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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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26/42

【026】思わぬオファー

 んっ…。


なんだか…。


眩しい…。


「…ス!」

「…クス」

「マックス!」



ハッ!



俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、目が覚めた。


「マックスー!

良かったぁ!泣」


天井のライトに照らされた、ドリスさんとフルーティーの顔。

2人とも目が潤んでいる。



ここは…?



視力が回復してくると、だんだん周りが見えるようになった。


俺はソファーにいて、あっちにはロッカー…。


「ここ、店のロッカールーム…?」


確か最後の記憶は、砂から尻が抜けて…。



「そうよぉ!

あなた、海に流されたのよ!

どれだけ心配したことか!」


そう言うとドリスさんは、包帯の巻かれた手で涙を拭い、立ち上がった。


「私、他のみんな呼んでくるわね。」



タタッ。



部屋を出て行った。



「…。

フルーティー、付き添っててくれたんだ。

ありがとう。」


「もう!

海に流されるなんて、何やってんのよ!

…でも。

私が足長(あしなが)ボーイズに夢中だったから。

気づくのが遅くなって、ごめんなさい。」



ずびっ。



鼻水を啜るフルーティー。


「あ。

いやいや違うよ!

俺の不注意なんだから、誰も悪くないから。」


慌てて上半身を起こす。



グイッ。



「それにほら。

俺もう元気でしょ?

見てよ。」


そう言って、半袖から力こぶをのぞかせる。


「…ふふっ。

全然筋肉ないのに、何やってんのよ。」


笑。

良かった、笑顔になった。


「でも俺、結構流されてたと思うけど、一体誰が助けてくれたの?

記憶がないけど、まさか自力で岸まで来たんじゃないよね?」


「あ、うん。

それはね…。」



バーン!



大きな音を立てて、扉が開いた。


ゾロゾロゾロ!


金髪の3人組が一斉に部屋へ入ってくる。


「あっ、足長(あしなが)ボーイズさん!

まだいらっしゃったんですか?!

…まさか、俺を心配して?!」


するとフルーティーが俺のオデコをピンッと弾いた。


「さっきの答えが、目の前にあるわよ。」


え?


「…ってことは。

この人達が、俺を助けてくれたの?!」



うん、うん。


と、息ぴったりに頷く3人組。



「えぇぇぇぇ!

あの強い波の中、海に入って、さらに救助まで?!

しかもトップアイドルが?!

…。

えぇぇぇぇ?!」


ありがたい気持ちと、信じられない気持ちで、俺はえーしか言葉が出なかった。



すると1人が口を開いて。


「そんなに驚かないでよ。笑

人命救助に、芸能人も一般人もないから。

それに、僕達にはこれ。

これがあるから、水泳だってお手のものさ。」



バッ!



3人は、長い足を斜め前に出した。


「…。

あ、足?」


俺がキョトンとしていると。


「そう、この長い足さ。

水の中では、ひと蹴りで100メール進むことができるんだ。」



キラーン⭐︎


白い歯が覗く。



「ひ、ひ、ひと蹴りで100メール?!?!」


嘘だろ?!

おい!

100メートルって、運動会の100メートル走の、あの距離?!

校庭一周分あるんだぞ?!


…


「もう!

足長(あしなが)ボーイズがいてくれて、ほんっとに良かったわね!

じゃなきゃ、あなた死んでたわよ。」


フルーティーは3人組に頭を下げる。


おぉ…。

まだちゃんと頭が回らないけど、足長(あしなが)ボーイズって素晴らしいんだな。

かっこいい、足長い、ひと蹴りで100メートル…。

これは人気出るわ。


そして何よりもさっきの言葉。



「人命救助に、芸能人も一般人もないから。」



このセリフと、口から覗いた白い歯が頭から離れない。

今後彼らの名前を聞くたびに、俺はこの瞬間を思い出すだろう。

ていうか、俺もファンになってしまった。



スッ!



俺はソファーから立ち上がる。


そして、深く頭を下げ。


「ほんっっっとうに、ほんっっっとうに!

ありがとうございました!

足長(あしなが)ボーイズさん達は、命の恩人です!!!」


もう、感謝しかない。

彼らがいなかったら、俺、ほんとに死んでたわ。


「…。

ほら、もう顔上げて。

僕達にとってはなんてことないし、君が助かったんだから。

これで解決だよ。」



キラーン⭐︎



ま、ま、眩しい!


なんて素敵な人達なんだろう…。



「ありがとうございました!

でも…。

何かお礼できませんか?」


このままじゃ、俺の気が済まない。


「え?

…うーん?」


3人は顔を合わせるも、


「ないよー。

大丈夫だから、気にしないで。」


するとフルーティーがこう言った。


「この人きっと、何かお礼しないと気が済まないんです。

そういう奴なんです。

どんな些細なことでも良いので、何かお手伝いできること、ありませんか?」


フルーティー…。


俺のこと理解してくれてるんだな。


なんだか今日は、色んな人に助けてもらってばかりだ。




…。


「うーん…。」


3人は円陣を組んで、ボソボソと相談し始めた。


「あれはどうだろう?」


「いやしかし、些細なことではなくなる…。」


「でもできることなら…。」



ヒソヒソ。



数分話すと、彼らは俺の方に向き直った。


そして。



バッ!!!



再び足を斜め前に突き出す。


「そしたら、遠慮なく!

来月、隣町(となりまち)で1週間のコンサートを予定しているんだけど…。

それに、一緒に来てもらえないかな?」



?!?!?!



「えっ?!」



これは予想外のお願い。


「あ、いや。

その、お誘いはありがたいのですが。

俺、楽器何も使えない…。

それに歌も歌えないですけど…。」


俺なんかコンサートに連れていっても、なんの役にも立たない。


すると1人がこう言った。


「違うよ!笑

音楽じゃなくて、食事の方で協力してもらいたいんだ。」


「あ、ご飯ですか?」


「そうそう。笑

今、君が目覚めるまで、あっちでおつまみとドリンクを出してもらったんだけど…。

これが…とても美味しい!

キンッキンに冷えたジュースと、ローストビーフが最高だった。

ローストビーフのソースは、君がシュラッペ(魔法)で作り上げたものだとか。

これをツアー中に食べることができたら、僕達のパフォーマンス能力も確実に上がる。

どうだろう?

隣町で、1週間だけ。

交通費、宿泊費、食費は全てこちらで負担。

もちろん、お給料も出させてもらうよ。」


…


「えぇぇぇぇぇ?!

そ、それ、むしろすごいっていうか…。

逆にそんなに色々やってもらって、お礼になるんでしょうか?汗」


戸惑う俺。



しかし、フルーティーは興奮して目を輝かせた。


「すっごーーーい!!!

足長(あしなが)ボーイズのツアーに同行?!

夢みたい!!!

マックス、引き受けなさいよ!!!」



ははは。


と笑う3人。


「良かったら、フルーティーさんもコンサートに来て。

必要な分のチケットは、いくらでも用意できるから。

それも、VIP席でね。」


「…へ?

…

い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!

…

これ、現実ぅぅぅぅぅぅぅ?!?!

…

はぁぁぁぁぁぁ?!」



やばい。

キャラ崩壊、再び。笑



「てことで、マックスさん。

どうかな?

隣町(となりまち)は、美味しいレストランも多いので、観光も楽しめると思うよ。」


…あっ。


その言葉で、俺はルーカスが話していたことを思い出した。



【全国のコーヒ店を回った。

そこで研究して、勉強して、修行して。

それを何年か続けたあと、やっとこの店をオープンしたんだ。】



色んな店を回って…研究…。



【アンテナを張ると良いよ。

この店の内装良いな、とか、ここのレストランの味付け良いな、とか。】



アンテナを張る…。




!!!



これは、良い機会になる。

思えばレストラン作りたいっていうボンヤリした考えだけで、他のお店の偵察とか全然してない。

 

ルーカス、為になるアドバイスありがとう!



バッ!



俺は真ん中の人の手を握った。


「他の従業員と相談しますが、ぜひ、前向きに検討させて下さい!

同行っていうのは、他の2人もですよね…?」



ニコッ。



「もちろん。」



やったー!!!

それならぜひ行ってみたい。

ただ、ここを1週間閉めることになるから、ベンジーとドリスさんに相談してから返事だな。


「ここに、僕達の事務所の名刺を置いていくね。

決まり次第、お電話ください。

それでは、お大事に。」


「あ、ありがとうございました!

必ず連絡します!」



ペコッ。



彼らは部屋を出て行った。




…。


「やっばい!!!

これ…現実よね?!」


ボンヤリとロッカーを見つめるフルーティー。


「うん、なんだかすごい夜だったね。

まだ俺も信じられないや。」


って、そういえば。


「あ、ねえ。

ベンジーどこにいるか知らない?」


フルーティーはドアの向こうを指した。


「彼ならさっき、外に出て行ったわよ。

そのうち戻るんじゃないかしら。」


あ、外か。


「あと、編集長は?

先に家に帰ったの?

…年だから心配で。

まさか、俺のこと待ってないよね?汗」


するとフルーティーは俺の方を向いて。


「編集長なら安心して。

砂で寝てるから。」


あ、そうか。

砂でね。


って、おい!



それのどこが安心なんだよ!



…危ない。

フツウに納得するところだった。


なんだか最近は、このカオスにすっかりハマりつつある俺。

かなりヤバい。笑

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