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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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35/44

【035】助け合い

 ウィーン。


スーパーの扉が開いた。


「皆様、お待たせいたしました。

港町No. 1スーパー、只今より開店です。」


…


シーン。


…


放送が流れると、ゆっくり、そして静かに列が動き始めた。


並んでいるお客さん達は、なぜだかみんな暗い顔。


「ねぇ、なんでみんなこんなに暗いの?

ポイント2000倍って、もっとテンション上がりそうだけど…。」


俺が言うと、ベンジーは人差し指を口に当てて。


「しっ!

バカヤロウ!

静かにしろ!」


目を釣り上げた。



…はぁ?



それっきり何も答えてくれなかったので、俺は黙ることにした。


喪服着て暗い顔して。

なんなんだ?




ゾロゾロ……。


列はどんどん動く。

これは思っていたよりも早く入店できそうだ。


すると。



ポクポクポクポク…。



店の扉の向こう側から、何かを叩く音が。



ポクポクポクポク…。

 


こ、これは!


木魚の音?!


そう。

日本の葬式で、お坊さんが叩いている、アレ。

でもなぜ異世界のスーパーに?

っていうか、やっぱり店内で誰かの葬式を?



クイッ。



オデコからずり落ちて来た懐中電灯を上げて、俺は扉の中へ入った。



ウィーン。



 

ズーン…。



店内は、真っ暗!!!

 

なんだこれ?!

通路も食品も従業員も、何も見えない!



カチャッ。



「うわっ!」


ベンジーが俺のオデコを触り、懐中電灯を付けた。


前後のお客さんも、みんなこのタイミングで付ける。


と、その時。



「2000バーイ…。」



?!?!?!?!



足を踏み入れてすぐ、扉の横に、店長さんが立っていたのだ。

そこで1人1人に何か紙を渡し、サインさせている。


ヒョイッ。


ベンジーが店長さんに右手を挙げた。

静かにしないとダメだから、それが挨拶代わり。

店長さんもそれに気付いて、ピースサインを頭に乗せる。


そして…。



俺達の番がやって来た。



「こ、こんにちは。」


俺は、息を吐くくらいの小さな声で挨拶する。


「おや…。」


店長さんは暗い顔でこっちを見た。


「マックス君、ベンちゃん…。

来てくれたんですね。

待っていましたよ。

さぁぁ…。

こちらに、サインを…。」



ぴらっ。


紙とボールペンを渡される。



懐中電灯をうまく照らして…っと。


「なになに…?」


そこには、結構長い文字が書いてある。



【本日ポイント2000倍。

大混乱、パニックを避けるため、お客様には葬式気分で買い物をしていただきます。

落ち着いて、そして暗い気持ちで前へお進み下さい。

なお、当店は本日大赤字になる予定。

少しでも節約するべく、店内のライトは全て切らせていただきます。

また、お怪我、死亡事故など、これらは全てお客様の自己責任となります。】


…


…


…


「は?」


なんだよこれ!

しかもお客様の自己責任って。

オカシイだろ!!!

電気も付いてないのに!!!

…ったく。

喪服は着るし、さらに怪我とか死ぬとか。

縁起も悪すぎる!


…


まぁでも、ここまで来たら買い物していくしかない。


俺とベンジーは、【了承した】欄にチェックを入れ、サインした。



マックス。


ジイ。




―


「いたっ!」


「あ、す、すみません!」


しまった。

前のご婦人の足を踏んでしまった。


もう…超買い物しづらい!


さすがに食品コーナーに冷気は流れているけど、全消灯はひどすぎる。

危ないうえ、鮮度や形も確認できない。


しかし、隣を歩くベンジーは。



バサッ バサッ。



どんどんカゴに品物を入れていく。


「オメエ、ちゃんと買い物しろよ。

これじゃあ日が暮れちまうぞ。」


俺にコソッと耳打ち。


いやいや、それはこの店に言ってくれよ。

こっちだって、普通に買い物がしたい。泣



ポクポクポクポク…。



あ、さっきの木魚の音が近くなってきた。


誰かがこのあたりで…?



チラッ。



頭の懐中電灯でそこを照らすと。


鮮魚コーナーの角に、座布団を敷いて座っている男性が見えた。

青白い顔で木魚を叩いている。


って。



「えっ?!?!」



今、なんか……!


通り過ぎる時に、もう1度彼の姿を照らす。



ピカァ!


ポクポクポクポク…。



木魚を叩く、中年で小太りのおじさん。

緑色の着物を着て…。



って、え?!



「ブロ?!」



俺が大きな声を出すと。



ボカン⭐︎!



ベンジーに殴られた。


「しーっ!

静かにしろっつってんだろ!!!」


いたたた…

でも、今の人、確かに…。


【ブロッコリー殿下(でんか)】


だった。


俺が前世で大好きだった芸人、ブロッコリー殿下(でんか)。

あれだけ推し活してきたんだ。

見間違えるはずがない!


だけど…。


ここにいるはず、ないよな?


それに、万が一転生しているとしても、今の俺みたいに違う人の体に入る訳だし。


同じ姿ってことは無さそう。


でも…。



チラッ。



気になって振り返るも、人の波に押されてどんどん前へ進んでしまう。


「いやいや。

違う。

他人の空似だ。」


俺は自分に言い聞かせると、暗闇の中、レジへ向かった。



 


「ありがとう…。

ございましたぁ…。」


店員さんも徹底して暗い。笑


レジを済ませて、出口の扉へ。



ウィーン。


…


キラキラキラキラ〜… ・:*.:



燦々と輝く太陽。

その光を浴びて、輝く俺のBODY。


あぁぁぁぁぁぁ……

気持ちがいい!

爽やかぁ!


外へ出ると、一気に気分が良くなった。

開放感がハンパない。



「ハハーン…♡」


ベンジーも両手を広げてリフレッシュ。


なんだよ。

やっぱりあの空間、苦しかったんじゃん。笑


で、そんなベンジーに俺は宣言する。


「あのさぁ。

俺、ポイントはいらないから、今後は普通の日に買い物するね。

もう無理。コリゴリ。」



すると。 



「…2000バーイ…。」


!


「う、うわっ!!!」


いつの間にか、店長さんが俺の後ろにいたのだ。


「マックス君。

キミ、私が命を削ってやってるポイントデー…。

気に入らなかったの?!

こっちは今日から1か月、魚の骨しか食べられないほど大赤字なのに…。」


 

ポロ…。


ポロ…。



涙を流す店長。



「あ、いや!

えっと、その…!」


アタフタする俺。



ボカン⭐︎!



本日2回目、ベンジーにぶん殴られた。


「店長ォ!

申し訳ありゃあせん。

コイツは、大馬鹿者ですよ。

2000倍のありがたみが……分かってないんですから!!!」



ギロッ!



すごい目つきで俺を睨む。



「…マックス。

オメエ今、最っ高に、嬉しいよなぁ?!

えぇ?!

今後もわざわざ、2000倍の日に来るよなぁ?!

あぁ?!」


こ、こ、怖い。


でも。

これ、パワハラじゃん!

シロクマのパワハラ!

ここで怯んだら、また訳のわからない2000倍デーに来ることになる。


よ、よし。

ケンジ。

ここで負けてはいけない。

断るんだ!



「あ、あの、俺は…!」



「店長ー!」



俺が最後まで言い終わらないうちに、店の裏口から複数の人が駆けてきた。



タッタッタッタ…。



「店長!

2000倍デー、お疲れ様です!」


「大赤字、おめでとうございます!」


そう言って、その人達は次々と店長の手を握る。


彼らの胸にはネームプレートが刺さっていた。

よく見ると…。

ここに商品を卸(おろ)している、メーカーさん達のようだ。



「店長!

これじゃあ売り上げゼロで、しばらくは何も食べられないでしょう。」


「従業員の給料や生活費も心配よね。」


「赤字が度を超えてるから、生死にも関わるな。」



そんな会話をした後、彼らは再び店長の手を握った。



ギュッ。



「てことで、今回の卸値(おろしね)、全てタダにしますから。」



え?



「ウチも!」

「ウチも!」

 


…えぇ?!



「あ、ありがとう!

キミ達!」


瞳を潤ませる店長。



「いやぁ。

うちのメーカー、今月は大赤字だな。」


「ウチもさ。

家族に給料持っていってやれないから、嫁に怒られる。

ハハハ。」


「ウチなんか、来月には倒産しちゃうかもしれないわ。

うっふふ♡」


ははははは


みんなで大笑い。




ポカーン。


俺は、この時点でついていけなくなった。




と、その時。



ピカァ!



店の屋根から、スポットライトが彼らに向けて照らされた。


そして。



【〜港町は、助け合いでできている。

今日も、明日も、明後日も…。

ルルルル〜♩〜】



急に放送がかかった。


と、同時に。



…パチパチパチパチ!!!



耳が壊れそうなほどの大きな拍手。

いつの間にか、俺達の周りにお客さんが集まってきていた。

みんな頭に懐中電灯を挟んだまま、ボロボロと泣いている。


それを見た店長は、感激した様子で群衆の前に立った。


「…皆さん!

ありがとう!

こうして協力してくれるメーカーさん、そして買い物に来てくれる皆様。

そのおかげで、この店は成り立っています!

赤字は……感謝の印です!

これからも…喪服で、来てくれるかな?!」


「行きますぅぅぅー!!」


ワァァァァ!


「せーのっ。」


……


「2000バーイ!!!」


ワァァァァ!

 


パチパチパチパチ!



会場?

は大盛り上がりだった。


ベンジーも頷きながら、しっかり拍手。



ボー。


俺だけ世界に入り込めず。


だってさ。

…全っっっ然。

助け合いになってない。

ただ、赤字の連鎖を起こしてるだけじゃん?!


頭痛がしてきた俺は、ひと足先にバーに帰ることにした。



「午前中、バイトの休み取ってて良かったぁ…。

はぁ…。」



フラフラしながら、1人スーパーの敷地を出た。

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