緑の汚物
暗闇の中でどっちの方角を向いて寝ているのか分からない、施設の中での話。
「ハイランクなスコアだ」
と言う声。
言葉(悪口)が跳ね返る。
そして苦しむ。
これは只の暗闇。
(そうこれは只の暗闇)
そう呟いて眠った。
アーカ・グランジの友達のライザ・エデューは空を見上げては大気汚染について嘆く。
「ああ、空が薄汚れる」
ライザはいつものように言い、アーカはまたかとうんざりとした顔をする。
「俺は緑色のクソが出て萎える」
ライザに向かってそう言えばかみ合わない会話が返ってくる。
「空気がなくなるわその内」
でも友達だ。
言いたいことをお互いに言って、互いに相手の話は聞かない。
ライザは空と会話をしているので忙しいようだ。
「病院とか行きたくないんだよね、怖いから」
アーカはお腹を押さえて言った。
けど友達だ。
二人とも来年はスクールに通う年頃。
「じゃあな」
「じゃあ」
そう言って二人は角を曲がり別れた。
そこから大通りの交差点を二つ程渡り、家に帰った。
「病気ではないだろうか?」
母親に相談するとアーカはすぐに病院へと連れて行かれた。
「特に異常は見られませんな、良かったねアーカくん、一応薬を出しておきますのでお母さん」
医師はニッコリと笑ってアーカと母親に言った。
「安心しました」
アーカの母親はそう言うとアーカを連れて家へと帰った。
サンタス通りの小さな家、庭の面積だけはたっぷりとある変わった家。
アーカは母親の手を振りほどき芝生を蹴散らすように走りだした。
「アーカ!待ちなさいご飯の後にはお薬を飲まなきゃいけないのよ」
(子供の行動範囲なんてサンタス通りからせいぜいハートン市街ぐらいまでよ)
アーカの母親はアーカを放っておいて、そのまま家の中へと入って行った。
しばらくしてからアーカは家に帰ってきた。汚れていない靴を見て母親はほらねと笑った。
「ローストビーフが冷蔵庫にあるから温めて食べな」
アーカの母親は薬の事などすっかり忘れていた。
君が大気汚染について嘆いていた時に
僕は絶望的にお腹を下して痛い痛い痛い痛いって
病気にかかっていた
とにかくお医者さんが言うには特に異常はないらしい
よく聞く話だよって言われた
だけど緑色の汚物なんて理解できる?
よく効く薬だよってお医者さんは薬をくれたよ
それを飲んだらクソ不味かった
緑色の汚物なんて
よその星の奴かベジタリアンだけにしてほしいよ
怖いよこの町の寂しい場所に隔離されるかも
「なるほど・・・これですか」
捜査員のニスカーとズックはアーカの物と思われるノートに書かれた文章を読んだ。
「ようするにお母さまが言いたいのはアーカ君は誘拐されたのではないかと?」
小柄のズックがアーカの母親に質問をする。
「はい、誘拐をされたのなら犯人からお金を要求されると思います」
アーカの母親のトンチンカンな返答にニスカーは思わず笑う。
「失敬、身代金ですか?今時そんな奴いませんよ森の奥に連れて行かれて…」
「ニスカー!」
ズックは飛び上がってニスカーの肩を小突いた。
「お母さん、この文章は単なる日記ではなくてですね、誰か知ってもらいたい相手に宛てて書いたのでは?」
ズックがそう言うとアーカの母親はため息をついた。
ズックは声を落としアーカの母親に最後の質問をした。
「アーカ君には仲の良いお友達がいますか?」
「はぁはぁ、ここは一体どこなんだ?」
一人の少年がどこかの森の奥でさまよっていた。
朝から何も食べていないせいか空腹で、歩くのも精一杯だ。
それに辺りは暗くて視界があまりよくない。
木が生えているので森の中だということは分かる。
暗闇の中でも恐怖心があまり湧かないのは単に空腹のせいなのだろうか?
少年は灯りを探してひたすら歩き続けた。
途中何度も木にぶつかっていたが、いつのまにか目が暗闇に慣れてきてまともに歩けるようになっていた。
それでも灯りはどこにもない。少年は大木に背を預けて腰を下ろした。




