【044】公園
【人とシロクマ・愛の記念公園】
タクシーのおじさんに教えてもらって降りたのは、ここ。
人間とシロクマの交流を祝って作られた、歴史ある公園なのだとか。
じー。
とりあえず、入り口に設置してある地図を確認。
おぉ……思ったより広い。
全部回ったら、日本の昭和記念公園くらいはありそうだ。
「ああん?
そんじゃ、ここを通って……。
運転手さんが言ったように、【小鳥の広場】ってところへ出たら、左へ進むんだな?」
ベンジーは地図を指差しながら言った。
「うん、そうだね。
で、公園を抜けて道路を少し歩いたら、デパートが見えてくるみたい。
天気も良いし、ゆっくり散歩しながら行こう。」
確かにこのルートなら、信号の無い公園を通ったほうが効率良さそう。
…
てくてくてくてく。
のんびり歩きながら、ベンジーとお喋り。
「いやぁ〜。
それにしても、久しぶりにシロクマと喋ったぜ。」
道の両側に立ち並ぶ木々。
そこから漏れる、暖かな太陽の光を全身に浴びながら、ベンジーは嬉しそうに言った。
「そうだよね。
港町には、ベンジーしかいないもんね。」
この公園にはシロクマがたくさんいる。
ベビーカーを引いているお母さんシロクマや、タンクトップでランニングをしているシロクマ、学生同士で写真を撮っているシロクマも。
あっ。
冷却帽子と冷却リュックを背負って、バードウォッチングするシロクマも発見。
「すごいなぁ…。
シロクマさんがいっぱいだ。」
俺が呟くと。
「ああん?
そんなに珍しいか?」
ギュイィ。
ベンジーは腕を組んだ。
「でもなぁ。
彼らをじっくり見てみろ。
こんなにシロクマがいたところで……。
リーゼントとアロハシャツでキメてるのは、この、俺だけだ!!!
いかに俺のセンスが素晴らしいか。
これで、よーく分かっただろう。
フォッフォッフォッフォ。」
あ、あはは…。
センスが良いかどうかは分からないけど…。
パタパタパタパタ…!
「ん?」
少し先から、うちわを叩くような音が聞こえてきた。
よく屋台の人がやるような、あの音。
そして風に乗って、なにやら良い匂いも…。
クンクン!
ベンジーも匂いに気がついたみたい。
「なんだか、食欲をそそる香りがするな。」
鼻をピクピクさせてる。
「ね!
向こうからだよね。
何か食べ物を出してるのかも。
行ってみようよ!」
思えば俺達、こっちに着いてから何も食べてない。
ずっと歩いているし、お腹がペコペコだ。
「おう。
腹、減ったしな。
とりあえず見に行くか。」
タッタッタッタッ。
俺達は匂いに向かってへ走り出した。
…
「はい〜!
毎度あり〜!」
モクモクモク…。
パタパタパタ…!
煙をうちわで飛ばしているお兄さん。
やっぱり屋台が出ていた。
そこで作っていたのは、
【海鮮三角焼き】
というもの。
お好み焼きのような生地に具材を乗せ、三角形に形を整えて。
それを鉄板でこんがりと焼いている。
もう見た目だけで、カリカリ、フワフワなのが伝わる。
仕上げには、にんにくの香り漂う黄色いソース?
をかけて…。
うわぁ、もう我慢できない!!!
「すみません、2つください。」
ベンジーが注文すると、お兄さんは目にも留まらぬ速さで生地を鉄板に流した。
シャアァァァァーーーーッ!
「はやっ!」
思わず叫ぶ俺。
お兄さんは、慣れた手つきでチャッチャと調理していく。
…
「はい、お待ち!」
クレープみたいに、ぐるりと紙に包まれた三角焼き。
「ウォォ。
ありがとうございます。」
チャリン!
ベンジーはお金を払うと、1つを俺に渡した。
「あ、ありがとう。
お金…。」
「バーカ。
こんな細かい金、計算すんのも面倒だ。
いらねぇよ。」
え。
またご馳走してくれるのか。
これで何度目だっけ。
「じゃ、じゃあ。
次、どこかでデザートを食べる時は俺が出すね。
それならいいでしょ?」
毎回出してもらってたら、悪い。
「おう。」
返事をしながら、ベンジーは空いているベンチを探す。
キョロキョロ…。
「おっ、あそこがいい!
木の下だから、日陰になってるぜ。」
!
「ほんとだ!
ナイスな場所見つけたね。」
俺達は三角焼きを持ったまま、ベンチへ向かった。
…
「ふ〜。
結構お腹にたまった〜。」
俺は膨れたお腹をポンポンと叩く。
「だなぁ。
すっげぇ美味かった…。」
ベンジーも脱力してる。笑
2人でボーっとしていると、俺はあることに気がついた。
屋台の向こう側に、銅像が立っていたのだ。
目立つ所に、あんなに立派な……。
何か重要なものなのかな?
じーっ。
目を細めてみると、どうやらシロクマっぽい。
「ねえ、ベンジーあれ見て!
シロクマの銅像があるよ。
えーっと…。
【人類と初めて絆を深めたシロクマ、ゴンザロス】
だって。
へー。」
銅像の横に立て掛けられているボード。
これは結構大きな文字で書かれていたので、この場所からでも読むことができた。
ゴシゴシ。
目をこするベンジー。
「あ?
オメエ、あんなに遠いところの文字、よく見えるな。
ゴンザロス…だと?
聞いたことねぇな。
フンッ。」
ベンジーが褒めてくれたように、俺は昔から視力だけは良かった。
自慢できることはありますか?って聞かれたら、まずは視力って答えるくらい。
きっと、ゲームや漫画に、そこまでハマることなく過ごしてきたからかも。
(俺の目あんまり使ってない。笑)
つまり人生で夢中になったのは、お笑い芸人のブロッコリー殿下だけ。
……って、いやでもこれ、マックスの体なんだよな?
だけどまぁ、マックスは不良だったみたいだし。
本を読むとか勉強するとか、これまでほとんどしてなかったんだろう。
つまりケンジのおかげかマックスのおかげか分からないけど。
どのみち視力はバッチリだってことだ。
そんなことをゴチャゴチャと考えていると。
じーーーーー。
ベンジーは、まだ銅像を眺めていた。
「ちょ。笑
見つめ過ぎじゃない?
気になるなら、近くへ行って見てきたらいいのに。」
そう言うと。
「しっ!!!」
ガバッ。
ベンジーは突然俺の口を塞いだ。
「ん?!
ん?!」
俺がジタバタすると、顔を近づけて。
「しぃーーーーっ!!!」
な、な、なんだよ?
怖いんですけど…。
ベンジーが見つめる先を、俺も目で追う。
すると。
「…も〜う!
ナツヒコさんたらっ♡
口の周りにソース付いてるっ♡」
「こ、ここ?」
「ブッブー!
ハズレ♡
こっちよー♡
まるで子供みたいなんだから!
うっふふふ♡」
キャッキャッ!
…。
なんだ。
シロクマのカップルか。
てっきり銅像に興味があるのかと思ったら。
その先にいる男女を見つめてたんだ。
ベンジー、羨ましいのかな?
「…ナコ。」
え?
ベンジーがなんか言った。
そして目が血走っている。
ナコって、なに?
するとカップルが再び騒ぎ出した。
「やだぁー♡
ナツヒコさんってばぁ!♡
でも私、そんなあなたが大好きよ♡」
「ハナコちゃん…!」
ブチッ。怒
ベンジーの額から、血管の音が切れる音がした。
そして。
…
「ハァナコォォォォォ!!!!!怒」
ドンッ!
「うわっ?!」
俺は突き飛ばされて、ベンチから転がり落ちた。
「ハァナコォォォォォ!!!!!怒」
ドッドッドッドッドッドッ!!!
つま先走りで、カップルの元へと突進するベンジー。
……ハァナコ?!
どこかで聞いたような。
でも、誰だっけ?!
すると。
「お、お、お兄ちゃん?!?!」
女の子が驚いた顔で叫んだ。
へ?
お兄……ちゃん?!
…
そ、そうか!
ハナコって…。
ベンジーの、妹だ!
地面に打ったお尻を撫でながら、俺は思い出した。




