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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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29/45

【029】No. 1スーパー

 「じゃあ、俺達は1回家に帰るからなー。

またバーの営業時間になったら来るからよ。」


「マックスも少し休んでね〜。」


ギィ。


踊り疲れて、フラフラしながら扉を開けるベンジー。

体を動かして血流が良くなったのか、ほっぺがピンク色になってる。


「はーい。

って、2人とも、帰る時気をつけてね。

踊りまくって疲れただろうから。

また、夕方に集合しましょう。」



バタン。


扉が閉まり、ドリスさんとベンジーは帰っていった。



…



「はーあ。」


俺は大きく伸びをした。


アイドルのツアーに同行かぁ…。

ドリスさんはちょっと大袈裟だったけど、計画はしっかり立てないといけないな。

思えばこの店のメインの食べ物って、ローストビーフと、鶏肉と、サンドイッチ。

これくらい。

あとはチーズやナッツといった、皿に盛るだけの簡単なもの。


まぁ…。


お酒がメインの店だし、従業員3人で回してるから仕方がないんだけど。

でも足長(あしなが)ボーイズに提供するのには、もう少しレパートリーが欲しいよな。


トントントントン。


そんな事を考えながら、俺は階段を上がり…。


「うわっと!」


途中でよろめいた。

咄嗟に壁に手をついて、体勢を整える。

人の心配ばっかりしてたけど、自分も踊りすぎて足がカクカクしてる。

気をつけなくちゃ。


トントン トントン。


今度はゆっくり歩いて…。


マリオさんの部屋へ入った。

そして。


ガラッ!


机の引き出しを開ける。



そこから取り出したのは、茶色い革の日記帳。

以前、写真が挟まっていた、あの手帳だ。


「確かここに、レシピの考案がいくつか…。」


パラパラ…。


「あ、あった。」


この前はちゃんと読んでなかったけど、マリオさんの料理のアイディアが、数ページに渡って記されていた。


「ええっと…。

レストランに改装したら。

……

ほー。」


いつものヨロヨロした文字と、色鉛筆で描かれた温かみのあるイラスト。

これがなんだかホッと癒される。

マリオさんがニコニコしながらこれを描いてるの、なんだか想像できるな〜。



で、内容は。


⭐︎緑の海老の甘口カレー

⭐︎卵と濃厚チーズの絶品オムレツ(海をイメージした青い皿に乗せる)

⭐︎ヨットの形をした、果肉たっぷりオレンジシャーベット


などなど。



「えぇー!

めっちゃ……良い!!」


マリオさんの発想、素敵。

港町をテーマにしたレシピが、ページの端から端までびっしりと書き込まれている。

また、いくつかは自分で作ってみたようで、分量を訂正した跡も。


これは…。

バーをレストランに変えるの、すごく楽しみにしていたんだろうなぁ。


…


「よぉし!」


自分がやりたいのは勿論だけど、マリオさんのためにも頑張らなくちゃ。

マリオさんが遺してくれたから、俺はここで仕事ができているんだし。



パラパラパラッ…。



20以上あるレシピを全て読み終わった。

もう、どれもこれもすごく良かった。

店が建ったら、絶対メニューに入れよう。


ただ。

今回は時間がないので、ツアーで作れるようにするのはここから2つくらいかな。

ツアーまではあと1ヶ月。

2つなら、どうにかマスターできるだろう。


「う〜ん…。」


1つは、最初に見た【緑の海老の甘口カレー】にするか。

カレーなら大鍋で作って、スタッフさん達にも分けられるし。

それに、緑の海老は本当に美味しかったから

(やみつきシーフードサンドで食べた)

これは自分の料理にも取り入れたい。


あとは。


【バニラアイスの、香ばしコーヒーがけ】


これかな!

これって、地球でいう【アフォガード】だよね?

俺、好きだったんだよなぁ。

甘〜いバニラアイスに、苦〜いエスプレッソをかけてさ。

で、かけた瞬間に、クリーム色だったアイスが、ミルキーなブラウン色に染まっていくの。

それを見るのも楽しくて。


マリオさん、これを思いつくのすごいぜ。


心の中でグーサイン。


…


パタン。



日記を閉じると、俺はデスクからメモ用紙を取り出した。


そして、調理に必要な材料を書き出していく。


「緑の海老、にんにく、あとはカレールーって書いてあったな。

…

カレールー?!

おぉー!

マリオさんが書いてるんだから、この世界にもちゃんと売ってるんだ。

良かった。」


スパイスから作れって言われたら、終わってた。笑


メモメモ…。


今日は新聞社で休みをもらったから、これから買い物に行ってみよう。

で、試しに1回作ってみる。


てか、足は?


ムギュッ。


ふくらはぎを握ると、もう張ってない。

よし、これなら出かけられるぞ。


サササッ!


俺はクローゼットからお金を適当に取ると、階段を駆け降りた。



…



「えーっと…?」


今俺が見ているのは、町の入り口、噴水の横に設置してある【港町マップ】。


まだスーパーには1度も行ったことないから、地図で確認。


「3つ目の路地を左に曲がるのか。

なんだ、すぐじゃん。

これなら数分で着きそうだな。」


再び歩き出す。



1つ、2つ、3つ…。

ここか。


左に折れる。


すると、すぐに大きなスーパーが現れた。


【港町No. 1スーパー】


おぉ!

ナンバーワンって書いてある!

これは品揃えが良さそう。




ウィーン。


自動ドアを入り、入り口のカゴを取る。


足を踏み入れると…。



ダーーーーーーーーーーー!



「うほ?!」


すっごい品揃え!


とりあえず野菜と果物しか見えないのに、それだけでも圧巻の眺め。

とにかくカラフル。

とにかく種類が豊富。


なんだか海外のお洒落なスーパーって感じ。

それの、特大バージョン。


「へぇ…。」


手前のピンク色の葉っぱを手に取る。


「チェタス。

だって。

レタスのピンク色バージョンみたいな感じかな?」


メモしてきたものとは全く関係ない食材だが、珍しくてつい観察。



「アオカド。」


アボカド?


「ぶどぅー。」


ブドウ?


「レモン。」


あ、レモン。



…面白い!!!笑



異世界スーパー、最高だわ。


ここで1日中遊んでいられそう。



「フンッ。」


すると突然、大きな鼻息?のようなものが肩にかかった。


「ん?」


振り返る俺。


…


「べ、ベンジー?!」


そこには、買い物カゴを手に持ったベンジーが立っていた。


「家に帰ったんじゃなかったの?!

休むって言ってたのに。」


俺が聞くと。



「…ふあぁ〜。」



大口を開けてあくびをする。


なんだか赤ちゃんみたい。笑



「いやぁ。

1回帰ったんだけどよ。

疲れすぎて、眠れないっつうか。

あるだろ、そういう時。

だからスーパーに来てみた。」


クイッ。


そう言って、カゴを持ち上げる。


中には

【シロクマさん専用・お魚味のキャンディ】

これが3袋入っていた。


「あっ?笑

何これ。

シロクマさん専用…だって。

こんなのがあるんだ?」


俺が不思議そうに言うと、ベンジーは得意げな顔になって。

(最近このパターン多い。笑)


「おうよ!!!

いいかぁ?

この町に、シロクマは俺1人しかいねぇ。

つまり、だ。

【俺のためだけ】に、この商品を置いている。

そういうこっちゃ!」


フンッ!


再び大きく鼻を鳴らした。



「…へー。」


俺が一言で済ますと。



じーーーーーー。



もっと聞け

という、無言の圧をかけてきた。


「あっ…。

えっと。

すごいじゃん!

そ、それで?」


仕方ない。

面倒だけど、聞いてやる。笑


…


「フッフッフッフ。

そんなに知りてぇか。

ならば、教えてやろう。

俺はな…。

ここの店長に、気に入られてんだぁ!」


ドヤァ!


「…。」


なんだ。

そんなことか。

こういうオジちゃん、よくいるよな。


俺はここに顔が効くんだぜ〜♩

ドヤァ!


みたいなさ。



ボカン⭐︎!


「いったぁ!

何すんだよ!」


「オメエ…。

今の、心で呟いたつもりか?

全部………声に出てたぞ!

ワラァァァ!!!」


なっ!

無意識に声に出してたか!

しまった、失敗した。



スリスリ。



俺はオデコをさすりながら。


「…いってて。

ごめん、ごめん。

悪かったよ、許してよ。」


とりあえず謝罪。



すると。


…


「ベンちゃん?!?!」


通路の奥から、白い服を着た男性がこっちへ走ってきた。



タタタタタ…!



「来てくれたんだ、ベンちゃん!」


その人は、寿司職人のような格好をしていた。

白い帽子に、白い甚平のような服、そこに緑色のネクタイを締めて。

身長は俺の半分くらいで、ぷっくりと丸いほっぺが可愛らしいおじさん。


「おっ。

店長〜!

今ちょうど、店長の話してたんスよ!」


あ?

この人が店長さんなんだ。


「初めまして。

マックスといいます。」


俺はペコリとお辞儀する。


「あれまぁ〜!

ちゃんと挨拶できるようになったんだっ!

偉いっ♡」


そう言って、両手のピースサインを頭の上に乗せた。


なんか…また濃いキャラが出てきたな。笑



「すみません、店長。

コイツ、最近記憶喪失で…。

今、初めて会った気になってるんスよ。」


ベンジーが申し訳なさそうに言うと。


ぶんぶんぶん!


店長さんは首を横に振った。


「そりゃー、ねぇ?

父親が亡くなったら、誰だってショックに決まってる。

記憶も吹っ飛ぶよね!

だけど、安心して♡

このスーパーは、

初めてでも、常連でも、記憶喪失でも、シロクマさんでも。

誰でもウェルカムだから!」


再び両手のピースサインを頭に乗せる。



?!


「あっ、ありがとうございます!」


よく分からないけど、お礼。笑



バッ。


店長さんは俺達のカゴを覗き込んだ。


「マックス君、まだなんにも入れてないじゃない。

何をお探し?」


ガサッ。


俺はメモを取り出した。


「これなんですけど…。」


「どれどれ…?」


店長さんはメモを見ると。


「あー…。

今日はねぇ、緑の海老が入って来てないのよ。」


えっ。

そうなんだ。

残念。


「そしたらね、明後日にまた来なさい。

この日、入荷日だから。」


「あ、そうなんですね?

じゃあ他のものだけ先に買って…。」



バッ!



店長さんは俺のカゴを取り上げた。


「へ?」


俺がキョトンとしていると。


「おやめなさい!

海老が無ければ、カレーは作れない!

だから明後日。

全て、明後日に買いなさい!」


真剣な眼差し。


「えっと…?

な、なんで…?」


すると彼はピースサインをこっちに向けた。



ピッ。



「2000倍。」


?


「2000倍。

明後日は、ポイントが2000倍。」


…



えっ?


ポポポポポ

ポイントが、2000倍?!


それ、付けすぎじゃね?!


ありなの?!?!www


…


ダメだ。


ぶっ飛びすぎてて、想像したら…笑っちゃいそ……!泣



「オメエ。

店長さんがせっかく教えてくれてんだから、明後日にしろよ。

俺もこのキャンディ、棚に戻してくるぜ。

緊急じゃなければ、明後日のが得だろ。」


いや、そりゃあ。

得っていうか…。

もうそれ通り越して、店の経営が心配になるレベルだけど?!


まぁでも、せっかく教えてくれたなら…。


「えっとぉ…。

ご親切に、ありがとうございます。

そしたら、また明後日に買いに来ますね。」



うん、うん!


嬉しそうに頷く店長。



「じゃあ、また明後日に♡

約束だよ?

お得だからね。

すごく、お得だからね。

よそは真似できないくらい、お得だからね。

…

ではでは。

2000バーイ!」


店長さんは再び頭にピースサインを乗せて、店の奥へと消えていった。



…


ツンッ!


ベンジーが膝で俺を突っついた。


「今の、分かったか?」


「へ?」


色々衝撃すぎて、俺はもう呆然。


…


「店長はな。

不定期で、ポイント2000倍デーを開催してるんだ。

その日が近づくと、待ちきれなくて手で2のポーズを作っちまう。

こんなに分かりやすく客に知らせてくれる店、なかなか無いぜ?」


そう言って、感心するベンジー。



あ、あれ。

ピースサインじゃなくて、数字の2を作っていたのか。

で、2000倍デーが近いよと。

なるほど。


ぐぬぅ。

なかなか奥が深い…。



って、そうじゃない!


2000倍って、一体どういう計算でそうなるんだよ!笑



「ねえベンジー。

ここのスーパーって、No. 1って名前に入ってるけどさ。

それって品揃えのことじゃなくて、もしかして…。」



「赤字、ナンバーワン。」



ズルッ!


やっぱり!


…



クイクイッ。


ベンジーが、反対側を見るようにと顎を動かした。


そこには手書きの貼り紙がデカデカと飾られている。



【この店は、毎月大赤字です♡】



って、明らか経営失敗してるじゃないか!笑

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