34
「メイリン!」
ドアを開けると母がびっくりした顔でメイリンの方を見た。
「ただいま、お母さん。」
母はメイリンを抱きしめて迎えてくれた。
「大丈夫かい?元気にしてた?」
「うん、私なら大丈夫。龍王様がよくしてくださっているから…」
メイリンはそう言って後ろを振り返って龍王を見た。
「これは申し訳ありません。」
母は慌てて膝を折って龍王に挨拶をした。
「いや、こちらこそ失礼する。メイリンの家族に礼儀は求めておらぬゆえに、私には気楽に接してほしい。」
龍王の穏やかな表情にメイリンもホッと胸を撫で下ろした。
「あれ?カイリ?」
メイリンが声を掛ける。
様子を伺っていたらしい、年の離れた弟が無言で立っていた。
カイリはトテトテと小さな足を小さく駆け出して、メイリンの足に抱きついた。
「カイリってば、最初の頃は「ねー!ねー!」って泣いていたのよ。」
母からそのことを聞いて、メイリンはカイリを抱きかかえた。
「ただいま、カイリ。」
メイリンがギュッと抱きしめるとカイリもメイリンの服をギュッと握った。
「お父さんは?」
「メイリンの代わりに羊を連れて行っているよ。お兄ちゃんには一応メイリンのことは伝えたし、結婚式には出られると思う。」
「そっかぁ…」
メイリンは自分が居なくなって大丈夫かなとも思っていたが、大丈夫みたいだ。
それはそれで少し寂しいけれど。
でも、カイリがこうやって甘えてくれるのは嬉しい。
カイリを抱き直し、またギュッと抱きしめた。
「メイリン…」
龍王がすごい顔をしてメイリンを見ている。
「どうかしました?」
抱きかかえたカイリが龍王と目があったのか、プイッと顔を背けた。
「カイリのことですか?申し訳ありません。人見知りしているみたいです。ほら、カイリ、挨拶は?」
カイリはメイリンの胸元に顔を埋めて逃げる。
「あ、もう!すみません、龍王様。」
「…大丈夫だ。」
龍王は引きつりながらも、メイリンに頬笑みかけた。




