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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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32/44

【032】過去の新聞

 カラン。


俺は新聞社へ通勤途中、封筒をポストに入れた。

昨日書いたあれ。

足長(あしなが)ボーイズの事務所へ送る、履歴書だ。



ていうかもう。

本っ当に、疲れた。

ベンジーとドリスさんの大暴走。

しかも意味不明なアピール。

トップアイドルが絡むと、2人ともテンションがおかしくなるんだもんな。

楽しみにしているツアーだけど、今の段階でこれじゃあ…。

現地に行ったら、どうなってしまうんだろう。


はぁ。

 


…



「おはようございます。」


ガチャッ。


新聞社のドアを開ける。



「あ、おはよーう!」


勤務時間の20分前なのに、フルーティーはもう来てる。


「あれ?

今日は早いね。」


俺がそう言うと、フルーティーは自分のふくらはぎを撫でた。


「うん、そうなのよ。

実は夜中に足がつっちゃって…。

そこから眠れず暇だったから、早めに出勤したの。

という事で次の記事は、【足のつり】をテーマにしようと思いまーす。」

 


おぉ。

さすが記者。

そういうのも、次のネタに繋げるんだ。

すごいな。



「それで、今はもう大丈夫なの?

足。」


俺は椅子に座りながら聞いた。


「うん、もちろん。

だけど寝不足で疲れちゃったから、今日は取材はお休みしない?

室内でやれることを探そう?」


あ、今日は外に行かないのか。

俺も疲れてるから助かる。


「おっけーい。

言ってくれれば、何でもやるよ?」



…



「それじゃ、マックスはそっち。

私はこっち。」



ドンッ!!!



フルーティーは腕をプルプルさせながら大量のファイルを持ってくると、それを床に置いた。

(というか、投げた。)

 


「け、結構あるね。」


俺の口元は引き攣った。


だって、分厚いファイルがこんなに沢山…。



「当たり前よ。

ここには数十年分の新聞が入ってるんだから。」


「そ、そ、そんなに?!」



これからやろうとしているのは。


過去の記事を、大事なところだけピックアップする作業。

で、残りは廃棄。



「よぉし…。

やるか!」


バッ!


俺は覚悟を決めて床に座った。


それを見たフルーティーも、勢いよく拳を挙げる。


「やるぞー!

えいえい、おー!!!」



…



俺は(転生して)港町に来たばかりだから、昔の記事を見るのはとても面白い。


「へぇ〜。」


【町への入り口に、噴水を設置。】


だって。

この噴水、こんなに前からあったんだ。


んで、次は……?


ペラッ。



【港町No. 1スーパー。

全てのスーパーを抜いて、赤字1位に。

店長、感動の涙を流す。】


あ、あのスーパー…。

赤字で1位取って感動って、俺には理解できないんだけど…。

店長さん、頭にピースサイン乗せて喜んでる。



ペラッ。



【シングルファザーのマリオさん。

古びたバーを買い取る。】



?!


こ、これは!!!



「ねねね、フルーティー!

早いけど、休憩取っても良い?!」


俺は興奮して、思わず早口になる。

マリオさんがバーを始めた時の記事があるなんて。

これはじっくり読んでみたい。


「いる、いらない、いる、いらない…。

え?

良いけど、それにしても早くない?

休憩って、お昼って意味でしょ?」


あぐらをかきながら、フルーティは壁の時計を見た。


「そうなんだけど。

これ、見てよ。」



バサッ!



俺は手にしていた新聞を左右に広げてみせた。



「……。

あー?!

マックスのお父さん!

マリオさんだ!

そんな記事があったのねー。」


フルーティーは前のめりになる。

俺と一緒で、興味津々。


「そうそう。

これ、ちょっと読んでみたいなって。

だから、今からお昼休憩取っても良いかな?」


「もちろん良いけど…。

って、マックス!

その下も!」


フルーティーはクイクイッと人差し指を床にやった。


そこに視線を向けると。



【町に現れた、リーゼントヘアーに青メッシュのシロクマさん。

マリオさんの店で雇われる。】



「ふぁ?!

こっ、こっ、これはーーー!!!」



ヤバい。

こっちも読んでみたい。w

てか、ピンクじゃなくて青メッシュ……?



「マックス、それ、私も読みたい!

一緒に休憩に入ろう!」


フルーティーは手にしていたファイルをぶん投げると、床から立ち上がった。

こんな題名見ちゃったら、我慢できるはずがない。


「うん!

休憩休憩!

お昼、買ってこよう!」



ダダダダダダダー!



俺達は財布を持つと、外へ飛び出した。



…



「いつもありがとう〜。

また来てね♩」


青と赤の縞々(しましま)帽子を被ったお姉さんが、俺達に手を振る。


新聞社のすぐ近くにある【やみつきシーフードサンド】で、

「ちびっこ帆立のピリ辛サンド」

を購入したのだ。


バターでこってり炒めた甘いホタテに、唐辛子のスパイシーさがミックスされた、食欲をそそる商品。

こんなの、絶対美味しいに決まってる。



「私ね。

この店で、これが1番好き!♩」


袋をゆらゆらと揺らしながら歩くフルーティーは、とても嬉しそう。


「へー、そうなんだ。

俺は初めて食べるよ、ホタテサンドは。

フルーティーのイチオシなら、なお楽しみ。

…

それにしてもさ、あの店員さん、ニコニコしてて感じが良いよね。」


「うん。

ユッキーさんね。

この町でまともなのって、ユッキーさんとルーカスくらいよ。」


ははは


と笑うフルーティ。



あのお姉さん、ユッキーさんっていうのか。

覚えておこう。

そしてまともな住民は、彼女とルーカスだけ…と。w



…


ガチャッ。


新聞社に戻ってきてドアを開ける。


すると。



「ほーうほうほう…。

ほうほう…。

ほう…ほう!」


なんと、編集長が起きていた!

しかも床に座布団をしいて、さっきの新聞を読んでいる。



「へ、へ、編集長?!」



こんな時間に起きている姿は、超珍しい。


フルーティーは彼の元へ駆け寄ると。


「へんしゅーちょー!

起きていたんですね!

嬉しい!

今、編集長の分もお昼買ってきましたよ!」


そう言って、サンドが入った袋を一つ渡す。


「おぉ…。

これはこれは…。

ほーうほう、ほうほう!♡」


笑顔で袋に頬擦りする編集長。


これは相当喜んでるな。笑



ササッ。


俺も中へ入ると、編集長の隣に座った。

すると編集長は、後ろの戸棚を開けて、そこから座布団を2枚出した。

パッ、パッと俺達にそれを渡す。


「床で作業をする時には、これを使いなさいと言ったでしょう?

フルーティー。」


編集長がジロリと睨む。


「あ、あはは。

でしたね。

なんか面倒なんで、そのまま座っちゃいました。」


フルーティーは苦笑いしつつ、頭をポリポリ。



「…。

ところでマックス。

これを読みましたか?」


ピッ。


編集長が、マリオさんの記事を指差した。


「あ、まだです。

これから読もうかと…。

編集長はこの記事の記憶、あります?

オヤジやベンジーの当時のこと、覚えていますか?」


……。


すぅ〜


編集長は深呼吸をすると、目を細めた。



「そりゃあ…。

覚えていますとも。

なんだか、つい最近のことのように思いますねぇ。」


そう言って、新聞を床に並べる。



サッ、サッ、サッ。



「お昼をいただきながら、みんなで読みましょう。

ちょっと、お待ちくださいね。」


…


「んんん…。

シュラッペ(魔法)。」



シュラララ〜・:*.:



シュッ!シュッ!



いつもの印刷魔法で、新聞を複製。



「はい、マックス。

はい、フルーティー。」


編集長は、それを俺達に渡してくれた。


「あ、すみません。

ありがとうございます。」


…って。


いつもの変な儀式が無くても、普通に印刷できるんじゃん!笑



ガサゴソ。


俺は袋からサンドを取り出し、新聞を読み始めた。

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