幽霊に殺される
レボルは朝、母から頼まれた郵便物を学校の帰りがけに送るつもりだった。
色んな場所にあるポストの中からいつものストリートにある郵便ポストに投函しようと決める。
慣れた道、今日は寄り道せずに帰ろう。いつものレボルなら隣町まで繰り出して、ゲームセンターに寄って友達と遊んでいる時間だ。
レボルは歩いていてトンネルに差し掛かる。
「トンネル?」
(トンネルなんてこの町にあったっけ?)と思いながらも、訳が分からないままトンネル脇の狭い通路を進む。
「ジリリリリリリリ!!」
突然ベルの音が聞こえて車が猛スピードで過ぎ去っていく。まるでレースをしているようだ。
レボルは最初、面白がってそれを見ていた。
赤や黄色、緑に青と派手なカラーの車がデッドヒートしている。
「わあ、リアルレーシングじゃないか!!」
ゲームと違って車から放たれた風がレボルの体をすり抜けていった。
「すっげー迫力」
レボルは風をもっと近くで感じたくなった。
いつの間にか道に降りて車が通り過ぎるのを待っていた。
「パー!!」
ピンクに紫のストライプの車がクラクションを鳴らして通りすぎて行く。風が強烈でどこかクセになる刺激だ。
「あれ?ピンクストライプ?いや、紫だったか・・・?」
しばらくして、同じ車がグルグルと回っている事にレボルは気づいた。
どうやらここは環状道路のようだ。レボルは道に迷ってしまったと思い引き返そうとした。
環状道路を間違えて通路を進んでいたはずだったのに、いつの間にか無人の列車の中にいた。
レボルは列車から降りようとして、もう一度引き返そうと試みたけど何故か列車の中にいるだけ。
怖くなって走り出した。
「うわっ!!」
レボルはつまづいて奥の車両に倒れ込む。
「いたた…」
レボルが顔を上げると、そこには学生が座っていた。それも1クラスはあるであろうかという人数がそこにいる。
急に人気が出て、賑やかになる。
レボルが困惑していると、一番近くにいた女の子二人が噂話を始め出した。
「環状道路を間違えると幽霊に殺されるみたいだよ」
「逃げられる?」
「逃げ方はねー、この列車のベルが鳴る前に列車の最前列から飛び降りる事だよ」
「えー、それって死んじゃうじゃない?」
「それが不思議と助かるのよ」
女の子たちは楽しそうに話す。
突然、一人の男子学生が急に立ち上がり青白い顔をして最前列まで走り出した。
「ジリリリリリリ!」
ベルが鳴った。女子たちはクスクス笑う。
「うぁああああ!!わぁああああ!!」
男の子は車両の最前列の前で泣き喚いた。
天候が悪化したのか、トンネルの中に差し掛かったのか、辺りが薄暗くなった。そうかと思いきやまた明るくなる。まるでフラッシュがたかれたように。
男子学生の前に白い服を着た髪の長い女の人が一瞬だけ現れた。
学生たちが注目をしている、レボルにもそれがはっきりと見えた。
すると男子学生の体はスパスパスパと一瞬で八つ裂きにされた。
鮮血が飛び散った床にボトボトと男子学生の肉片が転がる。
「オレも…行かなきゃ!!」
自分はまだ助かると思いレボルは列車の最前列に向かって行く。
窓にも座席にも鮮血の飛び散った最前列へ。女子の笑い声がハッキリと聞こえる。
レボルは走ったが途中で歩くのすらやめた。
思い出したことがある。
環状道路に迷い込んだ時にベルが鳴っていた事を・・・
(そうか自分も助からないんだ)
それならと思いレボルは幽霊が出てくることを望んだ。
(出て来て姿を見せろ)
一瞬髪の長い女の人が現れた。いくつかのプリズムが見える。
(とうとうか!)
レボルは覚悟を決める。
もっと痛みとかが激しいのかと想像していたがあっけなく死んだようだ。
それは死ぬというより存在が消えると言った方が良いだろう。
それからレボルの意志だけが列車の中に残り、学生たちも巻き添えになり幽霊に殺されろと念じた。
すると列車の中の照明が壊れたかのように色とりどりに光ってみたり消えてみたりを始める。
照明は生き物の様に感情を表現した。
列車の中はパニック状態になり、女子たちの悲鳴が聞こえる。
その声は笑い声よりも不快で、レボルの怨念はますます激しさを増した。
照明が薄暗さと明るさの最中でレボルの中でジュースのデザインが浮かぶ。
「オレンジジュースかコークか」
フルーツを踏みつぶした足のデザイン。
女子の悲鳴だけがずっと耳にこびりついている。
それに耐えれなくなって、レボルは列車の最前列へと走って行きそこから飛んだ。
学生たちの乗った列車はトンネルの闇の先で凄まじい音を立てた。
レボルは母に頼まれた郵便物をポストに入れられなかった事をいつまでも悔やんだ。




