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リーゼントシロクマと作る異世界レストラン 〜魔法の町で楽しい転生ライフ〜  作者: 七星かなみ


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13/44

【013】仕事を探せ

 「じゃ。

私はこれから、バンドの集まりがあるから。

そろそろ行くわね。

また夕方にね〜!」



ぶんぶんぶん!



ドリスさんは手を振りながら去っていった。



「…。」


「なんか、色々すごかったね。

エンドレス

腰痛(ようつう)…?」


「お、おう。

ちょっと反応に困っちまったな。」


残された俺達は、なんだか気まずい雰囲気。笑



ガタガタッ。



そろそろまったりタイムは終わりにしよう。


テーブルを片付け始める。


「俺は食器片付けるからさ。

ベンジーはパラソルやってよ。」


「はいよぅ。」


役割分担で作業開始。



…


店に戻り、食器をシンクの中へ。



プシュッ!



洗剤をワンプッシュし、スポンジをモミモミする。


すると。



「うぉっ?!」



シンクの中は、まるで泡風呂状態に。



なんだこれ?

すご!

この洗剤、泡立ち良いな〜!

これ、地球で売ったら爆売れ間違いなしだぞ。



俺は楽しくなって、泡で遊び始める。



ポトッ。



カウンターの上に飾られた魚の模型を、泡の中に落とした。


そこに手を突っ込み、激しく掻き回す。



ぐるぐるぐるー!



「それぇぇぇ!

泡の嵐だぁぁぁぁ!」



ピョンピョンピョン。



魚の模型が泡の上で跳ねる。



「あ〜れぇ〜!

助けて〜!」



なんつって。


ふふふっ。

ヤバい、超楽しい!笑


くだらないことが楽しい時間。

これ最高。



「…。」



ん?


何か視線を感じる…?



バッ!



後ろを振り向くと、裏口から入ったベンジーが俺を見ていた。


「何やってんだ?

オメエ…。」


片方の眉(?)が上がっている。


「あ、あはは。

遊び始めたら、なんだか楽しくなっちゃって。」


「ったく。

小学生か。」


いえ。

32才です。


↑これ、心の声。




ベンジーは俺の方へ来ると、水をジャーっと出した。


「あぁー!

せっかく作った泡が…。」


「あーじゃねぇよ。

洗剤が多すぎるんだよ。

これ、半プッシュで100皿も洗えんだぞ。

出しすぎだ。

とっとと流して、終わらせるぞ。」



チャッ、チャッ、チャッ!



ベンジーは手際良く食器を流し、水切りカゴに乗せていった。



ピカリン⭐︎



お皿もコーヒーカップも、ツヤッツヤ。


まるで買いたてみたい。


「す、すごー!

この洗剤、優秀だね!

お皿が光ってる!」


俺が興奮して叫ぶと。


「すごいって…。

これ、もう何年も前から使ってるだろ。

今までなんも手伝わなかったから知らねぇんだ。」



ギュイィィィ。


パンッ パンッ!



ベンジーは濡れたタオルをキツく絞って、水滴を飛ばした。


「オメエも、少しはあんだな。

オヤジさんを想うところ。」


え?


「今のあれだろ。

オメエがまだ小学生の頃、よくやってた泡遊び。

オヤジさんがこれやると、喜んでたもんなぁ。」


へぇー。

これ、マックスとマリオさんの思い出の遊びだったんだ。


「えと…。

記憶喪失だから詳しくは覚えてないけど、そうだったかもね。」


「その魚の模型。

オヤジさんが木を掘って作ったんだぞ。

それがオメエの大のお気に入りで、泡の中に放り込んで遊んでたろ。

だから店のTシャツが、このデザインなんだよ。」


ポンッ。


そう言って、小さな魚がプリントされた俺の左胸に手を乗せた。


ふわふわの大きな手。


ベンジーの手、柔らかい…。



「そ、そうだったんだ。

だから魚のプリントが…。

オヤジは、マックス…俺を愛情いっぱいに育ててくれてたんだね。」


「…ったく。

今更気づいてもおせぇよ。

まぁでも。

一生気づかないよりはマシか。」


そう言いながら、ベンジーはタオルを干しに外へ出て行った。



…



ガチャ。


俺がトイレから出てくると、目の前にベンジーが立っていた。


「ひゃっ!

びっくりしたー!

脅かさないでよ。」


マジで驚いた。

人でもビビるのに、アロハシャツにリーゼントヘアーのシロクマ。

それがドアを開けて目の前にいたら、超びっくりするよ!



「考えたのか?」


ベンジーが壁にもたれながら俺に聞く。


「ん?」


「バイトの話が出てから1時間以上経ってるが、何をやるか考えたのかって聞いてんだ。」


あ、そのことね。


俺は手を洗いながら


「まだだよー。

だって、急な話だし。

それにこの町にどんな仕事があるか、俺知らないもん。

まずは調べることから始めるって感じかな。」


呑気な俺を見て、ベンジーはイラついたのだろう。

険しい顔に変わった。


「おい。

ドリスさんなんて、あんな手でも稼ぐんだぞ。

さっさとオメエも決めろ!

1日だって無駄にしたらもったいねぇ。」


と、言われても…。


「そういうベンジーは、もう決めたの?」



フンッ!



ベンジーは鼻を鳴らした。


「あったりめぇよ。

オメエと一緒にすんな。」



えっ。

ちゃんと決めてあるんだ。

早いな。



「ん〜…。

どうしよう。

とりあえず、これから町に出てリサーチしてこようかな。」


「…あのなぁ。

やみくもに探したって、決まらないぜ。

効率良く動かなきゃ。

そもそもオメエの得意なことって、何なんだよ。

まずはそこからだ。」


ベンジーは俺の目を見る。


「得意なこと?

…。

あーそれはもう!

資料作成と、不機嫌上司を上手くスルーすること!」


…


「あん?」


しまった。

つい、ケンジになって答えてしまった。


「いや、あの、ははは。

なーんちゃって、なんちゃって。

冗談だよっ。」


俺は目を逸らして誤魔化した。


「…ったく。

いつまでもふざけてんじゃねぇよ。」


危ない。

まだ転生2日目だから、つい本音が。

俺はマックスなんだ。

気をつけなきゃ。


「ごめん、怒らないでよー。

でも俺、何か書いたりまとめたりするのは本当に得意なんだ。」


ほおぅ…。


と顎に手を乗せるベンジー。


「書くのが得意だとはな。

それも。

学校の作文コンテストで、万年ビリだったマックス君がよ。」


ジロリと睨む。


うっ。

マックスって文才ゼロだったのか。

俺と正反対じゃないか。

…まぁでも、仕方ない。

俺(ケンジ)が得意なことは本当に資料作成なんだから!



「お、俺だって、勉強したんだよ!

このままじゃいけないと思ってさ。

最近は色んなこと書けるようになったし、褒められることも増えたんだ!

信じてよ!」


そう言うとベンジーは。


「…。

そんなに必死なら、信じてやるか。

仕事として通用するくらい、ちゃんと書けるんだな?」


「うん。

書ける。

情報まとめたり、写真を差し込んだり。

それも得意だから。

あ、ちょっと待って…。」


俺は客席へ向かうと、テーブルに設置されたナプキンを1枚取った。



ヒュイッ。



「ベンジー、ボールペンちょうだい?」


…。


「ほれ。」


ベンジーがレジ横から取ったペンを渡す。



カキカキカキ。



俺はナプキンに文字を書き始めた。


えっとぉ…。


「私は先日、父親を亡くし…。」



カキカキカキ。



簡単だけど、ここ2日に感じたことを書き出してみる。


「…として、未来へ向かって歩んでいこうと思います。

よしっ。

できた。」



サッ。


ベンジーにナプキンを差し出す。



「なんだよ。」


ベンジーはブツブツと文句を言いながら、ゆっくりと目を通す。


「…。

書けてる。

良いじゃねぇか。

これなら大人が読んでも通用する。」


「ね!

だから言ったでしょ?

俺これ、マジで得意なんだよ!」


うーん…。


ベンジーは天井を見上げて考えたあと。


「新聞社に行こう。」


と一言。


「新聞社?!」


「おう。

港町(みなとまち)新聞社。

あそこが良い。

地元の新聞社だ。」


えー!

新聞社かぁ!

面白そう!



ガタッ!



俺はソファーから立ち上がると、階段へ向かった。


「なんだ?」


ベンジーが驚いている。


「仕事もらいに行くのに、この格好じゃダメでしょ。

何かちゃんとした服に着替えてくる!」



ダダダダダダダ!



俺は階段を駆け上がった。


ヤバい、超楽しみ。

港町の新聞社なんて。

聞いただけでもワクワクする♩


早く着替えて、出発しよう!

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