一目惚れしました。
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニ
〔……娘、まだ気は済まぬのか〕
「もうちょっと」
〔……そうか〕
え、何してるかって?
肉球プニプニしてますが、何か?
姿見た瞬間、私のハートはドキュンだった。
もう、ストライクですね。一目惚れってやつ?
奇声上げて飛び掛かって、毛並みを堪能してから肉球プニプニずっとしてます。はい。
最初は抵抗してた神獣さんも、今や諦めモードです。
〔まさか奇声を上げるほど喜ぶとは……〕
「神獣さん、私の好みドストライクだから」
〔どすとらいく……?〕
「あー、好みを具現化した状態。みたいな感じ?」
〔そうか……〕
肉球プニプニし続けてる私に、呆れた視線を寄越してますが無視。
今の私は彼に夢中だ。彼が私をどう思ってるかなんて関係ない。それより、自分の欲望をどうにかする方が優先だ。
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニ
ん、肉球は満足した。肉球、は。
嗚呼……なんて素敵な毛並み。サラサラだよ、心赴くままブラッシングしたい……。
ブラシがないのが残念でならない。何とかならんのか?
神獣さんの首もとに顔を埋めてスリスリ。
溜め息が聴こえるけど気にしなーい。
〔……先程した話は良いのか〕
「そういえば、私を動揺させてどうしたかったわけ?」
〔この世界の害になるか否か、確認したかった〕
それが我の役目だからな。
渋いお声でさらりと言う神獣さん。
「役目?」
〔この世界を継続させるために、神獣は創られた。我ら神獣の力は魔術とは違う別のものなのも、それが理由だ〕
はぁーん、だから力がでかいのは判るけど、魔力が測れないのか。
探査にも引っ掛からないし。……あれ?
「さっき私達を追い掛けてたでかい気配って?」
〔我だな〕
「……え、でも今は探査で引っ掛からないけど?」
〔造作もないこと。先程はただ、我が気付かせていただけだ〕
……餌ですか。気付かなかったら放置。気付いたから私はご招待された、と。
〔そなたの場合、放置出来るものではなかったからな。存在値が大きすぎて厄介だ〕
「存在値?」
〔力の影響力……とでも言えば良いのか?争いの発端に為りかねん力のことだ〕
過去、英雄と謳われた者達と同じ存在値を持っているな。
……そんなこと言われても。
英雄とか全く興味有りませんけど。
〔……普通、そこまで嫌な表情をする者は居らんぞ〕
おっと。顔に出てましたか。
だって、ねぇ?戦争とか間近に無かったし。
わざわざ自分から危ないことするとか、面倒この上ないし。
売られた喧嘩は買うけれど。
〔……そなたはもう、この世界の歯車の一つに組み込まれた。逃れる術はない。己が力を理解しろ〕
冷えた月色の瞳が私を見てる。
〔すでに歯車は動いている。それに抗うか流されるかは、娘。そなたの意思、唯一つ〕
「流されるのは性に合わない」
〔ならば抗え〕
「言われなくても、そうしますとも」
自由気儘にします。まあ、ルイス様たちに何かあったら別だけど。
…………あ?
えーと、あれ?私、そういえば……。
「神獣さん。私の仲間って、今どうしてます……?」
〔……ふむ、そなたの名を叫んで、探し回っているな〕
「………………」
〔………………〕
やっべぇっ!!御説教コースまっしぐらだコレ!!
頭を抱えて座り込んだ私を、生温かい視線が見下ろしている。
〔同行者を忘れておったのか……〕
魅惑の毛並みと肉球が悪いんだよぉ!!
腹黒様とルイス様のダブルでの御説教なんて、心の底から御遠慮したい。
「……逃げるって可能だと思う……?」
〔……事態を悪化させたいのならば、止めはせんが〕
……ですよねー。




