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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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24/43

【024】成功の裏には

 「ありがとうございましたー。」


ハンカチを買って、俺は店を出た。


両手には紫色の紙袋がいっぱい。


「よし、遠くの人から渡しに行こう。」


来た道を戻ると、俺は左に曲がって歩き始めた。


…


「こんにちはー!」


まずやってきたのはここ。


今日もスモーキーで香ばしい匂いが…。



もう、これで分かるよね?



「おー、マックス。

今日もどこかへ取材に行くのかい?」


そう。

コーヒー屋のイケメン店長、ルーカスの元へやってきたのだ。


「あ、ううん。

今日はね、これを渡したくて…。」



ガサッ。



紙袋を渡す。


?


「俺に?

開けても良い?」


レジにお客さんが並んでいなかったので、ルーカスは背後のカウンターで包装を開いた。



ゴソゴソ…。



「ん?

なんだこれー!

すごい可愛いハンカチ!」


ベージュ色に、コーヒー豆の刺繍が入ったデザインだ。



「えへへ。

気に入ってくれた?

それ、この前コーヒーをご馳走してくれたお礼だよ。

柄がめっちゃルーカスっぽいと思って。」


彼の反応が良かったので、俺は嬉しくなった。


「いや、これ、まさに俺の好みだよ!

よく見つけたなぁ。

ありがとう、大切に使わせてもらうよ。」


良かった〜。


なんか、正しいお金の使い方したって感じ。


…


「せっかく来たから、コーヒー買っていこうかな?」


「ぜひぜひ。」


んー…。


メニューがいっぱいで迷う。


「本日のブレンドコーヒー。

これにする!」


「りょうかーい♩」



グリグリグリグリ…。



豆を挽く音が心地良い。

そしてなんといってもこの香り…。


はぁー。

たまらないな。



「良かったら、店内で飲んでいく?」


言われてみれば、確かに。


テーブルも1つ空いてる。


「うん、じゃあそうさせてもらう。」


するとルーカスはカウンターから出てきて、

店のドアにかかっている看板をひっくり返した。



【open】から【close】へ。



「えっ。

お店、閉めちゃうの?」


「うん。

2、30分ね。

俺も休憩に入るから、一緒に飲もう。」


やった!

ルーカスとは、

もっと話してみたい、仲良くなりたいって思ってたんだよね。

嬉しすぎる♩



―


ズズズズ…。


「あー、うんまい。

ここのコーヒー、本当に美味しいな。」


窓際の席で、道行く人を眺めながら呟いた。


「ははは。

何度も褒めてくれて、ありがとう。」


いや、マジで美味いんだよ。

なんでこんな味が出せるんだろう?


「あのさ、ルーカス。

フルーティーから聞いたんだけど。

このお店を出すのって、結構大変だったの?」


…

 

トン。


ルーカスはコーヒーをテーブルに置いた。



「まぁ、なんだって大変だよ。

成功するには、苦労が必要。

逆を言えば、苦労が無ければ成功もしない。

…って偉そうなこと言っちゃったけど。

でもそれを知ったの、俺もここ最近なんだよね。」


「へぇ…?」


こんなにかっこよくて、コーヒーのセンスもあって。

それでもお店を出す前は、色々と苦労したんだな。


「マックスと同じ年くらいの時。」


ルーカスが話の続きを始めた。


「あ、うん。

18才前後ってこと?」


「そうそう。

その頃はさ、別の夢があったんだ。

だけどある日その夢が壊れちゃって。

それでコーヒー屋をやろうって。

人生で2番目に好きなのが、コーヒーだったからね。」


えっ。

そうだったのか。


「その、もともとの夢っていうのは、マラソン選手だったんだけど。」


ルーカスは少し悔しそうな顔で言った。


「マ、マラソン?!

あんまりイメージ無かったかも…。

スポーツが得意なの?」


「うん。笑

スポーツっていうか、走るのが好きで。

だけど膝を痛めて、プロの道は断念。

長距離が無理になっちゃって。

そこからだよ、コーヒー屋を考え始めたのは。」


へぇ〜。

人って話してみないと、分からないなぁ…。



「ただ、あの頃は俺も若かったから。

単に自分の直感や自信だけで、いきなりコーヒーを売ってみたんだよ。

テント張ってさ。

でも、そんなんじゃ誰にも相手にされなかった。

舐めてたんだよね、世の中の色々なこと。

で、これじゃダメだって、そこで気がついて。

アルバイトでお金を貯めたら、全国のコーヒ店を回った。

そこで研究して、勉強して、修行して。

それを何年か続けたあと、やっとこの店をオープンしたんだ。」


窓の向こうにいる、小さな子供に手を振るルーカス。

この優しい笑顔の裏には、苦労が沢山あったんだ。


なんか…。


そういう発想が無かった自分が、恥ずかしい…。



「ルーカスってさ…。

かっこよくて、そのうえこんな立派なお店まで持って。

色々な物を手にしていて、俺、羨ましいなって思ってたんだ。

でも、ここに辿り着くまでには、沢山の努力や苦労があったんだね…。」


するとルーカスはちょっと恥ずかしそうに目を逸らして。


「いや、えと、うん。

そんなに大袈裟なものじゃないんだけど。笑

でも人ってさ、どこで何に気が付くか。

それで人生は大きく変わるんだって学んだよ。

周りを見ていても、何かを成し遂げている人は、見えないところで頑張っているし。

だからマックスも…。

昔の俺と、今、同じ年でしょ?

何か夢があるなら、ここで真面目に向き合うことで未来は変わると思う。」



そっか。

簡単に手に入るものなんて、無いよね。

…

今思えば。

桜堂(さくらどう)。

転生前に、スーパーで久しぶりに再会した桜堂(さくらどう)も、そうだったのかな。

彼は人生順調だし、なんでも器用にこなせて良いなぁ。

なんて思ってたけど。

きっとそれは、彼の努力があったからに違いない。

自分はなんて浅はかだったんだ。

今更ながら、恥ずかしくなる。


「色々話してくれてありがとう。

実はね…。

俺も、あのバーを改装して、レストランにしたいなって考えてるんだ。」


ほ〜!

と、興味を示してくれるルーカス。


「良いじゃん!

すごく良い案だと思うよ。

マリオさんの店を、新しい形で引き継ぐんだね。

だから資金集めで新聞社の仕事を?」


さすが。

鋭い。


「うん、そうなんだ。

バーの稼ぎだけじゃ、改装資金もなかなか貯まらないから。

空いてる時間も、何かやろうって。」


…


「その姿勢、素晴らしい。」


グッと親指を立てるルーカス。


「そういう気持ちなら、いつか絶対に素敵な店を作れるよ。

応援してる。

そして…。

自分で店を持った俺からのアドバイス。

色々なことにアンテナを張ると良いよ。

この店の内装良いな、とか、ここのレストランの味付け良いな、とか。

真似するんじゃなくて、吸収する感じね。

そしてそれを自分流に作っていく。

ぼんやり過ごしているのと、アンテナ張ってるのとでは、あとで全然違ってくるから。」



ズズズ。


ルーカスはコーヒーを飲み干した。



…なるほど!

いやもう、全てが勉強になる。

さっきの雑貨屋さんも、色合いや配置のセンスが良かったもんな。

ああいうドキドキした時の感覚、覚えておこう。



「じゃ、そろそろ営業に戻ろうかな。」



ガタッ。



ルーカスが立ち上がった。


「あ、うん。

今日はありがとう。

深い話もできて、すごく楽しかった。」


「俺も。笑」


飲み終わったコーヒーカップを持ち上げた、その時。


「うわぁっ!」


ルーカスが大きな声を上げた。


外を見ているので、俺もそっちに目を向けると。



じーーーーーー。



窓に張り付く2人の男。


それは。


「…あぁっ!

アイツら、また…!」


金髪と銀髪のノコギリヘアーの男。


あの、インチキ不動産のチンピラ達だった。


「マックス、知り合い…?」


ルーカスが青ざめた顔で俺を見る。


「いや、知り合いというか絡まれたというか…。

とにかく、俺が追い払ってくるから安心して!

ご馳走様でした!

またね!」


そう言って、俺は店を飛び出した。




―

「おうおうおう!

オンボロバーのにいちゃんよぉ!

久しぶりだなぁ、おい。」



うっしっし。



と、笑いながら近づいてくる。


銀髪の男は、俺を下から上まで舐め回すように見ると。


「シャツなんか着ちゃって〜。

真面目君のつもりかぁ?

こないだまで、親の店、勝手に売り飛ばそうとしてたくせによぉ!」


…うっ。

しつこい。


今度は金髪の男が口を開いた。


「ここで会ったのも何かの縁。

迷惑料、今すぐ100モン払いなぁ!」


は?!


「いや、おかしいでしょ!

契約書の通り、前日までにはキャンセしたんだから!

お金を払う義務はありません!」


と言うものの、こういう奴らに普通の話は通じない。


「おいおい、俺らとやるつもりかぁ?」



ジリジリ…。



俺の方に詰め寄ってくる。



ど、どうする?

俺っ。

プレゼントのハンカチで、どうにかするか?

いやでも…。



するとその時。



「マックスー!♩」


後ろからドリスさんの声が聞こえた。

バンドの練習帰りだろうか。

トートバッグを肩に下げて、満面の笑顔。


そしてなんと、隣にはベンジーもいる。


「…ふぁっ?!!!!!」


チンピラ達の顔色が変わった。


その瞬間、俺は思い出した。

以前ドリスさんが、コイツらを2分で追い出したことを。



「あ、あ、あ、あ………!!!」



顔面蒼白で、歯がカタカタ鳴る2人。



「マックスー♩!

今、そっちに行くわねー!

そこにいるのはー?

なんだか見たことある顔ねー!

まーたお仕置きして欲しいのかしらー?!」


…


「あ、あ、あ…。

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



ビュン!



彼らは風のように去って行った。


…


「アイツら、まーた絡んできたのね。」


ドリスさんとベンジーがこっちへ来た。


「あ、はい…。

偶然会って、捕まっちゃって。

金を払えとかなんとか…。」



フンッ!



ベンジーが鼻を鳴らした。


「…ったくよぉ!

しつけぇ奴らだ。

アホすぎて話にならねぇ。

…。

んまっ、俺が来たら、ビビって逃げちまったけどな。笑」


と、得意顔。



「は?」



アイツら、ドリスさんを恐れて逃げたんだろ!

心でツッコミ。



ベンジーはTシャツの上から胸をボリボリとかいた。


そこには、今日もデッカく


【トキ⭐︎メキ】の文字。


…まあいっか。

このまま機嫌が良い方が助かるし。

それに、勘違いしているベンジーがちょっと面白い。笑



「さて〜。

私達はバーに戻るけど、マックスはどうする?」


「あ、俺も帰ります。

3人で戻りましょう。」


そう言って、俺は2人の間に入った。

(あっ。

フルーティーと編集長のハンカチ、渡しに行く時間がないや。

仕方ない、明日にしよう。)


…


ドリスさん、俺、ベンジー。


仲良く横に並んで、バーへと向かった。

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