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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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34/44

【034】謎の光景

 カチャカチャ…


バーが閉まり、食器の後片付け。


今日はドリスさんはお休みなので、ベンジーと2人きり。



……



「なぁにぃ?!

ここが…

編集長の、父親の店だとぉ?!」


昼間に知った真実を、ベンジーにも報告。

この反応からすると、やっぱり知らなかったんだ。


「うん。

なんだって。」



ブクブクッ!!!



「うわ!」


スポンジを握ると、すごい勢いで泡が溢れ出す。 


忘れてた。

この洗剤、半プッシュで100皿分なんだった。



「でもヨォ。

そしたら、なんで編集長は普段店に来ないんだよ。

確か…。

オメエに新聞を持ってきてくれたあの夜。

俺が勤めてからは、来店したのはあれが初めてだったぜ?」


「あ、うん。

それはね、俺も気になって聞いてみたんだけど。

自分が行くと、オヤジが気を遣って、好きなように営業できないだろうからって。

だから、売った後は来店するのを控えてたみたい。」

 


ほぉ〜…。


と感心するベンジー。



「大した人だなぁ。

編集長は。」


「ねー。

俺も驚いちゃったよ。

なんかね、お墓参りにも何度か行ってくれたみたいよ。」


「墓?

って、オヤジさんのか?」



ジャー。



泡だらけの食器を水で流しながら、俺は答える。


「うん、そう。」



「そうだったんか!

いや、俺も今朝、墓に行ったんだよ。

そしたら綺麗な花が置いてあってな。

誰だ?

と不思議に思ったんだが、今の話を聞くと編集長かもしれねぇな。」


「あっ。

それきっとそうだよ。

今日は早起きして、お花を置いてきたって言ってたもん。」


編集長って、ほんと良い人。



……



ギュイィィィ…。


パン!パン!



洗い物が終わって、布巾を絞って水滴を飛ばす。



「はー!

終わった!

お疲れ、ベンジー。」


「おう。

今夜もなかなか忙しかったな。

って、そうだ。

オメエ、明日No. 1スーパーに行くんだよな?」


「あ、うん。

だから明日の午前中は、新聞社の仕事休む。

買い物したら、カレーを作ってみたいんだよね。

ちなみに編集長とフルーティーにも事情は話してあるから、今後はバイトの時間を少し減らすつもり。

お金も稼がないとだけど、料理の方も少しずつ練習しないとね。」


俺はそう言いながら、腰に巻いていたエプロンを外す。


するとベンジーが。


「それ、俺も行くわ。」


壁に寄りかかりながら俺を見る。


「…え?

スーパーに?」


「おう。」


「いや、そんな。

大丈夫だよ1人で。

そんなに荷物多くないもん。

お気遣いなく⭐︎

そんなことより、今夜洗濯したいものある?

あれば一緒に…。」



と言いかけた、その時。

ベンジーがピースサインを突き出した。



ピッ!



「な、なに?」


「2000倍。

明日はポイント2000倍デーだぞ。

お前、記憶喪失だから忘れてんだろ。」


「え。

ちょっと待って。笑

さすがにそれは覚えてるよ!

店長さんが頭にピースサインを乗せて、明後日は2000倍だからその時においで〜。

って言ったんだよね。

覚えてるから、大丈夫。笑」



俺はベンジーのピースサインを払い避けて、ロッカールームに入ろうとした。


すると、ここでまた。



「そうじゃねぇよ!

ったく!

喪服。

明日は喪服着ていくんだぞ?

それを覚えてんのかって聞いてんだ。」



は?



「喪服?

なんで?

スーパー行くのに?」



はぁぁぁぁ


ベンジーは呆れたように顔を下に向ける。



「やっぱり忘れてるんじゃねぇかよ!

いいかぁ、明日は俺が付き添ってやる。

それに俺も、お魚キャンディー買いてぇし。

てことで、喪服を着て、朝9時に噴水前に集合な。

じゃっ。」



バサッ!



「うわっ!

ちょっとベンジー!」


ベンジーはアロハシャツを俺の顔にぶん投げると、後ろ向きにバイバイをしながら出て行った。



「もーう。

なんなんだよ。

そしてこれ、洗濯しとけってことか。

にしても渡し方ってもんがあるだろ。

っていうか…。

これ、昨日着てたやつじゃない?!

今、服脱いで無かったもん!

だーもう最悪!!!」


俺はドデカイシャツを腕に抱えると、外の洗濯機へ向かった。



―


翌朝。



キュッ!


ズボンのチャックを上げる。


なんだかよく分からないけど、ベンジーに言われて喪服を着る俺。


「意味不明なんだけど…。」


ガサゴソ。


着替えを済ましたら、とりあえずお金を持って。

部屋を出た。



……



ザッ ザッ ザッ。



砂浜を歩き、町の入り口へ。

今日は朝から日差しが強くて、左手を顔に添えながら進む。



ピカァ…!



「ううっ。

暑いんですけど、マジで。」



黒い服だから余計に暑い。

スーパーに喪服とか意味が分からないし、服の中はすでに蒸れてるしで、なんだかイライラしてきた。


ツー……ポタッ。


頭から汗が流れる。



そして、噴水の前に…。


いた。



「ベンジー。

おはよ。」


ベンジーはもう来ていた。


彼もしっかり、黒色のアロハシャツ(喪服)姿で。



「おう。

ちゃんと喪服着てきたな。

よしよし。」


そう言うと。


「ほれ。」


俺に、小型の懐中電灯とヘアバンドを渡した。


…。


「ほれって。

これ、どうすんの?」



ズポッ!


バッ!


グリグリグリ…。



「痛い痛い痛い!」



ベンジーは、俺のオデコにヘアバンドをかけると、その中に下向きに懐中電灯を押し込んだ。


「な、な、な!

なんなのこれ!!!」


昨日から、喪服だとか懐中電灯だとか。

俺をからかって楽しんでいるのだろうか。



するとベンジーは前方を指した。


「あれ、見てみろよ。

ハンッ。」



ん?


歩いている人達を見ると、みんなオデコに懐中電灯を挟んでいる。



「え?!?!」


な、な、なにこれ!


どういうこと?!



「…ったく。」




ズポッ!


バッ!


グリグリグリ。



ベンジーは自らのオデコにもヘアバンドと懐中電灯を装着する。


「おーしっ。

準備完了!」


「は、はぁ?

何が始まるっての?

怖すぎなんですけど…。」



ドス ドス ドス!



ブツブツ言ってる俺を無視して、ベンジーは歩き出した。





3つ目の路地を曲がると、道の左右にのぼり旗がびっしりと立てられていた。


【本日、ポイント2000倍デー!!!

入店の際は、喪服の着用をお願いいたします!!!」



バサバサッ!!!



風に吹かれて揺れる旗。


「な、な…?!」


喪服着用って、スーパー側からのお願いだったの?!


でもポイント2000倍と喪服って、一体なんの関係が…?



そしてその先には、もう一種類の旗が。


【赤字のことならお任せください!!!

ポイント2000倍は当店だけ!!!】



いや、お任せ下さいってオカシイだろ。笑

しかも当店だけって、そりゃそうだろ。笑




混乱しつつ歩いていると、スーパーが見えた。


そして。



「えぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!」



お得すぎるポイントデーとだけあって、もう敷地の中はお客さんでいっぱい。


駐車場が、車や自転車ではなく、人で溢れかえっている。

 


「ゆ、遊園地のアトラクション待ちみたい…。」



駐車場にはロープが張られ、くねくねと蛇のように人が並んでいる。

すごい人数だ。

最低でも100分くらいは待ちそうな感じ。


そして全員喪服。

頭にはヘアバンドと懐中電灯もしっかりと。



「…。」



俺は呆然とした。


こんなカオスな光景は見たことがない。


そもそもこの世界自体が超絶カオスなのだが、今回は特にヤバかった。



トンッ。



ベンジーが俺の背中を押した。


「ほれ。

早く並ばねぇと、どんどん来るぞ。」


はっ。


「う、うん。

ここに並ぶ…。

並ぼう。」


俺はとりあえず列に並ぶことにした。

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