↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/43

【008】ベンジーの答え

 30分後。



「森森(もりもり)〜!!!」


ワァァァァ!!!



店内は大盛り上がりだった。


外まで響く楽しそうな声に釣られて、お客さんが増える増える。

席が足りなくて、立ち飲みが出るほどだ。


「なんだか分からねぇけど、楽しいな!

あはは!」


「なんだか分からないから楽しいんだよ!」


もうお客さん同士ですっかり楽しんでる。




俺はカウンターの中へ戻った。


お〜疲れた。

でも、こんなに盛り上がるなんて。


ブロッコリー殿下(でんか)、ありがとう!


前の人生でも、俺の退屈な人生に光を差してくれた殿下(でんか)。

しかしまさか、第二の人生でも救われるとは…。

もっと推し活して、お金落としておけば良かった。

もう殿下(でんか)には、感謝してもしきれない。



ドス ドス ドス。



ベンジーがこっちへ来る。


「おい、すごいことになってるな。

客は増えるわ、盛り上がるわ。

飲み物のオーダーが止まらないぜ!

フハッ!」


ドリスさんも、レジからこっちへ向かってウィンクを飛ばす。


きっと売り上げが良い感じなのだろう。



…


楽しい時間はあっという間に過ぎ、閉店時間がやってきた。


最後のお客さんの会計をする。


「楽しかったよぉ。

ありがとな〜。

ウィッ!」


赤ら顔のおじさんが、お札を出しながらドリスさんに言う。


「それは良かったわ〜!

こちらこそありがとう。

また、お待ちしてるわね!」


俺達3人は店の外まで出る。


そして。


「ありがとう、ございましたぁー!」


ペコリッ。


お客さんのお見送りをした。




だぁぁー!!!

終わった!

なんか久しぶりに楽しい夜だった。

(前の人生では)彼女もいなかったし、毎日疲れが取れなくて、飲み会なんかもずっと断ってたし。

同期とみんなでワイワイご飯食べたのも、最後はいつだっけ?

という感じ。

こういう雰囲気は本当に久々だ。


店内に戻ると、ドリスさんがレジのお金を抜いた。

俺達はそれを持って客席に座る。

今日の売り上げの確認だ。


この世界のお金はまだよく分からないから、俺はとりあえずお札の枚数を数えよう。


「30、31…。

こっちは31枚です。」


「えぇ?!」


コインを数えていたドリスさんが、驚いてテーブルに腕をぶつける。


ドン!


「いたぁっ!

びっくりして、怪我してるとこぶつけちゃったわよ。

一晩でこの金額は、過去最高じゃない…?

す、す、すごいわー!

マックスが店を盛り上げてくれたおかげね!」


するとベンジーが、俺からお札をもぎ取った。


「ちょい貸せぃ!」


クワッ!


そして自分でも数えて確認する。


「…30、31。

ほんとだ。

マジで31枚あるぜ。」


これがどのくらいの金額なのかは分からないけど、2人の言葉の感じから、相当な売り上げだったに違いない。


俺は嬉しくなり、弾んだ声でこう言った。


「ほらぁ!

ちゃんとやる気、見せたでしょ?!

それに何よりも、お客さんがみんな楽しそうだった。

こうやって真面目に、店作りのための努力を惜しまなければ、きっと今後もやっていける!

俺、この3人で店を続けていきたい!

…

お願いします!」



ペコッ!



テーブルに頭がくっつきそうなくらい頭を下げる。


「…。

どうするの?

ベンジーちゃん。

私はパートだから、あまり意見する立場にないから。」


「…。

あぁ…。」


…


ベンジーは3分ほど考え込むと、口を開いた。


「まず。

今日のマックスはよくやったと思う。

自らお客さんを楽しませて、売り上げもしっかり取って。

食事の方もちゃんとできてた。」 



うんうんうんうん!


俺は大きく頷く。



「ただ。」



えっ。


ただ…?



「やっぱり人は一日で変われるのかってところだ。

マックスはこれまでずーっと、手伝いすらしてこなかった。

逆を言えば、今日こんなにやれるなら、オヤジさんが生きている間にやって欲しかった。

俺はオヤジさんに雇ってもらった恩があるから、尚更そう思ってしまう。

気まぐれで、明日からまた店やります。

でも数日したら、やっぱり飽きて辞めます。

そんなことされるのが一番困るんだよな。

だったらもう決まってたんだから、スパッと今日で店を終わらせて、各々別の道を歩んだほうが良いと思う。」



そ、そんなぁ…!



それを聞いたドリスさんも。


「まぁ…。

確かに言われるとそうかもねぇ…。

一応私も、今日で終わりなんだっていう心構えはあったから。

終わりにしちゃったほうが、良いのかもねぇ…。」



ガタッ!


ベンジーはテーブルに手をついて立ち上がった。



「決まったな。」



えぇぇぇぇ!泣


そんな!


中身はこれまでのマックスとは別人なのに!泣


俺、ケンジだよ!


だから途中で投げ捨てるなんて、そんなこと絶対しないのに!


でもそんなこと言ったって、信じてもらえないよな…。




「ひぃふぅみぃ…。」


ドリスさんはお金を数えて、三等分した。


「じゃ、これがマックス。

こっちがベンジーちゃん。

みんな、最後のお給料ね。

しかも一晩でこんなにたくさん。

でも…。

これも、最初で最後になっちゃったわね。」



ガタッ。



ドリスさんも立ち上がる。


「そしたら30分くらいで、さっさとここを片付けちゃいましょう。

そして、解散。」


ベンジーとドリスさんはテキパキと動き始めた。



えぇー…。

このお店も、2人のことも、好きになっちゃったのに。


本当に終わりにしないといけないの…?


それに、異世界に来て素敵な仲間と楽しいことをしたい。

その願いを叶えてくれるのが、この場所だって思ったんだけど…。


そしたら、別のどこか、別の何かを探してみるしかないのかな…。




「それじゃあマックス。

今までありがとね。

これからしっかり生きていくのよ。

そして町ですれ違ったら、声かけてね。」


片付けも終わり、いよいよ解散の時。

ドリスさんにハグをされる。



ギュッ。



「あ、えっと…。

こちらこそ、ありがとうございました。」


そしてベンジーも。


「今日の調子でやりゃあ、オメエも人生やり直せると思うぜ。

天国のオヤジさんを悲しませないよう頑張んな。

ちなみに明日の朝から店は引き渡しって言ってたけど、2階の部屋はどうなってんだ?

建物ごと引き渡しなら、自分の引越し先も早く見つけないと、困るのは自分だぜ。」


ん…?

確かに。

元のマックスって、ほんとにメチャクチャなヤツだな。怒

でも引っ越しっていっても、まだこの町のことよく分からないし…。


だーもう!

転生して楽しい生活どころか、早速試練じゃん。泣

明日は朝一番で、不動産屋さんに行かなきゃ。



「お世話になりました。

お元気でー…。」


夜の砂浜に消えていくドリスさんとベンジーの背中を見送る。


「はぁ。

明日以降も、この3人でやりたかった…。」


砂にめり込んでいるベンジーの足跡を眺めながら、なんだか寂しく思った。


…


ギィ。



俺は店の中へ戻ると、うなだれながら階段を上った。


トン トン トン トン。


そして、自分の部屋…じゃなくて、反対側のオヤジさんの部屋に入ってみる。


「マリオさんて、どんな人だったんだろう。

ベンジーもドリスさんも、あんなに慕ってさ。」


…


「おぉ…。」


彼の部屋はマックスの所と違って、綺麗に整頓されていた。


シンプルな茶色のベットに、小さな仕事用?のデスク。

ゴミ箱には、グジャグジャに丸めて捨てた紙屑(かみくず)がいっぱい。



「…ん?」



俺はあることに気がついた。


溜まっている紙屑(かみくず)の一番上に、赤いペンで


「重要!!!」


という言葉が見える。


看板の文字はあんなにヨロヨロしていたのに、これは力強く、はっきりと。

なんなんだろう。

ちょっと…

見ても良いよね?

何か大切なことがメモしてあるかもしれない。



カサカサ。



拾い上げた紙をデスクに広げて、シワを伸ばす。


どれどれ…。


【重要!!!

バーをレストランに改装計画。

年内実行。

お金→あと150モン。

目的→地元へ恩返し。

ベンジーちゃん、ドリスさんともっと楽しく働く。

いつか自分が死んだ時、息子のマックスへ店を遺せるようにする。

レシピのアイディアは日記帳に綴る。】


「…。」


マリオさん、こんな構想を練ってたんだ。

しかもこれがゴミ箱の一番上にあるということは、書いた直後に亡くなっちゃったんだな。

地元への恩返し、しかもバカ息子に遺してやりたい。

だってさ…。



ポタッ。


…


ジュワァ…。



涙がこぼれ落ちて、紙に染みた。

力強く「重要」と書かれた文字が、滲んで消える。

なんだか天国のマリオさんが泣いているようにも見える。


…この人の気持ちを考えたら、胸が苦しい。

元のマックスって、マジで大バカヤローだ。

こんなに良いお父さんがいるのに、ひどいことばっかりして。

親の心、子知らずすぎる!



ピッ!



俺は右手で涙を跳ね飛ばした。



「日記…。」


日記があると書いてあったな。

それも探してみよう。


うーん。

日記がありそうなところ…。


ここか?


ガラッ。


俺はデスクの引き出しを開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。