【045】かじょく?
ドッドッドッドッドッドッ…!!!
「ハァナコォォォォォ!!!!!怒」
妹に向かって突進していくベンジー。
しかし。
…ドンッ!⭐︎
ドシャア!!!
途中で、【海鮮三角焼き】の屋台にぶつかってしまったのだ。
「あらよっとぉ?!」
そのはずみで、屋台のお兄さんが手にしていた粉の袋が、宙を舞う。
ポ〜ン……!
ブワァッ……!!!
バサッ!!!
「ああん?!?!」
それはベンジーの頭の上にぶっかかり、全身が粉だらけになった。
「あーあーあー!汗
うちのシロクマがすみません!」
俺は慌てて立ち上がり、屋台の方へ駆け出した。
その間、ベンジーはキョロキョロと周りを見渡して。
「フンッ!フンッ!」
鼻息で粉を飛ばしていた。
そして。
「ンンンンン!
グワァァァ!!!」
目に粉が入ってしまったようで、苦しそうに唸る。
イラつきながら無我夢中で顔を掻きむしり……。
ガシャガシャガシャ!
「クッソォ!!!
なんも見えねぇ!!!」
粉まみれのまま、再び走り出した。
ドッドッドッドッドッドッ!
「ハァナコォォォォォ!!!!!」
…
…
…
バッ!
「ハァナコォォォォォ!!!!!
オメエ、こんなとこで何やってんだ?!?!
あん?!?!
その隣の男とは、一体どういう関係だ?!?!
えぇ?!?!
ハァナコォォォォォ!!!!!」
ガシガシガシガシ!
相手の肩を掴んで体を揺さぶり、ドデカい声で怒鳴りつけるベンジー。
「オラァ!!!
ハナコ!!!
なんとか言えってんだ!!!
それとも、この男とは……兄に言えねぇような関係だってのか?!?!
えぇ?!?!」
…
「ベ、ベンジー!」
タタタタタッ!
俺はベンジーの元へと走った。
「ベンジー!
ちょっと待って!」
ギロッ!!!!!!
粉だらけの顔で振り向いたベンジーは、殺気立っていた。
「うるっせぇ!!!
オメエは黙ってろ!!!
これは家族の問題だ!!!」
フンッ!!!
フンッ!!!
と、その時。
ツンツン。
「あん?!?!」
ベンジーが振り向くと、小さな人間の男の子が、背中を突っついていた。
「シロクマしゃん。」
「あ?!」
男の子は不思議そうな顔でベンジーを見つめる。
「これ、かじょくなの?」
「ああん?!
なんだぁ?!
…
そうだよ!!!
コイツは、かぞ…。」
…
…
…
ピキッ。
ベンジーの顔が凍りついた。
掴んでいる腕、話しかけている顔。
それは。
銅像だった。
【人類と初めて絆を深めたシロクマ・ゴンザロス】
銅像の横には大きなプレートが。
「…。」
「こら!マイケル!
何してるのっ!
変質者から離れなさい!
帰るわよ!」
グイッ。
子供は母親に連れられて、去っていった。
「…。
ゴン…ザロス……?
ハナコじゃなくて、ゴンザロス…。」
…
…
…
ヘロヘロ〜…。
ペタッ!!!
ベンジーは足の力が抜け、地面に座り込んでしまった。
「わっ、ベンジー?!
大丈夫?!
俺、さっきこれを言おうとしたんだよ。
妹さんは、もうどこかに行っちゃったよ…って。」
粉が目に入ったことで、相当視界が悪かったのだろう。
銅像に向かい必死で怒鳴るベンジーを止めようとしたが、聞く耳持たずで伝えられなかった。
「…。
俺は、ゴンザロスに向かって、ずっと喋ってたのか…。
はは…は。
ハナコのヤロウ、しばらく会わねぇうちに、随分固く、ゴツくなったと思ったら……。
そりゃあ、変質者と間違えられるわな…。
ははは…。」
白目を剥いて呆然とするベンジー。
さっきは笑いそうになったけど、この姿はなんだかちょっと可哀想。
ポン!
俺はベンジーの肩を叩いた。
「だ、大丈夫だよ!
なーに弱気になってんの!
ほら、さっき自分でも言ってたじゃん。
リーゼントにアロハを合わせるようなオシャレなシロクマは、自分だけだって。
ほんとにそう思うよ!
ベンジーは変質者なんかじゃない!
世界で唯一の、いや、宇宙で最もかっこいい、そして賢い、お洒落なシロクマだよ!!!」
「…。
もっと。」
え?
「もっと!」
キラキラキラキラ〜・:*
ベンジーは目を輝かせて俺を見てる。
「ゔっ!」
しまった!
褒めすぎた!
「…。
オラァァァァァ!!!
もっと続き、言えぇぇぇ!!!」
ガクッ。
はぁぁ〜…。
これなら、落ち込ませておいたほうが良かった…。
その後俺達は、屋台のお兄さんの元へ戻った。
「申し訳……ありませんでしたぁ!!!泣」
我に返ったベンジーは、自分のしでかしたことにショックを受け、誠心誠意謝罪する。
しかしお兄さんは良い人で。
「いいよ、いいよー!
全然大丈夫だから、気にしないで!」
なんて言ってくれたけど、そういう訳にはいかない。
ダメになってしまった分の材料費を払い、あとはいくつかの商品も、お持ち帰りで購入して。
しっかりと弁償した。
「本っっっ当に、ご迷惑をおかけしました。」
ペコリ。
2人で深くお辞儀をして、公園を出た。
…
「おい。
悪かったな。
オメエにまで、頭下げさせちまってよ…。」
しょんぼりと肩を落とすベンジー。
まだ体に力が入らないのか、歩くペースも超ゆっくり。
「ううん。
全然平気だよ。
それにほら。
美味しい海鮮焼き、(弁償のためだけど)またこんなに買ってもらっちゃったし。笑
ご馳走様です♩」
ガサッ。
俺はベンジーを元気づけるように、テンション高く袋を持ち上げる。
「ふはぁ…。」
しかしベンジーは大きなため息を吐いた。
「ハナコのヤロウ…。
今度実家で会ったら。
……タダじゃおかねぇ!」
今の言葉を聞いて、俺は思った。
「あのさぁ。
それじゃない?」
「あ?」
「その、威圧的な態度だよ。
…
ハァナコォォォォォ!
じゃなくて、ハナコ。
オラァァァァ!
じゃなくて、久しぶりだね。
とか。
こういうトーンなら、妹さんも逃げないと思うよ。」
ンッ。
と喉を鳴らすベンジー。
「俺ヨォ。
そんな言い方、してたか?」
「…ちょ!
覚えてないんかい!」
まったく…。
「きっと興奮してたんだね。
あれはかなり怖かったと思うよ。
妹さんじゃなくても、逃げ出したくなる。」
ベンジーのために、俺は少し語気を強めて言った。
ポリポリ…。
ベンジーは頭を掻き、うつむいた。
「そ、そうだったか…。
それは思いもしなかった。
次からは、気をつけねぇとな…。
ハナコ、元気にしてんのか?ってな。」
「うん、うん。
その調子!」
と、良い感じに話をしていると。
じーーーーー。
横断歩道の向こう側を見つめだしたベンジー。
ま、まさか…。
…
…
「ハァナコォォォォォ!!!怒」
ガクッ!
やっぱり。




