第4話
「旧型量産機”ダム”に組み込まれているシステムはエルティア国が初期に作り上げたシステムです。それは何十年も前のものであり古いんですよ。だから新しくつくりかえたらいいんです」
俺は1機のダムをシステムごと変更する。もちろんこれは整備士長のダントンさんの了承を得て。
「今までの操作性能はそのままに無駄な流れを断ち切って最高効率で設定しなおします」
カタカタカタカタ
俺がダムの操作をいじっているとそこに人だかりができてきた。その中には先ほど自己紹介を済ませたマイヤーさんたちも。
「なんかよくわかんねえことやってね?」
「それな。でもなんか面白くなりそうではあるよな!」
「ダントンさん。ダムのシステムとかってそう簡単にイジっちゃっていいんですか」
マイヤーさんがダントンさんに問いかけている。
「いいわけねえが……まあ見物だな……」
そんなみんなに見守られながら俺は10分ほどでダムのシステムを再構築した。
「う~ん……これ以上はFDの限界かな~……」
俺がそうつぶやくと兄貴が首をかしげながら疑問を声に出す。
「フィッション・ドライブ?なんだそれ?」
「なんでダムに乗ってるあんたが知らないのよ」
パシン!
「あてっ!?」
マイヤーさんに頭をはたかれた兄貴。それに笑うリードさんとコードさんや呆れるドイルさん。ダントンさんは俺の組み上げたシステムを見て大声で笑う。
「がっはっはっは!アルノ!仮にもお前はこの小僧の兄貴分だろう?こんな天才の兄貴分を名乗るんなら最低でも常識は頭に入れておけ!説明してやれ天才小僧!」
「天才小僧って……まあいいか……」
なんだか上機嫌っぽいし認められたと思っておこう。そして俺は兄貴に基礎的な説明をする。
「兄貴とか自警団のみなさんが乗っている旧型機のダムに使用されているエンジンは核分裂バッテリー=FDって言うんだよ。核分裂っていうのは原子核を割った際に発生した熱を様々な方法でエネルギーに変換すること。それを兄貴はダムの背中に入れて動かしてるんだよ。もちろん様々な危険性をクリアした状態でね」
指さすのは今も整備士さんたちがダムの背中から両手で取り外している大きなバッテリー。バッテリーという通りにFDは充電式になる。
「ああ!なんかそんなことを言ってたような……言ってなかったような?」
パシン!
思い出したのかと思ったら首をかしげる兄貴に再び今度は無言でマイヤーさんが頭をはたく。
「あてっ!?」
そんなコントのような一幕は無視してドイルさんがダントンさんに問いかける。
「ダントンさんからみてカイの腕はどうですか?」
「どうもこうもねえよ!カイは軽く言ってるがそんな生易しいもんじゃねえ。乗り手が違和感を覚えねえように、それでいてシステム自体は完全に新しくつくりかえやがった。それを一度乗っただけの初見で10分かそこらで。まさに天才だな」
「……ダントンさんがそこまで言うほどですか……」
なんだか随分と持ち上げられているがこれはそんなにすごいことではないと思う。
「今までが誰もやらなかっただけですよ。旧型機をいまさら進化させるメリットがあるのはここぐらいですから」
俺がそう返答すると兄貴が俺の肩に手を回す。
「ふふん!これが俺の弟っす!すごいっしょ!」
我が事のように誇る兄貴。そんな兄貴にダントンさんが質問をする。
「弟分を誇るのはいいが、アルノお前は新型がどんなエンジン積んでるかについてはわかってんのか?」
「……カイ!簡単に頼む!」
「……教育のやり直しね……」
マイヤーさんからの再教育が決定した兄貴。とりあえず簡潔に教えておく。
「ははは……え〜と、新型はHDって呼ばれる金属水素エネルギーだよ。水素を金属にしちゃったエネルギーってこと。新型と旧型だとエネルギーの総量が桁違いだから新型はエネルギー兵器を使用できるんだよ」
「そうなのか!ズリィ!俺たちもそれでいこうぜ!」
「そんな簡単にいくわけないでしょう?そもそもそんな機体がないしHD自体がないでしょうが」
「カイなら作っちまいそうだけどな?」
いつの間にかカイ呼びになったダントンさんの言葉で全員が俺のほうを向く。
「まあ……作れなくないですよ。宇宙海賊たちの壊れた機体があるしHDも一から作れないことはないでしょうし。そもそもこの街には新型機を作るための工場がありますからね。動かせればなんとか作ること自体はできるでしょう。おすすめはしませんけど」
「理由を聞いてもいいか?」
ドイルさんから真剣な表情でそう問われた。街を守るために新型機については考えたりはしたことあるんだろうというのは簡単に推測できる。
「旧型機は素人でも少しの訓練で操作可能に設計されていますが、新型機はそれに反して操縦が複雑なんです。その点より高度な動きや速度で機体を動かせるというメリットはありますが、それらは旧型機に慣れてしまったみなさんにとってはまともに動かすまで時間を要すると思いますよ」
「……考えておく必要はあるか……」
その後は自警団の施設を兄貴に案内してもらったり事務班の方にサイズの合う制服をもらったり。
「おお……なんだか強くなった気がする……」
俺は制服をもらって興奮しているといつもとは違って真剣な表情をしている兄貴がいた。
「……その制服を着ている者たちはみんなが命を懸けて街を守ってる……直接戦闘をしない人たちもその気持ちは変わらない……」
「……兄貴……」
「……海賊たちは守りがいなくなったこの街の資源を強奪するためにやってくる……遊びや軽い気持ちで着ていい服じゃない……わかってるな?」
これが兄貴だ。普段はおちゃらけることが多いけどいざという時のカッコよさを俺は知っている。
「もちろん……俺は兄貴の背中を見てきたから……俺も街を守りたい気持ちはみんなとおんなじだよ……」
こうして俺は自警団の制服を着用し正式に自警団入りを果たした。
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