闇の森の木
闇への住民登録をしなさい。
それがアーカに選べる最後の選択肢だ。
声はガミガミとやかましく、それでいてしつこい。
アーカはさっきまで背中を預けていたはずの木にしつこく絡まれていた。
「分ったよ言う通りにするから少し声の音量を下げてくれよ」
木は目ん玉をひん剥いてアーカをジッと睨む。
「ボリュームだよ!ボリューム!」
アーカの苦情に木はすかさず対応する。
「わたくしは黙っていますけども?」
アーカは暗闇の中で何故、木の顔が見えるのか考えた。
「ああ、こりゃ夢だ」
そう言うと立ち上がって一歩前に進んだ。
その時だ
アーカの背中に何かが飛び込んできた。
「ひゃあ!!」
ひんやりとした何かが背中をモゾモゾと伝う。
おまけに生温かい息づかいが背骨から腰にかけてンーハーンーハーと伝った。
「あなた、なんてラッキーな人なの」
木が驚いて、喜ぶ。
「助けてくれよジーザス!」
アーカはパニックになって今まで使った事もない言葉を発した。
そう言うとアーカの頭に木の枝やら葉っぱやら自然物の塊が降ってきた。
葉っぱがアーカの背中に何枚か入る。
「さっきよりも不快なんだけども?」
不満な声のアーカは続ける。
「頼むから背中のコイツを取り除いてくれよ、一体何者か分からないこいつを」
木は黙って見守っていたが、やっとのことで葉っぱの茂った枝をアーカの背中に突っ込んだ。
「そこそこそこ!」
アーカの体温で少し生温かくなった何者かが逃げ回るように動き回る。アーカは背中をフィールドにされている気がした。運動したりするフィールド。その内に遊んでいるような笑い声が聞こえて背筋がゾクゾクした。それがくすぐったいったらこそばゆいやら。
「アハハハ」
しばらくの間は笑わせられていた。
アーカは落ち着いて、静かになった木の方を恐る恐る見上げた。
「やっぱりな、全部アンタの仕業じゃないか!!」
木は平然とした顔をしてアーカを見下ろした。
「なぁ、アンタの顔はもうちょっと老けて見えるけど、本当に7歳なのか?」
アーカは木の質問に対して、自分の姿がどうなっていようと、そんな事よりも、どういう経路で、ここに来たのか、先ずは、知る、必要があると思った。
「緑の汚物」
アーカがボソっとつぶやいた。
すると木はガミガミ声を出して振り出しに戻った。
「闇への住民登録をしなさい」
アーカは今度は積極的に木の言うとおりにした。
「どうすればいいのかな?」




