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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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38/44

【038】いざ、隣町へ

 出発の日の朝。


部屋で、スーツケースの中をもう1度確認。


「まずお金でしょ、そして下着…。」



ガサゴソ。



服はあっちで買い足す予定だから、最小限に。

あとはこれね。

忘れちゃいけない、ルーカスのコーヒー豆。

これが無いとカレーもアフォガードも作れなくなっちゃう。


…


「よしっ。

準備完了!」



最後の確認が終わり、スーツケースを閉じると。



ドンドンドン!



階段の壁を叩く音が聞こえた。


「おわっ。

めちゃ揺れる。」


…


「おぉい!

マックス!

まだかよ!」



あ、ベンジーが迎えに来たのか。


ドリスさんは家庭があるから、週の半分から合流。

フルーティーもコンサートだけの招待なので、後日合流。

ってことで、今日出発するのは俺とベンジーの2人だけ。



「はぁーい!

今行くー!」



ガコッ

ガコッ

ガコッ



なるべく階段が傷つかないよう、スーツケースをゆっくり引きずって降りていく。


…


「お待たせ、ベンジー。」


ベンジーは、いつものピンクのアロハシャツに、サングラスをかけていた。


「おう。

行こうぜ。」


俺はシンプルに、カーキ色のTシャツと白の半ズボン。


「…。

オメエ。

サングラスは?」


「え?

いるかな。」


「いるに決まってんだろ。

隣町(となりまち)は、日差しが強いんだぞ。」


そう言うとアロハ柄のスーツケースを開け、サングラスを取り出した。


「ほれ。

余分に持ってるから、貸してやる。」



サッ。



「あ、えと。

ありがとう。

2つ持ってたんだ。」


「あったりめぇよ!

旅行には、アロハとサングラスだろ。

それに1週間も行くんだ。

何個か持っていかねぇと、回らなくなる。」



バチン!



スーツケースを閉じる。


「何個かって。

たくさん持ってるんだ?

アロハシャツも?」


「……バッキャロォォォォー!

アロハは特に大事だ!

いくらあっても足りねぇ!

いつも着ているこれなんかは、同じの7着持ってるくれぇだ!」



えっ?!

同じやつが7着も?!

だから喪服以外は、これしか見たことなかったんだ!


相当、気に入ってるんだな…。



「じゃあ行くぞ。」


「あ、えと。

うん。」


俺は借りたサングラスをかけて、店の扉を開けた。



ギィ…。



「あ、そうだ。

これ。」


俺は外に出ると、新聞社から持ってきたコンパクト型カメラを首から下げた。



サッ。



ツアー同行の様子を、あとで記事にする予定。

良い写真、沢山撮ってこなくちゃ。



するとベンジーも、何かを首に下げた。



サッ。



…ん?



「ねぇ。

今の、何?」


…


「ああん?!」



くるっ!



俺の方に体を向けると、ベンジーの胸元には、手作りの社員証(?)が。



「は?

何それ…?」



じっ。



【足長ボーイズ代役候補・ベンジー】


…


ズルッ!



この前の履歴書にも書いてたけど。

ボーイズに何かあったら、マジで代役やるつもりなんかい!

無理だろ!笑



「ふんふんふんふん♩」



呆れる俺を無視して、ベンジーはご機嫌モードで砂浜を歩き始めた。



―



 「うわぁ…。」


ここは、港町空港。


海とカモメが描かれた青い壁画に、貝殻のオブジェ、そしてBGMは波の音。

規模はそんなに大きくないけれど、港町感溢れるお洒落な内装がとても良い。



ガラガラガラ…。



スーツケースを引きながら、俺はベンジーに付いていく。



まずは、荷物を預けてチェックイン。


そしてゲートをくぐると、ガラス張りの窓から沢山の飛行機が見えた。

地球のものとあまり変わらない形。

ただ、色がとってもカラフル。


「か、か、可愛いねー!」



ペタッ!



俺は思わず窓にへばりつく。


「…ったく。

空港に来たことねぇのかよ。

オメエは。」


うん、異世界の空港なんて初めて!


と言いたいところを抑えて…。


「初めてだよ〜!

色とりどりで可愛い!

俺達が乗るの、何色だろう?

黄色かな?水色かな?

ワクワクするね!」



はぁ〜。



オデコを押さえるベンジー。


するとその時。



♩ピンポンパンポン



「隣町(となりまち)への便をご利用のお客様。

搭乗のお時間です。

5番ゲートまでお越しください。」



アナウンスがかかった。


…


「おっ。

俺達の便だ!

ほれ、行くぞ。」


隣の町の名前が、隣町(となりまち)。

今更だけど、そのまますぎる。笑



「いよいよだねー。

楽しみ♩」


「だな。

田舎から都会へ、レッツラゴーだ!」



都会って言ってるから…。

日本でいう、東京みたいな場所なのかな?


そんなことを考えながら、5番ゲートへ向かった。



…



「チケット拝見しまーす。」


受付のお姉さんが、お客さんを1人ずつチェックしていく。


…


ベンジーの番が来た。


「どうも。

チケットは、これです。」


サッ。


ベンジーは、足長(あしなが)ボーイズの事務所が送ってくれたチケットを出した。


するとそれを見た受付のお姉さんは顔色を変えた。


「ハッ!!!

あ、あ、あのぅ…!」


肩を丸めて、声を震わせる。

目立つ位置に、【足長(あしなが)ボーイズ招待チケット】と印刷されているからだろうか?


「あのぅ…。

足長(あしなが)ボーイズの……代役をされる方なんですか?!」



ズルッ。


なぜそれを?!



俺は体をズラして前を覗き込む。


すると、お姉さんの目線はチケットではなく、ベンジーの胸元にあった。


ベンジーの(手作り)社員証を指差し、小さな声で囁く。


「足長(あしなが)ボーイズ代役候補…って、書いてありますよねぇ?!」


…


「フハッ!」


ベンジーは鼻を鳴らした。


そして。


「いやぁ…。

内緒なんですけどね。

でもまぁ、バレちまっちゃあ仕方ない。

…でっへへへへ!」


ニヤけながら、頭をポリポリ。



いや内緒って。

自分でその札ぶら下げてるんじゃん!

てかそもそも代役なんか任されてないし!



「あらっ。

内緒だとは、失礼いたしました。

頑張って下さいね。

ふふ。

あー、びっくりした。

では、機内へどうぞ。」



ウィーン。



ゲートが上がって、ベンジーは先に中へ入っていった。



ズンズンズンズン…。





「お次の方〜。」


俺の番が来た。


「あ、はい。」


俺もチケットを見せる。


「えーっと。

さっきのシロクマさんと、ご一緒ね?

席は、どうされますか?」


ん?

どうって?


「あれ?

指定席じゃないんでしたっけ?」


俺が聞くと。


「シロクマさんがご搭乗の際は、体が大きいので、人間とは別シートにご案内しております。

ですので、お客様だけ通常シートに座るか、それともシロクマさんとご一緒されるか。

お選びいただけます。」



え。

て事は…。

人間用よりも広い空間に座れるってことか!


そりゃあ迷わず。


「彼と一緒で♩」


「かしこまりました。」



やったー!

ただでさえファーストクラスのチケットだったのに、さらに上?!

つまり、極上のプレミアム席じゃん!


「るんたった♩」


ゲートが上がると、俺はスキップしながらベンジーの後を追いかけた。





…。


ガタガタガタガタ…



ぼー…。



なんで…こんなことに?




ガタッ!


ガコッ!


ゴツン!




「…痛い!」

「イテエだろコノヤロー!」


もう最悪!

選択を誤った。


ここは…。


貨物室だ。



床にペタンとお尻を付け、足を伸ばしている俺達。

その床から出ている簡易的なベルトで、腹回りをガードしている状態。


「だぁぁあ!!

もう!!」


ここは窓もなく、空間一杯にスーツケースがゴロゴロと転がっている。



「オメエ、なんでわざわざシロクマシートに来たんだ?」


片眉を上げるベンジー。


ほんとだよ。

俺って超バカ!

思えばペットの犬ですら、人間と同じ場所に持ち込みできないもんな。

冷静に考えたら、こうなる。


「…ふっ。

バカだな。

どうせ、

シロクマの体は大きい!

だから、広い席に案内してもらえる♡!

なんて、考えたんだろう。

愚か者が。」

 


ぎくっ。



く、くそぉ!


でも、図星。泣



ガタガタガタガタ…!



「うわぁ!」


また揺れた。


「この揺れ方は、もうそろそろ着くな。」


ベンジーは胸ポケットから鏡を取り出し、リーゼントをとかし始めた。



サラ〜、サラ〜、サラ〜。



「え?

もう着くの?

まだ20分くらいじゃない?」


「あ?

そりゃそうだろ。

かなり上から飛んでるんだ。

それに、隣町(となりまち)だぞ?」


そうなんだ。

良かったー。

これで1時間とかだったら発狂してたわ。

帰りは絶対【人間シート】に座ろう。涙



ガタガタガタガタ…



降下してきた!

よし、もうすぐ着くぞ!



って。


「……ぐわぁぁぁぁ?!」


飛行機は、ものすごい勢いで角度を変えた。

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