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城で最低のエンカウント発生

 あれから。

 

 ルイス様に説教されました。マジ怖かった。


 半べそかいてごめんなさいする事、約一時間。

 とりあえず、精神衛生上思い出したくもない。

 私が説教されてる間に、普通の熊も騎士さん達が追い払うか駆除して帰る事に。

 私は魔術を使い慣れるまで、勝手な行使はしないと約束させられた。


「アカネ」

「はい?」

「先程の約束……、破ったら仕置きだ」


 撤収する事になって、またルイス様に抱えられて馬に乗った直後。

 腰にクる美声とともに向けられた微笑みに硬直した。


 超怖えぇよっ!!!表情は優しいけど瞳がマジで笑ってないから!!腹黒様より怖いからっ!


 ガクガクと何度も頷く私に満足げな微笑みを見せて、ルイス様は馬を走らせた。


 お仕置きの内容を訊く勇気はなかった。









 馬に揺られること三時間。途中何度か休憩しながらも首都に着きました。

 もうね。お尻が痛くて泣きたいよね。乗馬なめてたよ。

 城門を越えると、ルイス様が馬から降りて警備していると思われる騎士さんのところへ。

 え。待って、私は?

 馬上に放置され、ぽかんとしてたらキースさんが馬から降りて私の方へ。


「我々は先に隊舎のほうに行こう」

「隊舎?」

「部署ごとに与えられているお部屋のようなものですよ。殿下は貴女のことを陛下に御報告されるので、少しの間別行動ですね」

「そういうことですか……」


 納得。許可がなかったら私、不法侵入者……つうか今現在、不法入国者じゃん!

 自分の立場に愕然としてたら、腹黒様に笑われた。


「心配しなくても殿下にお任せすれば大丈夫ですよ」

「アカネ嬢の身柄は、確実に殿下預かりとなる。君は安心して待っていれば良い」


 腹黒様の言葉に頷いて、キースさんが爽やかな笑顔を見せてくれた。

 おお、眼福。

 キースさんて最初は無表情だったか怒ってるかだったし、腹黒様とルイス様に甚振られて真っ青になってるかだったからなぁ。


「……?何だ?」

「いや、キースさんは改めて男前なんだなぁと実感してました」

「はっ?!」


 ……褒めたのになんで恐れ戦くんだ、お前は。


「何を企んでるんだっ?」

「失礼ですね!私だって女なんですから、純粋に格好いい男性は好きですよ」


 言ったら二人から凝視された。


「意外な台詞ですね……。てっきりアカネさんはそういったことに興味ないのだとばかり……」

「興味ないわけじゃないですけど、性格上の問題じゃないですか?容姿は武器だと思ってますし」

「ああ……成る程。だから初対面のときも、あの反応で済んだんですね」


 ん?何か変だった?

 首傾げてたらキースさんが苦笑した。


「殿下とクロウはこの容姿だろう?二人を見た瞬間、令嬢方は目の色を変えるんだ」


 ああ、ハンターと化すのか。


「そういった心配はしなくて良いですよ」

「おや?アカネさんも男性に人気があると思うのですが」


 容姿を武器とか言ったからか?何か変な警戒されてる気が……。


「色恋沙汰は専門外です。というか、苦手ですね」

「そうなのか?女性はそういった話題が好きだろう?」

「私、お付き合いしたことないですし初恋もまだですよ?」

「……弄んで捨ててるとか?」

「……成る程。キースさんはそういった経験がしたいということですね」

「違う!!」


 この人、本当に一言余計だな。

 腹黒様に甚振られるのも仕方ないんじゃないか?


「甚振られるのがお好きみたいなので、てっきりそういう性癖の方なのかと……」

「キースはうっかりが多いんですよ……。戦闘でやらかすことはないんですが、それ以外では絶対に何かやらかして殿下に説教されてます」


 運がないのか。それとも間が悪いのか?

 うん。とりあえず残念な男前なのは確定だ。


「……隊舎に向かわないか?」


 キースさんのHP がヤバそうだから移動してやるか。










 連れてこられた隊舎は三階建てで結構広かった。

 ルイス様が率いるこの隊は、騎士団とはまた別な団と説明を受けた。

 魔術騎士と騎士の混合隊のこの隊は、国でも精鋭が集まってるんだって。

 キースさんも普段は残念な人だけど、剣だけの実力では五本の指に入るくらいだとか。

 ルイス様は剣でも魔術でも国内一。ナニソレ怖い。

 まあ、あの巨大熊を相手にして死人が出てない時点でコイツらおかしいとは思った。ルイス様に至っては、キースさんより余裕そうだったし。


 だってあの巨大熊、腕振る度に木を薙ぎ倒してたんだよ。


 腕がかすって吹っ飛んでた騎士さん方、受け身取って普通に態勢立て直して何事も無かったかのように戦闘に戻ってたし、おかしいだろ。

 そんなことをキースさんに言ったら「それを瞬殺するお前の方がおかしい」って怒られた。

 私は剣で戦ったわけじゃないのに何故だ。


「アカネさんは今後、ここで我々の同僚として働く事になります。貴女は魔術の素質が高いので、純粋な剣での戦闘より魔術をどう扱っていくかが重点になりますね」

「一つ気になってたんですが……。私、その剣持っていられますかね?」


 いや、力がさ。普通に、この人達と私じゃ骨格から違うのに大丈夫か?


「……規定の剣では無理そうだな」

「そうですね……。体格差を失念してました」


 キースさんと腹黒様が私に持たせる武器について話し合いを始めました。

 キースさん達が使ってる剣、私じゃ振り回されるのがオチだ。身長も違うから物理的に無理だ。


「……とりあえず、候補は私とキースで見繕っておきますのでルイス様に相談してから決めましょう」

「わかりました」

「これから魔術師団の者がくる。アカネ嬢の採寸をしてもらって戦闘と訓練用の服を何着か作ってもらおう」

「えっ?お金は……」

「そこは気にしなくて良いんですよ」

「投資してもらったと思えば良い」


 お金を出すのはルイス様か。本当に頭が上がらない。

 早いところ使える人材になって、恩返ししなきゃ洒落にならない。


「いやぁ、ごめんごめん!遅くなった!」

「ジル、何してたんですか」


 思考に気をとられていたらローブ姿のチャラ男が現れた。

 腹黒様とキースさんの背中から、赤が混ざった金髪タレ目を観察。

 軽薄な雰囲気で、掴み所がない感じが面倒そうだ。


「それで?服をご所望の異界人は?」

「こちらの女性ですよ」


 腹黒様が身体をずらして、私をタレ目の前に。


 やっぱりコイツも私より頭一つ以上でかい。


 ここ、皆でかいんだよなぁ。宿屋の女将さんも従業員のお嬢さんも私より頭半分でかかった。

 日本では平均身長だったのに、一気にチビになっちゃったよ。やさぐれそうだ。


「初めまして。アカネです」


 とりあえず頭下げて挨拶した瞬間、


「何これちっさ!かんわいいい!!!」



 抱きつかれた。



「な……っ!なにやってんだお前は!」

「邪魔すんなキース!可愛いんだからしょうがないだろっ?すっげぇ俺のタイプ!!」


 遠慮なしの力加減で抱きつかれて呆気にとられた。

 キースさんが必死に私から引き離そうとしてるんだけど、痴漢は負けないで私にへばりつく。


 そこまでが我慢の限界だった。



「失せろ、変態」



 感情に委せて魔力を解放すると、私から火花と電流が流れた。

 まともに電流を食らった変態は地面に転がり、目を見開いてこっちを見上げてる。

 身体は痺れてるみたいたけど、意識はしっかりある。


「薄汚い手で私に勝手に触るんじゃねえよ。去勢されたくなきゃさっさとてめえの巣穴に帰れ駄犬」


 汚物を見るように見下して言ってやったら、顔を真っ赤にして震えている。

 キースさんは真っ青。腹黒様も頭を抱えていた。

 一瞬、やり過ぎたと後悔するも。


「…………最高だ…っ!」


 恍惚した声が下から聴こえた。


 …………………………はい?


 私ににじり寄るタレ目。

 ……これ、もしかして悦んでるとか言う?

 電流に痺れてる身体で私の足元に跪くタレ目は、妙に熱っぽい視線を私に向けた。


 ……おい、冗談じゃねえぞ。



「暴力的な魔力に言葉!あの蔑むような視線!全てが完璧……!やっと見付けた!俺の女神!!」



 私の手を握りしめて跪く光景は、タレ目の容姿のお陰で羨ましがられるものだろう。

 だが、内容は最悪だ!


「忘れてました……ジルの性癖を……」


 腹黒様が本気で途方に暮れた声で言った。


 …………こんな強烈なこと忘れてんじゃねえよ!!



 変態は、戻って来たルイス様に叩き出されるまで私から離れようとしなかった。


 とりあえず、城内ではルイス様から絶対に離れないよう厳命された。




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