その頃、保護者は
ああ、逃げたい………。
思わず殿下から視線を逸らした私は悪くない。
アカネさんが消えてから、ルイス殿下の機嫌は急降下している。
キースなど、殿下に近寄りすらしない。
これ、私がどうにかしなければいけないんですかねぇ?
ちらりと殿下に視線を向けたが、後悔した。
過去最高、これほどまでに不機嫌な殿下は見たことがない。無理です。逃げたいんですけど。
魔力も暴走しかけていますし。暴走するとアカネさんは火花と電撃を放ちますが、殿下は冷気を放ちます。
今も辺りは物理的に温度が下がっている。
比喩だったらどんなにましか……。
「…………クロウ」
「……はい」
「神獣だ」
「……はい?」
あ、これ聞いたら駄目なやつですよね。
「アカネを連れていったのは神獣だ」
「…………そうですか」
私の本能が警鐘を鳴らしている。この先は聞いてはならぬ、と。
「……神獣を駆逐するにはどうしたら良いと思う……?」
ふわりと微笑む様は私でも見惚れる美しさ。が、言っている事は全力で回避しなければならない内容だ。
「殿下、なりません。その選択はぜっったいにしてはいけない選択ですよ!」
「それ滅亡する方法ですから!やったら国ごと消されますから!」
神獣の機嫌を損ねた者は抹消されるのが当たり前。
この世界で生きてる者なら誰もが知っている世の理。
それをこの殿下は!!
「今なら神獣でも駆逐出来る気がする」
「気のせい!気のせいですから!!」
「落ち着いて下さい、殿下!!」
私とキースで必死に殿下を抑える。
二人がかりで殿下が先に行こうとするのを阻止する。
何でこの方、普段は驚くほど冷静沈着なのに、思い人の事だと理性が簡単に吹っ飛ぶんでしょうか?
部下達も決死の覚悟で殿下の進行方向に立ちはだかってる。
「大丈夫だ。今なら一瞬で殺れるから」
「その発言、一欠片も大丈夫じゃない!!」
キースは殿下を羽交い締めにして、私は殿下の正面で両腕を掴んで抜刀できないように固定する。
アカネさん、なんとか自力で帰ってきてくださいよっ!!
今この場で殿下の暴走を止められる人材なんていないんですから!
私、殿下の側近を勤めて、こんなに焦っているの初めてなんですけど。
いったい私にどうしろと?
いっそ、キースを犠牲にしてとりあえず落ち着いてもらえないでしょうか。
「大丈夫だ。塵も残さず消し去ってやるから」
生け贄として、キースを殿下の前に蹴り飛ばした私は悪くありません。




