸ばして、顔を上に向けられるんだけど、なんだこれ、なにされてる?
「こういうの、なんていうか知ってる?」
教えてやるよ
「女の子が喜ぶやつ」
いざというときのために、教えてやるよ
何されてるんだ! 湊やめろ!
「ごちゃごちゃめんどくせーな遥希」
だまれ、と言って湊が俺のこと、ベッドに押し倒してきた!
「湊おまえ、もう彼女と…こんなことやってるのか?!」
湊ひどい…
「悪かった、八つ当たり」
湊は気まずそうに俺から目を背けると、
「悪かった、もうしない」
忘れてくれと言って部屋を出て行った。
【湊side】~遥希も優芽も大切で
親友の遥希は、バカがつくほど真面目で、でもめちゃくちゃいい奴なんだ。
俺の緩衝材みたいなやつ。
まるで正反対に見えるらしいが、だからこそお互いの足りないところを埋め合えるわけだ。
なくてはならない存在、一生親友。
俺はそう思ってるんだけど、遥希はどうなのか、あいつ言葉にするのヘタだし、本当のところは良くわからない。
どちらかが欠けても、バランスが崩れんじゃないかなと思っていた。
同じ学校のやつがいないところがいい
そう言って俺は少し離れたまちの塾に通ってたんだけど、
そこで知り合ったのが、遥希も片想いしてるという、優芽。
優芽には俺から声をかけた。
誰とも交わることなく、いつもひとり。
横顔と、伸びた背筋、姿勢がきれいなところに惹かれた。
「ゆるゆる海の生物図鑑」
「国宝級イケメン判定本」
などという、少し風変わりな本を良く休み時間に読んでたのが印象的だった。
そんな優芽を、深海水族館へ誘ってみたり、
俺と遥希がテニス部での試合があるから、応援に来て欲しいと頼んだり、
少しずつ距離を縮めて行ったんだ。
遥希はたぶん、そのとき優芽を見かけたんだろう。
その後、優芽が
「ほかの子にも応援頼んだから頑張って」
そんなことを言われたら、普通ならきっと喜ぶところだろう。
でもな、俺
「余計なことすんなよ!」
怒っちゃったんだよな
応援してくれるのは、優芽だけで良かった
ほかの女の子なんか邪魔なんだけど
それから優芽と気まずくなり、それで遥希に八つ当たりした。
遥希を傷つけるつもりは、なかったんだ。
優芽とも遥希とも気まずくなったが
「兄貴!」
弟の凪が俺に言う。
「遥希が兄貴のこと、クソってゆってたぞ」
ご丁寧に、告げ口してくる。
「ありがと、知ってる」
今度、俺たちは父の運転で、キャンプに行くことになってるんだ。
遥希も誘ったんだけど
「俺はいい、いかない」
今回は気まずいしな、しかたないか、
また、今度誘おうと俺は思って、今回は遥希のことは見送ることに。
まさかな、遥希にこの世から見送られる側になるとは思ってもいなかった。
【遥希side】~湊の死と樹のこと
俺と湊と樹は、良く3人でいたんだけど、湊が他界してからというもの、関係性がバランスを崩した。
樹は湊に遠慮してるところがあった。
その遠慮先がなくなったせいか、樹が俺を精神的に押さえつけるようになったんだ。
湊も命令口調だったけど、樹のそれは本当の命令だった。
「遥希、これ俺の妹」
夏の終わり、樹が紹介してきたのは、あの優芽だった。
父親が再婚する話は少し前から聞いていた。
相手の女性に俺たちより、一つ下の女の子がいるというのも、聞いてたんだけど。
それがまさかあの、湊の彼女であり、俺の密かな片想いの相手、優芽。
うまく行かなくなったと湊から聞かされ、優芽と疎遠になってたけど、
こんな形で再会できるなんて!
湊が「あとよろしく」と言って巡り合わせてくれたのかと、都合良く俺は解釈した。
「遥希、おまえ優芽に手を出すなよ」
ここでもまた手を出すなと言われてしまった
それから俺たち3人で遊ぶことが多くなった。
優芽は女の子だけど、女の子らしさはあまりなく、普通に友達としてつきあいやすい性格の子だった。
そんなある日、俺は初めて女の子から告白されたのだ!
一度も話したことのない女の子だったけど、見た目はとてもかわいい子。
つきあおっかな、どうしよっかなと、初めての告白にうかれていた。
そんな俺に、優芽がふざけて
「はるくん、女の子とキスしたことある? わたしで練習してもいいよ」
缶チューハイでチューなんて言って、いきなりキスしてきた。
そしてそのときから俺は、もうすっかり優芽を女の子として意識し始めた。
あのときの樹の顔を、俺は見ていなかった。
見ていたとしても、意味なんか分からなかっただろう。
守ってやれなかった後悔はいまもずっとこころに深く根付いてる。




