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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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【009】契約書

 「あれっ。」


引き出しには何も入っていなかった。


「とすると…。」


あとは、クローゼットか?



キイ…。



丁寧に扉を開く。


「うわっ。

めちゃくちゃ綺麗。」


部屋だけじゃなく、クローゼットの中まできちんと整頓されていた。



ガーッ。



15着近くある服を端っこに寄せると、その下から手帳らしきものを発見。

そしてその横には、透明のビニール袋に入ったお金も。


「見つけた!」


色が褪せた、茶色い革の手帳。

なんだか温もりを感じる。



パララッ。



めくってみると…。


「ん?

写真が挟まれてる。」


わざわざ手帳に挟んでいるくらいだから、大事な写真なのだろう。


日記を読む前に、ちょっと見てみるか。


俺は床に座ってあぐらをかくと、3枚の写真を床に並べた。



サッ、サッ、サッ。



1枚目は、幼い頃のマックスとマリオさん。

マリオさんって、こんな顔なんだ!

ふっくらしていて優しいタレ目で、なんだか七福神みたい。


「人柄の良さが出てるな〜。」


思わず独り言。


で、次。


「ふはっ!

えーっ?!

これ、ベンジー?!笑

若いし、今よりもかなり痩せてる〜。

そして、アロハシャツとメッシュが青いぞ?!

ふふっ。」


思わず写真を手に持って、顔に近づける。



じー。



バーの洗い場で、食器を洗っているベンジー。

洗剤の泡がモコモコと宙を舞ってる。



「なんだか恥ずかしそうな表情だな。

こんな時代もあったのか〜。笑

今だったら、

テメエ、カメラを向けるんじゃねぇ!

とか、キレ散らかすんだろうな。

ははは。」


一人モノマネで笑っていたら、写真を落とした。



ひらりん〜…。



「あ、あ、あ?」


写真の裏に、何か書いてある。


「えっと…。

ようやく慣れてきたベンジー。

心も元気に。」


ん?

心も元気って…。

過去に何かあったのかな…?


…


気になるけれど、これだけじゃよく分からないな。


少し心に引っかかりつつも、次の写真へ。



サッ。



最後の写真は、マリオさん、ベンジー、ドリスさんが、店の入り口で肩を組んで笑っているもの。

これも後ろにメモが…?


あった。


「2人のおかげで10周年。

かんしゃ、かんしゃ。」


「…。」


もう。

こんなの見たらさ。

やっぱり廃業する訳にはいかないよ。

解散なんて、間違ってる。

絶対!


俺は体がカーッと熱くなるのを感じた。



ササッ!



写真をまとめると、ズボンのポケットに入れた。


この写真を2人に見せて、もう一度説得しに…。


って、あの2人どこに住んでるんだ?!


しまった。


自分が異世界にやってきたこと、すっかり忘れてた。

この街のこと、彼らが住んでいる場所。

俺、何も知らない。


「ぐわぁぁぁぁ!」


頭を掻きむしる。



と、その時。


「良いっすね〜!

これはなかなか。

改装すりゃあ、だいぶ変わりますね。」


窓の下から、男の人の声が聞こえた。


「なんだ?」


立ち上がり、窓の下に目を向けると、派手な格好をした男が2人見えた。


金髪と銀髪で、ノコギリのようなギザギザヘアー。

服もそれぞれ金色と銀色で、鎖のようなネックレスをジャラッと付けている。


「なんだぁ、アレ…。」


よく分からないけど、ヤバそうな奴らなのは間違いない。

追い払わないと。



バンッ!



俺は部屋を飛び出し、階段を駆け降りる。



ダダダダダダダ…!!!


…


ギィ。



店のドアを開けると、男達は目の前にいた。


裸足な事も忘れて、砂浜に飛び出る。


「あの、何かご用でしょうか?!」


俺は鼻息荒く叫んだ。


相手はちょっとヤバそうな雰囲気だけど…。

でも俺は、なんてったって人生2回目。

恐れるものなんて、何もない。


ナメるなよ!



すると金髪の男が目を丸くして。


「お…。

おぉー!

にいちゃん!

先日は、契約ありがとねぇ〜。

明日まで待ちきれなくてさ、散歩がてらここまで見にきちゃったよ。」



!


契約…?!


そ、そうか!


マックスは、コイツらにここを売ったのか!


「そうそう。

君のおかげで、格安で良い物件が手に入った。

ありがとねぇ〜。

きっと良いギャンブル場になるわ、これ。」


銀髪の男が相槌を打つ。


「だよなぁ!」


ははははは!


男2人は、手を叩いて大笑い。


…


なっ…。


ワナワナワナ。


俺の体は震え出した。


ギャ、ギャンブル場だと?


ここを、ギャンブル場にするだと?!


ダメだ!

やっぱりここでどうにか食い止めないと!



「あの、すみません!

その契約、キャンセルしてください!

お願いします!」


ペコッ!


俺は腰が曲がるくらい頭を下げた。


とりあえず売るのをやめれば、あとはどうにかなるだろう。


「…。

はぁ?

にいちゃん、何言ってるの?笑

今更キャンセルなんて、あり得ないでしょ。」


「そうそう。

大人の世界はね、そういうの、通用しないんだよ?」


ははははは!


金髪と銀髪の男はまたしても大笑い。


くっ…。

胸がムカつきながらも、俺は前世のことを思い出した。

こういうのって、普通契約書を作るよな?

ここの世界も…そうだよな?

多分。

それには何て書いてあるんだろう。

もしかしたら、そこに突破口があるかもしれない。


俺は顔を上げた。



クワッ!



「契約書。

契約書を見せて下さい。」


2人をキッと睨む。


すると銀髪の男がポケットからタバコを取り出し、ライターで火を付けた。



カチッ。



「…すー。

…は〜。

契約書はさ。

君も持ってるでしょ。

売る方と買う方と、2枚あるんだから。

だけど君、あの時だってちゃんと読んでなかったよね?

もしかして捨てちゃったんじゃないの?

ちなみに俺達も、どっかにやっちゃった。笑」



あっ…。

元のマックスなら、ありえる。

読んでないうえに、捨ててそう…。

さっき部屋に入った時もそんなの置いてなかったし。


く、くそぉ。

こうなったら。



ザッ!



俺は砂に膝をついた。


「あの!

俺…。

違約金を払います!

なので、売却は取り消して下さい!」


必死に訴える。

もうプライドも何もない。

とにかく売却を阻止しなきゃ。

その為には…なんだってする!



それを見た男達は。


「違約金?

君、払えるの?

そしたら、300モンは請求しちゃうよ?」


タバコをふかしながら俺を見る。



300モン?

って、どのくらいなんだろ。

さっきオヤジさんのメモに、改装に150モン必要って書いてあったから…。

って、そうするとかなりボラれてる?

建物の改装費用よりずっと高いじゃん!

そんなのありえないよな?

でも、売却を回避するには…。


えぇーい!

どうにかなる!


「そういうことなら、わかり…。」


ました。

と言い終わらないうちに、店の後ろ側から、突然変な音が聞こえてきた。



「グオ…グオオオオオオオオオー!!!」



?!?!


ビクッとして、ここに居る全員の肩が上がる。


「な、なんだぁ?」


金髪の男がおそるおそる店の方を覗き込んだ。


するともう一人が。


「おい。

あれじゃねぇの?

この店、シロクマを雇ってたよな。

アロハ着た変な奴。」



パンッ!



それを聞いた金髪の男は手を叩いて。


「あー!

いたいた!

あれかぁ。

あれなら怖くねぇや。

ふははっ!笑」


えっ。

ベンジー?なのか…?


俺は膝を付いたまま、キョロキョロと首を振った。


するとまた。



「グワァァァァオ!!

ガオ、ガオ、グワァァァァオーーー!!!」



恐竜でも蘇ったのかと思うくらいの、ものすごい声。



「ひ、ひぃぃぃ!」


これには男2人も顔が真っ青。

砂浜に座り込んでしまった。


「な、な、な?!」


カタカタと震えながら、俺の背中を指差してる。


?


…?!


振り向くと、そこには月明かりに照らされた巨大な影があった。

体はシロクマのようなシルエット。

そして頭は妖怪のようにバカデカい。


「な、なんだよあれ。

頭が…!

森みたいにモリモリして、真ん中がリーゼントみたいにふっくらしてる…!

新種のバケモノか?!」


頭が…

モリモリ?

リーゼントみたいに…

ふっくら?


その影をじっと見てみると、確かに頭の左右がモリモリ、そして真ん中はふっくらしている。


これはもしや…。



すると、そのバケモノは少し動いて。



「ブフォッ!」



くしゃみ?

いや違う。

息を吹き飛ばしたのだった。



サ〜。



その息に飛ばされてきたのは、一枚の紙。

ひらひらと俺の横に舞い降りる。


…


「こ、こ、これは!」


【マリオのバー。

売却契約書。】


「契約書!!!」


求めていた契約書が、謎のバケモノの息によって飛ばされてきた。


なんという幸運…!


神様…(?)ありがとう!


俺はスリスリと手を合わせ、涙を流した。

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