スラムファイター
「甘い誘惑、幻覚作用、お前らはそうやってこの娘たちの下僕となってしまった訳か・・・」
ズックの周りにはいつの間にかゴーストが何体も何体も浮遊していた。
骨人間がズックに詰め寄る。ズックは反射的にリトルガンを構えて言った。
「キーティーボーン・・・哀れなもんだスケベ心がお前を死神へと変えたなんて今でも気づいていないんだろうな」
キャンディーとは甘い誘惑のことで少女のゴーストに廃トンネルへと誘われた”大人たち”はゴーストの餌食となったのだった。誰も迎えに来ない、花も供えに来ない寂しい場所。ワームトロルの胃袋の中で魂をゆっくりゆっくり溶かされたのだろう。
下着姿のズックに骨人間が原始的アーツを駆使しながら襲いかかる。殴る、蹴る、頭突きに、骨打撃。
それらはズックの体力を確実に奪って行く。ズックもリトルガンで応戦した。
「やめな!」
銃声の合間を縫って少女の声がした、ズックが先程’’撃ち殺した’’ショートカットの少女だ。
骨人間の振りかぶった腕が吹き飛ぶ。
「!!?」
ズックは何が起こったのか一瞬分からなかった。
「ストップって言ってんだからストップしろよ」
少女が空で文字を描く、それがジェスチャーのようにも見える。ズックは警戒をした。
「俺を襲わせる合図か?」
先ほどの射殺が嘘だったかのように少女の体から弾痕が消えていく。
「元々ゴーストなんだから死んでるよな・・・ん?じゃあ無意味じゃないかこの争いは?いや、待てよ?このままやり合えば俺は・・・・・死ぬ・・?」
ズックは自分の状況を今一度整理してパニックになった。
骨人間はよろけながら少女たちに向かって行く。一触即発と言った雰囲気だ。
「仲間割れか?」
もう一人の少女がズックに向かって叫ぶ。
「おじさん!!早く私たちと契約を交わして!」
ズックはためらう。
「お前らのそれがなぁ、な~んかわざとらしいと言うか、元々芝居でもやっていたのか?」
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!!
一瞬気の抜けた素振りを見せてズックはリトルガンを骨人間に向かって数発撃ち込んだ。大ハズレ、全ての弾が骨人間の肋骨のすき間をすり抜けて行った。
「分ったよ降参だ」
シリアスな顔をして格好をつけるズックを少女たちはシラケた顔をして見た。後ろに控えている亡者たちは大笑いをしている。
「なんだよ?契約してやるって言ってんだよ」
ズックがそう言うと少女たちの顔が一瞬でパーっと明るくなった。
「ほんと?ほんと?」
「ああ、おじさんに二言はない、それでだなぁ俺はさっき文字を探している途中だったんだ、どこにあるか分かる?」
ズックは先程地面に浮かび上がった文字の事を少女や亡者に向かって尋ねた。すると、トンネルの中はフェスティバルのように賑やかになった。
「オレ知っているぜ、こっちだハゲヘッド」
包帯グルグル亡者がズックに向かって手招きをする。ズックは頭をかいて後に付いて行った。
「ここ」
包帯グルグル亡者はすぐ近くで立ち止まって指さした。
「なんだい!まさに灯台下暗しじゃないか」
ズックは頭をかいて騒いだ。
ほこりだらけの地面を払うと、再び文字が浮かび上がる。ズックは文字を何度も確認する。
「そうだ・・この文字だ・・・・」
変わった文字、見たこともない・・・は嘘。ズックは幼少期からこの文字を知っている。
ズドーン・・・・ガラガラ・・パラパラ・・・・・。
遠くで瓦礫が崩れるような音がする。
「ワームトロルの体内にいることをすっかりと忘れていた」
ズックは少女たちに向かって尋ねる。
「お前たち名前は?」
「・・・・名前は忘れた」
少女は悲しそうにそう言った。
「そうか・・・じゃあまとめてやる」
ズックは少し考えてから、契約書の地面に向かって名前を書いた。途端に目の前が真っ暗になってズックは気を失ってしまった。
少しズレてから照明マーカーも寿命を迎えたようにプツリと灯りを消した。




