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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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33/43

【033】写真が語るもの

 まずは、マリオさんの記事を読もう。


ペラッ。


……


【8才の子供を抱えて、港町に引っ越してきたマリオさん。当時の心境は?】


【病気で妻を亡くし、しばらくは絶望感でいっぱいでした。働く気力が無くなり、毎日フラフラと…。でもある日、小さな息子に言われたんです。パパ、頑張らないと天国のママに怒られるよって。それを聞いて目が覚めました。このままではいけない。息子のためにもう一度立ち上がろう。そう、決心したのです。】



【…そうでしたか。でも、なぜ港町に移住を?】


【それにはちゃんと理由があります。実は妻との新婚旅行先が、この港町だったのです。綺麗な海と、新鮮な空気。そして優しい人々。彼女は港町をとても気に入っていました。またいつか訪れたい。そう、何度も口にしていたほど。

そんな思い入れのある場所で、息子と再スタートを切る。そういう気持ちで、ここへやってきました。】



ほー…。

そうだったのか。

それで、それで?



ペラッ。



次のページへ。


……


【なるほど。そして、海辺のバーを買い取ったと。】


【買い取った…。というよりも、譲っていただいた。の方がしっくり来ますね。だって、たったの1モンですよ?信じられますか?港町新聞社の社長さんには、もう感謝しかありません。

だってこの店はもともと、社長さんのお父様のものなんですからね。】




ん?


…



んんん?




【港町新聞社】の、しゃちょ……





「へっ?!?!」




俺は叫んだ。


すると、同じページを読んでいたフルーティーも。



「うそ?!?!」



やっぱり叫ぶ。




港町新聞社の……社長さん?!


って…!



パッ!



俺は編集長の顔を見た。




この、目の前にいる、編集長?!




すると編集長はニッコリと微笑んだ。


クイクイッ。


人差し指で、自分の顔を指差す。


 

「ほっほっほ。

ほーうほうほう。笑」



自分だよって言ってる。



「えぇぇぇぇ?!?!」



俺とフルーティーは絶叫。



「あ、あ、あの店って、編集長のお父様のお店だったんですか?!?!」



いやこれ、結構衝撃。

マリオのバーが……編集長の?!

まさかのまさか。

ベンジーからも聞いたことがないから、きっと彼も知らないのだろう。



「ほーっほっほ。

そうなんです。

実はもともとは、父の店なんですよ。

どうにもならなかったあの店を、マリオさんが助けてくださってねぇ…。」


「え?

助けてくださったって、逆じゃないですか?」


俺はキョトンとしながら言う。

だって、1モンで店を売ってくれたって、マリオさんは話してるよ?



「いえいえ。

そうではありません。

父の形見であるあの店はね、ずっと引き継ぐ人がいなくて困っていたんです。

1人息子の私は、こうして新聞社の道に進みましたし。

だからもう、店は壊すしかない…と。

そんな時に、子供を抱えて職を探していたマリオさんに出会ったんです。」


「…えぇぇぇぇ。

ちょっと待ってください。

編集長とは、マックス…いや、俺が子供の頃にすでに会っていたんですね?

そしたら、俺がここの面接に来た時って…。」



ニコォ。


編集長は、目尻に皺を寄せた。



「もちろん!

君のことは知っていました。

不良で有名…だからじゃなく。笑

なので君が現れた時には、縁を感じましたよ〜。

父の店をマリオさんが買ってくださり、そしてそのマリオさんの息子が大きくなると、今度は私の会社で働きたいという。

なんというか……。

私達の間には、不思議な絆を感じます。

ほーっほっほ。」


…


すると黙っていたフルーティーが口を開いた。


「編集長!

マックスが面接に来た時に、ほとんど喋りもしないで採用を決めたじゃないですか?

あれって…。」


「ほーうほうほう。

そうです。

マリオさんは私の恩人ですからね。

マックスがここで仕事をしたいというのならば、今こそが恩返しの時。

断る理由はありませんよ。」



……えぇーっ!!!

そういうこと?!


なんか色々びっくり。

確かにあの日は、顔を見るなり即採用って感じだった。

そして思い返してみれば、先日バーに新聞を届けてくれた時。

編集長は、壁の写真をずっと眺めていたんだよな。

あれは店の歴史が分かるような写真。

お父さんの店だから、あんなに長い時間眺めていたのか。

今になってみれば、色々なことが腑に落ちる。



ポン。



編集長が、俺の肩に手を乗せた。


「マリオさんは亡くなってしまいましたけれど。

こうして君が新聞社で働き、そしてまたバーを継いでくれること。

きっと、天国で喜んでいますよ。

勿論、私も、私の父もね。

感謝しています。

ありがとう。」



へ、編集長…。


編集長って、風変わりな面もあるけれど。

心が温かい人なんだな。

だからここの新聞社も、長く続いているんだろう。

人柄が良くなかったら、どんな会社でもダメになるもの。

……

って、そしたらアレを伝えなきゃ。



「編集長、すみません。

これは初めて話すことなんですが。

実は、あのバー…。

レストランに変えようと思っているんです。」



えっ!



という顔で俺の方を向いたのは、フルーティー。


「マックス、そんなこと計画してたの?!

じゃあ、バーと掛け持ちで新聞社の仕事をしているのは改装費のため?」


うん。


と俺は頷く。


「バーだと、どうしてもお酒がメインになるでしょ?

そうすると、来てもらえるお客さんが限られちゃう。

まず子供なんかは絶対にNGだし。

だけどレストランにすれば、もっと色々なお客さんに楽しんでもらえる。

…

って実はこれ、オヤジの案なんだ。

死後にメモが見つかってさ。

地元の人達へ恩返し。

そのために、レストランにしたいって。」



サッ。



静かに話を聞いていた編集長は、メガネを外した。


そして。


ズボンのポケットから、先日俺がプレゼントしたハンカチを取り出すと、ギュウッと目頭を抑えた。


「…。

おぉ…。

ありがたい、ありがたい。

とても良い案ですね。

父の店を…。

そうでしたか…。

ぜひとも、宜しくお願いします。」

 


ペコ。



「あ!

編集長、やめて下さいよ!

こちらこそ、あんなに素敵なお店を譲っていただいて、感謝しています。」



ズズッ。



編集長は鼻をすすると立ち上がり。


「あー。

久しぶりに色々思い返したら、泣けちゃいました。

ちょっと、洗面所で顔を洗ってきます。

お2人は続きを読んでいてください。」


そう言うと、廊下へ出て行った。




「…なんか、編集長の新たな一面を知ったって感じね。」


フルーティーの大きな目にも涙が。



「うん。

そうだよね。

助けて、助けられて。

今あることの全ては、そんな過去から来てるんだね。」

 

はぁ…。


俺は天井を見上げる。



天国のマリオさん、編集長のお父さん。

見ててね。

俺とベンジーとドリスさんで、人々に愛されるレストランを絶対に作ってみせるから。

そして今では、転生した自分(勿論周りはそれを知らないけれど)を受け入れてくれたこの町に、俺自身も恩返しがしたい。

そう思ってるよ。


この世界の人達に喜んでもらえるお店を作ろう。




「で、ベンジーの記事は…。」


ペラッ。


今度はこっちだ。


青メッシュのベンジーが、町に来たっていう記事。

ピンク色じゃなくて?

と思ったけれど、思えばマリオさんの手帳に挟んであった、昔の写真。

あれも青メッシュに青アロハだったんだよな。

なんで途中からピンクに変わったんだろう?

いつか、聞いてみよう。



「あんまり書いてない。」


フルーティーがボソッと呟いた。



「え?」



俺が聞き返すと。



「ほら。

写真はあるけど、文字はそんなに…。

数年前に、この町に来たベンジーをマリオさんが雇ってあげた。

としか。」


「…。

ほんとだ。」



2人の写真が載っているだけで、情報はほぼ無い。


なーんだ。

ガッカリ。

このへん、詳しく知りたかったな。



バッ、バッ、バッ、バッ。



フルーティーが、積み重なっている新聞を素早く振り分けていく。


すると。



「あ、待って!

こっちにもあるわ!

これも…。

これも!」


パパッと新たに3部取り除くと、それらを床に広げた。



「おっ?!」



なんと、そこにもベンジーの写真が。


フルーティーはそれを見て笑う。



「ふふふっ…。」


?


「ねぇ、何がおかしいの?」


何がおかいしいのか分からない。



「ふふっ。

違うわよ。

面白くて笑ったんじゃないわ。

良かったなと思って笑ったの。」



「え?」



ちょっと意味が…。


「どういうこと?」


するとフルーティーは、右の新聞から左の新聞に向かって指を差した。



「いい?

早い日付けの順に、ベンジーをよーく見て。

……

まずはこれ。

さっきの、シロクマさんが町にやってきたっていう記事の写真。

マリオさんの陰に隠れて、どこか寂しそうな顔してる。」



「…うん。

確かに寂しそう。

ていうか、表情がちょっと暗いね。」



サッ。



「で、次。

今度は2人が横に並んで、少し微笑んでる。

……

次はお店のバーカウンターで、慣れた手つきでお酒を作っている姿。

……

そして、最後。

マリオさんとドリスさんと3人で、店の前で大笑い。

しかも、ピンクメッシュのシロクマさんっていう表記に変わったわ。

メッシュの色が、今のピンク色になったのよ。」



……


!!!


「ほ、ほんとだ!

文字は少ないけど…。

これを見れば。」



フルーティーは頷いた。


「うん、うん。

ベンジーが、マリオさんと出会って、あのバーで働いて。

そうして日が経つほどに、どんどん彼の笑顔が増えているの。

それにベンジーだけじゃなくて、マリオさんも。

この写真を見るだけで、彼らがどんな時間を過ごしてきたのかが分かるわ。」


…


ほんとうだ。

働き始めたばっかりの頃のベンジーは、どこか自信無さげで寂しそうなんだけど。

日が経つにつれて、表情が明るく変化してる。


…はっ。


俺はここで思い出した。

マリオさんが手帳に挟んでいた、あの写真。

そしてその裏面に記されていた言葉を。



【ようやく慣れてきたベンジー。

心も元気に。】



これこれ。

心も元気にって。

やっぱりベンジーって、若い頃は何か抱えていたのかも。

でもマリオのバーで働き始めて、それが変わっていったんだな。



じーーー。



俺は新聞に顔を近づけて、もう一度よく見る。


ベンジーとマリオさんの絆。

それが、このたった4枚の写真だけで伝わってくる。

きっと彼らも、助け助けられここまで来たのだろう。



バサッ!



「おわっ?!

びっくりしたー!」



フルーティーが新聞を追加して、床に置いたのだ。


「これも、忘れないでよね!笑」



ん?

これは…。


この前俺達が書いた、遊園地の記事?



【トキ⭐︎メキ】Tシャツを着て、ウィンクしているベンジーの姿が。


「ははは。

そうだった。

最新のこれも、忘れちゃいけないよね。笑」


ベンジー、今はこんなに明るく元気になって。

本当に良かったな。




「…ねぇ。

編集長、遅くない?」


フルーティーがドアの方に目を向ける。


そういえば、洗面所に行ったっきり帰ってこない。


「確かに…。

ま、まさか、トイレで倒れて…?!」


いや。

待てよ。

あの人の場合はそうじゃなくて…。



俺達は顔を見合わせた。

多分、同じ事を思っている。


「さ、じゃあ仕事に戻りましょうか。」


「そうだね。

編集長はきっと…。」



「寝てるから!」

「寝てるから!」



俺は立ち上がり、ファイルを片付け始めた。

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