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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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20/43

【020】ジェットコースター

 あっ…!


トロッコごと宙に投げ出された俺達。


人の姿も。

風の音も。

賑やかな遊園地のBGMも。


この世の全てが止まったように感じる。


スローモーションで動いているのは、恐怖で顔が歪んだ自分と、隣のフルーティーだけ。

 


…このまま


落っこちる…



少し前に死んだばかりなのに、また死ぬのか。


ギュッと目を瞑り、覚悟を決めた。



が、その時。


…


「シュラッペ(魔法)ー!」


地上から誰かの叫ぶ声が聞こえた。


と、同時に。



シュラララ〜・:*.:



トロッコ全体が、眩しいほどのキラキラに包まれる。


!


こ、これは!


…


ギュイン!



落下していたトロッコは、向きを変えて空へと走り出した。

レールも無いのに!



…シャー!



青い空と、モコモコの雲に向かって走るトロッコ。


「嘘でしょ?!

私達、飛んでるー!」


フルーティーがパッと両手を広げた。


「ちょっと!

危ない!」


そう言いながら、俺も心が弾んでる。


これ、空中散歩のジェットコースターだったんだ!

良い意味で予想を裏切られた。



ヒョン!ヒョン!ヒョン!



雲と雲の隙間を抜けて、結構な高さまで登る。



なんだよぉ…。

これは。

素っ晴らしいじゃないか!


もう現実世界のことなんて、忘れてしまいそう。




そして。

トロッコはまた停止した。


「いらっしゃ〜い。

ここからが本番だよ〜。」


斜め上から、若い男の子の声が聞こえる。

見上げると。

なんと気球が浮かんでいた。


「おー?!

気球ー?!」


次は一体何が起こるんだ?


ワクワクが止まらない!



コースターは、気球の近くまでゆっくりと近づき…。



ふわん、ふわん。



目の前で緩やかに浮いた。



「こんにちは!

空中散歩のジェットコースター、楽しんでいただけてますか?!

これからまだまだ夢の世界へお連れしますよー!

心の準備をお願いします!

…

せーの!

シュラッペ(魔法)♩」



シュラララ〜・:*.:




今度は、空全体が光に包まれた。


「わぁ…。」



ぽわん。

ぽわん。



周りの雲がカラフルに色づき始める。


そして。



ボン! ボン!



なんと、形まで変化しだした。


くるくる模様のキャンディーや、カモメの群れ、雲の海を泳ぐイルカの姿まで。

遠くの雲も、どんどん魔法にかかっていく。

  

「うはぁ…!」


「す、すっごーい!!!

可愛いーーー!!!」



俺もフルーティーも、ファンタジックな世界にウットリ。


そして。



スッ…



シャアァァァァァァァ!!!



「わぁーーー!」


そんな魔法の世界を、コースターは上下に動きながら走り出した。


さっきのイルカが、俺達の後をついてくる。



ヒョン!ヒョン!ヒョン!



「マックス、見てー!

雲のイルカが泳いでるわ!」



その後もショートケーキやドーナツの雲に囲まれ、虹のアーチをくぐり…。


素敵すぎる空の旅を、思う存分楽しんだ。


こんな体験、地球では絶対にできない!




…と、夢の世界に浸っていた、その時。



ボンボンボン!



フルーティーが俺の肩を叩いた。


「マックス!

あれ、さっきの風船じゃない?!」


「えっ?」


言われて横を向くと、乗り場で女の子が手放してしまったウサギの風船が。


「あー!

ほ、ほんとだ!

タイミングが合えば、掴めるかも!」



…キュイーン。



まるで俺達の会話を聞いていたかのように、トロッコは風船の方へと角度を変えた。


「…うっく。

あと少しで…。」



パッ!



思いっきり手を伸ばすと、風船の紐を掴むことができた。


「と、取った!

やったー!」


「イエー!」


俺とフルーティーはハイタッチ。



…



「お疲れ様でしたー!」


空の旅は終わり、トロッコはゆっくりと乗り場に戻る。



ガタッ。



停止したのを確認し、シートベルトを外す。


「いや〜。

すごかったね!」


興奮が冷めない俺達。


するとその時、次に乗るお客さんがこっちへ来た。


「…あ〜?

ウサちゃん!」


はっ。

あ、あれは!

さっきの風船の女の子だ!


「ウサちゃん!

ウサちゃん!」


女の子は嬉しそうにこっちへ駆けてきた。


俺は彼女の目線に合わせるため、しゃがみ込む。


「さっきはごめんね。

これ、お空を旅してたよ。

君のところへ帰りたいって言うから、俺が連れてきたんだ。」


サッと風船を手渡す。


女の子の表情がパアッと明るくなった。


「お兄ちゃん、ありがとうー!」


「どうもすみません。」


ご両親も俺に頭を下げる。


「いえいえ。

俺が手を振っちゃったから。汗

こちらこそ、すみませんでした。

コースター、楽しんで来てね!」


バイバーイ!


俺達は階段を降りた。





「…見直したわ。」


ベンチで休憩していると、フルーティーがボソッと呟いた。


「えっ?」


「さっきの女の子への対応!

ちゃんと目を見て話せるように、あなた、しゃがんだでしょ。

あれができる人、意外と少ないのよ。」


そう言いながら、チューっと紙パックのジュースをすする。


「この前…。

マックスが初めて新聞社に来た時。

不良!

なんて言ったの、間違いだった。

ごめんね。」


いや、そんな…。

でも、照れるな。

そんなに意識してやった訳じゃないんだけど。

褒めてもらえて嬉しい。


「ありがとう。

今後も、良い人間でいられるよう努力するよ。」


俺は空を見上げた。


はぁぁー。


この世界、好きだなぁ…。





…ガヤガヤ


ぼんやりしていると、敷地の奥の方が騒がしいことに気がついた。


人がどんどんそっちへ流れていく。


「何だろう?」


俺が言うと、フルーティーが歩いている人に声をかけた。


「すみません。

あっちで何かあるんですか?」


その女性は立ち止まり、丁寧に教えてくれた。


「なんかね、新しいアトラクションがあるんですって。

私も友達に聞いて来たの。

時間が限定されてるみたいだから、あなた達も興味があるなら早く行った方が良いわよ。」


「へぇ〜。

そうなんですね。

ありがとうございました。」


お礼を言うと、女性は去っていった。



俺とフルーティーは目を合わせて。


「行く?」


…


「行こう!!!」



首からぶら下げたカメラを握り締め、ベンチから立ち上がった。

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