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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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30/44

【030】ベンジーの家

 「あーっ!」


スーパーを出た後、俺は叫んだ。


「アイスクリームだけ、買えばよかった…。」


緑の海老カレーはともかく、アフォガードは材料も少ないし、すぐに作れる。

だったらこれだけでも試してみたい。

ポイント2000倍もいらないから、笑

もう1度戻って、アイスだけ買ってこよう。



「…ああん?

アイスぅ?」


ベンジーが眉を寄せた。


「あ、うん。

バニラアイスだけ、今すぐ欲しいんだ。

それとコーヒーが必要なんだけど、コーヒーは店に戻ればあるからさ。

てことで、ちょっと戻って買ってくる。」


そう言うと。


ギュッ。


ベンジーが俺の手首を掴んだ。


「おい、オメエ。

さっきから、カレーだとかアイスだとか。

一体何するつもりなんだ?

えぇ?

スーパーなんて、悪ガキとたむろする以外は来なかったくせによ。」


!

そうか。

俺、まだマリオさんのレシピのこと、ベンジーに話してなかった。


「えっとね、言うの忘れてたんだけど。

実はオヤジが、レストラン用のレシピを書き遺してて…。」


…


「なぁにぃーーー?!?!

そんなものがあったのかよ!

早く言えってんだバッキャロー!!!

つまり、オヤジさんの夢が……店で出したい料理が、その手帳に綴られているんだな?!

ああん?!?!」



キーン!



ベンジーが興奮してドデカイ声を出したので、耳が痛い。


「ちょっとぉ!

声が大きいよ!

はー……耳が。

って、そうそう。

イラスト付きのレシピが、20くらいあってさ。

そのうちのいくつかを、今度のツアーでも作れたらと思って。

それがね、もうみんな美味しそうなんだよ。」

 

「くぁ〜っ!」


ビシバシビシバシ!!!


ベンジーはニヤけながら、俺の背中をぶっ叩いた。


「痛い痛い痛い、痛いんですけど!泣」


まったくもー!

俺じゃなくて自分を叩いてくれ!泣



「やっぱりなぁ!

オヤジさんのことだから、きっとどこかに何かは遺してると思ったぜ!

いやぁ。

さすがだぜ〜。

フハ〜。」


ベンジーは腕を組んで、うんうんと頷く。



また叩かれたら嫌だから、今のうちにスーパーに戻ろう。


くるっ。


俺はしみじみしているベンジーに背中を向けた。


「んじゃ、そういう事だから。

アイス、買ってくるね。」


スーパーへ戻ろうと歩き出すと。



ガツッ!



再び手首を掴まれた。


「おぉい!

ちょっと待った!

バニラアイスと、コーヒーがありゃあ良いんだよな?

だったらそれ、俺んちにもあるぞ。」


…


「え?

俺んちって…。

家?

これから、ベンジーの家に行っていいってこと?」


「おう。

作ったものは、客に出すんじゃなく、試作品ってことだよな?

だったら家にあるアイスでいいだろ。

わざわざ新しいの買うのはもったいねぇ。

無駄遣いすんな。」


そう言うと、ベンジーはスタスタと歩き始めた。


急な展開に、俺はポカン。


「ベンジーの……家?」


え…。

えぇー!!!

ベンジーの家に、行けるんだ?!


声に出してみたら、止まっていた脳みそが動き出した。


ベンジーの家かぁ!

どういう所に住んでるんだろう。

って、実はずっと思ってたんだよね。

これはもう……めっちゃくちゃ楽しみ!


「あれ?」


いつの間にか、ベンジーの背中は遥か遠くへ。


「ま、待ってよー!」


タタタタタッ!


俺はそこに追いつくため、猛ダッシュした。



…



ザ〜ン…。


心が落ち着く、波の音。


「ここだ。」


ベンジーが足を止めたのは、ビーチ沿いの一軒家。

白い壁に、茶色い屋根。

平屋で、結構大きな家だった。


「へぇー!

ここに住んでるんだ!

このへんは、マリオのバーからも近いよね?」


俺はキョロキョロと周りを見渡しながら聞いた。

海沿いには、こうした一軒家。

そしてその少し後ろには、低層のアパートがいくつか並んでいる。


「…おう。

そうだな。

職場まで、徒歩10分くらいだ。」


ほー。

海が目の前で、職場も近くて、良い感じ。


「上がれよ。」


ガチャッ。


俺がぼんやりしていると、ベンジーが扉を開けた。


「あ、うん。

ありがとう。

それにしても、家はピンク色じゃないんだね。」


リーゼントに入れてるメッシュはピンク。

アロハシャツもピンク。

なのに、家は普通に茶色と白。

ここはこだわらないのかな。


「おお。

探したけど、なかったんだ。

なんてったって、海の町だからな。

景観に馴染むよう、白とか青とか茶色とか。

そのへんのカラーしかねぇよ。」


あ。

探したのは探したんだ。笑




「おじゃましまー……。」


扉の中へ入ると。



!!!


「えええーっ!

な、なんか…。

思ったより、かなりお洒落!」


いやほんと、驚いた。

人の家で失礼だけど、思わず床から天井までジロジロ見ちゃう。


「ったく!

思(・)っ(・)た(・)よ(・)り(・)

だとぉ?!

無礼な奴だな!

フンッ!」


壁紙は、淡いブルーの雪の結晶模様。

まさにシロクマの世界って感じの。

そして。

リビングには、ガラスの横長のテーブルに、使い込んだ感のある茶色いソファー。

向かいには小さくて古いテレビ。

部屋の端っこの棚には、本や雑誌がいっぱい。


しかも窓の外に目を向けると、砂浜と繋がったテラスまである。



「うわぁ……!

冗談じゃなく、すんごいお洒落!

中に入ったら、全部がアロハ柄かと思いきや。

これはかっこいい!

ベンジー、センス良いよ!」


俺が興奮して叫ぶと。


「ああん?

…

フハッ。

まぁな!

さすがに内装がアロハじゃ、落ち着かねぇだろ。

家はくつろげる空間じゃねぇとな。

フンフンフン♩」


ベンジーは嬉しそうに鼻歌を歌いながら、キッチンでお湯を沸かし始めた。


「ねぇ、本棚見ても良い?」


すごい数だから、気になる。


「おう。

好きに見ろよ。」


やった!




…ほー。


すごいな。

全部で100冊以上はありそう。

ベンジーって、読書家なんだな。

どんな作家のものを読んでる……



【リーゼントの大歴史】、【男を磨くアロハ術】、【シロクマにも分かる盆踊り解説】



「…。」


ちょっと、思ってたのと違ったかも。w

まぁ良っか。


って、ん?


端っこの空いているところに、写真が束になって置いてある。

これ、見ても良いかな?

さっき好きにしろって言ってたから、大丈夫…?


チラッ。


台所を見ると、ベンジーはまだ色々やってる。


よぉし、見ちゃおう。



パラッ。

パラパラ…。



おぉー?!


シロクマの写真が、いっぱい!!

か、か、可愛い!

これ、ベンジーの友達や家族なのかな?


「ねー、ベンジー。」


「あ?」


ピラッ。


俺は1枚の写真を上に掲げ、ヒラヒラさせた。


「これ、元カノ?」


まつ毛がくるんとした、可愛らしいシロクマさんが写ってる。


「なっ!

テメェ!

勝手に見たな!

元カノ……じゃねぇよ!

妹だ、妹!」


い、い、妹?!


「ベンジーって兄妹(きょうだい)いたんだ?!」


「…ったく。

いるよ。

兄貴と、妹がな。」


あ。

確かさっき、シロクマが3頭写ってる写真があったぞ。


えぇっと…。


……


これだ!


女の子、ベンジー、真面目そうな男の人。


の3人。



「ねー!

この3人で撮った写真が、兄妹?」



トンッ、トンッ。


コーヒーをたっぷり入れたアロハ柄のマグカップを、テーブルに置くベンジー。


「あぁ?

……そうだよ!

って、それ聞いてどうすんだ?」


いやもう、俺は興味津々だから。


「お兄さんて真面目そうな人だね!

ベンジーとはまた違った魅力って感じ。

名前、なんて言うの?」


「はぁ?

…

ボンジー。」



ボンジー?!


ベンジーと、ボンジー?!


語呂が良い!


「じゃあ、妹さんは?

リンジーとか?」


…


「ハナコ。」



ズルッ!


なぜか妹さんだけ種類が違う!笑



「へぇ〜。

良いね、兄妹たくさんいてさ。

俺はひとりっ子だから、ちょっと羨ましい。」


マックスも、ケンジの時も。

兄弟がいないからなぁ、俺。



ズッ。


ベンジーはコーヒーをすすると。


「まぁ…。

兄妹っつっても、色々あるからな。

実際は。」


…


「ふぅん…。」


なんか、これ以上は聞きづらい雰囲気。



「いつかさ、機会があったら俺のこと紹介してよ。

ベンジーの家族に挨拶したいな。」


「…。

おう。

いつかな。」


流すように答えると、ベンジーはソファーから立ち上がった。


「んじゃ、アイスクリーム出すか。」


「あ、うん!

だけど……。

この部屋、冷蔵庫が無いみたいだけど?」


そう。


さっきから気になっていたが、冷蔵庫らしきものが見当たらないのだ。


「あ?

なーに言ってんだ、オメエは。

目の前にあるだろ。

これだよ、これ!」


そう言って、茶色いドアの前に立った。


「え?

そこ、トイレとかシャワーじゃないの?」


俺がキョトンとしていると…


…


ガチャッ。


…



冷〜〜〜〜〜〜〜



…



!!!!!


「うわっ?!

なにこれ?!

この部屋全部が……冷凍庫?!?!」



フンッ。


と鼻を鳴らしたベンジーは。


「あったりめぇよ。

ほら、あそこに仕切りがあるだろ?

上半分が冷蔵庫。

で、下半分が冷凍庫だ。」



えぇぇぇぇ!


確かに、下の部分には凍った魚がバッサバッサと積まれている。


さすが、シロクマ…!



「で、コイツが。

んっ!

バニラ…アイスだ!」


うんしょと持ち上げたのは、バケツほどの大きさのアイスクリームカップ。



!!!


「マママママジ?!

これ全部アイス?!

嘘でしょ?!

バケツに入ったアイスって、俺ずっと夢だったんだけど!!!笑」


なんじゃこりゃ!

最高!

テンション爆上げ!

ひゃっほーい!!!♩


…


子供のようにはしゃぐ俺を見て、ベンジーはため息をついた。


「はぁ〜…。

コイツ、一体いくつだよ…。」

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