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進め!魔法学園2  作者: 木こる
12000回目の自殺
95/96

2年目7月

隼斗は芸術棟の裏に呼び出された。


(まったく、どいつもこいつも……

 なんで誰かを呼び出す時はこの場所なんだ?

 体育館の裏を選ぶ奴がいてもいいだろ……)


と内心不機嫌だが、顔には出さないよう心掛ける。

今、隼斗の前には女性が立っており、

もしやこれはそういう展開か?と疑いつつも

事務的な用事で呼び出された可能性も捨て切れない。

話を聞くまでは平静を装っておくのが吉だ。


「大上君って、おつき合いしてる子とかいる?」


ああ、そういう展開だった。

件の女性はいかにも興味津々な笑顔を浮かべており、

いきなりプライベートな質問をぶつけてくるあたり

押しの強い性格をしているのだろうと窺える。

彼女の顔と名前は知っているが、話すのは初めてだ。


高崎亞里亞。

女子プール室の警備員であり、

ここ関東魔法学園の卒業生でもある。

今まで接点の無かった大人の女性に突然呼び出され、

妙な質問をされて隼斗は大変迷惑していた。


「いえ、いませんよ」


周りにろくな女がいないから、と

理由を付け加えようとしたがやめておいた。

本人の前でその発言をするのは愚策だろう。


「じゃあさ、じゃあさ!

 私とつき合ってみない!?

 自分で言っちゃうのもあれだけど、

 私って魅力的なお姉さんでしょ!?

 君がまだ知らないいろんなイイコトを

 いっぱい教えてあげられるよ〜?」


「お断りします」


「即答!?

 ちょっ、なんで!?

 一考の余地も無し!?」


たしかに彼女は顔も体も魅力的ではある。

密かに憧れを抱いている男子もそれなりにいる。

だが開放的というか、奔放が過ぎるというか……

たまに過激な水着姿のまま訓練棟をうろついており、

目のやり場に困る時があるのだ。

「それがいい」という意見の者も一定数いるが、

隼斗としては「はしたない」としか思えない。


もしそれが、ついうっかり着替え忘れたという

ドジっ子的な理由であればまだ許せるものの、

彼女の場合はセクシーな自分をアピールするために

わざと見せつけている感じが伝わってくるのだ。

恥じらいのない女性は嫌いである。


「たしか高崎さんの好きな男性のタイプは、

 身長190cm以上のワイルド系イケメンでしたよね?

 他にも細々とした要望があったと記憶してますが、

 まず最初の条件からして俺には当てはまらない

 妥協した結果が今の状況なのかもしれませんが、

 もし万が一俺とあなたがつき合ったとして、

 必ず不満に感じる瞬間が出てくると思いますよ

 その“理想と違う”という不満は蓄積してゆき、

 いつか爆発して結局別れることになるんです

 それなら最初からつき合わない方がいい

 あなたは理想を追い求めるべきです

 “欲しい”という気持ちを抑える必要はありません

 いつかあなたにふさわしい相手が現れるでしょう

 なにせ、あなたは魅力的なお姉さんなんですから」


まあ、現実的に考えて無理だろう。

彼女は『素手でドラゴンをぶち殺せる程度の強さ』も

彼氏募集の条件に挙げていたのだ。

そんな甲斐晃のような男がこの世に何人いることか。


(ああ、この人はたしか……

 山田さんが同期だって言ってたな

 つまりアキラさんの後輩ということだし、

 初恋の相手を忘れられない感じなのか

 それはそれとして、高校生に色目使うなよ

 こんな大人にはなりたくないな)


やはり彼女は妥協するべきだが、

その相手は自分以外から選んでほしい。

そう願う隼斗であった。




さっき『身長』と口にして、少し気になったので

自分自身の成長記録を見返してみた。

すると去年より身長が10cmも伸びており、

我ながら成長期ってすごいな、と1人で感激する。


そんなスマホ片手にニヤつく隼斗に、

更なる朗報がもたらされる。


「はいどうも〜

 モノクル運送から荷物のお届けで〜す」


「あ、山田さん

 ついさっきある女性から…………っと、

 この差出人、例の発明おじさんじゃないですか

 ということは……ようやく完成したんですかね?」


「え、何々?

 ある女性がどうしたの?

 まずはそっちの話から消化しようよ

 すごく気になるからさ……」


段ボール箱を開封すると、そこにはグローブが。

ただし普通のオープンフィンガーグローブとは違い、

拳の保護よりも敵を倒すことを目的に開発された

れっきとした拳武器である。


同梱してあった説明書にはこう書いてある。

狼の牙(ウルフファング)”と──。


「苗字のオオガミに引っ掛けたんですね

 安直な発想だけれど、まあ悪くはない」


サイズは問題無し。

少しゴテゴテした見た目でおもちゃ感は否めないが、

変身ヒーロー気分を味わえるので、むしろお得だ。

内部に組み込まれた各種様々な機械パーツの影響で

若干の着け心地の悪さは感じるものの、

使い続けるうちに慣れてゆくだろう。


そして軽い。

前回の試作品も機械仕掛けにしては相当軽かったが、

今回はその半分程度の労力で振り回すことができる。

素材が良いのか開発者の技術力がすごいのか、

とにかくこの軽量化は非常にありがたい。


「ゼロコンマ数秒の遅れが命取りになりますからね

 白兵戦しかできない俺にとっては特にです

 この軽さならハンドスピードが落ちないばかりか、

 スタミナを長持ちさせることができます」


「君の腕力が向上しただけじゃないかな?

 それよりさ、ある女性の件について聞かせてよ

 もし僕に関係ある話なら知っておかないと……」


説明書を読み進めると、電磁力を発生させるには

指でタッチパネルを操作する以外にも、音声入力や

特定のポーズを取るなどの方法があると書いてある。

どうやら発明おじさんは『電磁加速パンチ!』と、

隼斗に技の名前を叫びながら戦わせたいらしい。


「それじゃあ長すぎるし、きっと恥ずかしい

 音声入力はやめておいた方が無難か

 ……あ、どうやら設定変更できるみたいだな

 それなら恥ずかしくない掛け声に変更しておこう」


とりあえず『起動!』でスイッチをONに、

『終了!』でスイッチをOFFにするよう変更した。

それだけでは誤作動を起こす可能性があるので、

音声だけではなくポーズと一致させた場合にのみ

電磁力を発生させるように設定をいじる。


「へえ、生体認証機能まで付いてるのか

 俺以外の人間が装備しても意味が無い、と……

 普段は俺が魔道工学合金(マギアメタル)製の武具を使っても

 性能を発揮できない側の立場だから新鮮な気分だ」


「ねえ大上君、僕の声聞こえてる?

 聞こえてるよねえ?

 ある女性の件について知りたいんだけどさあ

 完全に無視してるよねえ?」


説明書を読み終え、大体の仕様を理解した。

ここに書かれている通りならば安全面に問題は無く、

今後の戦闘で心強い味方となってくれるだろう。

あとは実際に使ってみてから判断すればよい。


「なんだかワクワクしてきました」


「僕はモヤモヤしているよ」






──修行の日々が過ぎてゆく。

通常授業と戦闘訓練を終えたら訓練室で自主鍛錬、

その後ダンジョンへと向かい狼の牙を研ぎ澄ます。

他の生徒が冒険活動を行うペースは週2回程度だが、

隼斗はそれを毎日続けた。


強さを求めて限界まで自分を追い込む……とはいえ、

オーバーワークにならないよう細心の注意を払う。

周りからは訓練しか頭にない男だと思われているが、

案外隼斗は遊びを知っている男でもある。

紳士服店でウィンドウショッピングを堪能したり、

図書室で借りた古い洋画を英語のまま鑑賞したり、

ただ夜の海を見たいがためにバイクを走らせたりと、

充実した余暇を挟みながらのトレーニングだったので

あまり苦痛に感じることはなかった。


そうこうしているうちに1学期が終わり、

気づけばもう夏休みだ。

これからは午前から自由に動くことができるので、

より充実したトレーニングに取り組める。


ちなみに高梨いちごは全教科補習コースなので

ストーカーバリアを張ることはできないが、

どのみち安土は今年の夏休みも地元で過ごすそうで、

待ち伏せからの嫌味攻撃に備える必要は無い。

高梨いちごをそばに置いておく理由が無いのだ。

むしろ彼女はこちらの士気を下げる存在であり、

できれば遠ざけておきたいというのが本音だ。

それでも隼斗が高梨いちごの接近を許しているのは、

男より女に付き纏われた方がマシだからである。




そんなこんなであっという間に時は過ぎ、

いよいよ運命の日──7月31日がやってきた。

京都の無間ダンジョンにて若者5名が死ぬ日であり、

その中には大上隼斗も含まれている。

他4名は安土桃之進との戦いで命を落とすのだが、

隼斗の場合は“脱出が間に合わない”のが死因である。


隼斗は決して鈍臭い男などではない。

むしろ学園で1、2位を争う身体能力の持ち主であり、

戦場で気を抜くような甘い性格はしていない。

そんな彼が崩壊するダンジョンから逃げ遅れる理由は

『ここは俺に任せて先に行け!』をやるからだ。


犬飼杏子や仲間たちを無事に脱出させるには、

ラスボスを押さえておける人員が必要だった。

それを実現可能な人員が大上隼斗だった。

ただそれだけの話である。



……まあ、前回までの世界線では、の話だが。



「大上、それに先輩たちまで……

 こんな所まで一体何をしに来たんだ?

 まさか修学旅行の下見だとか、

 ふざけたことを抜かすつもりじゃないだろうな?」


「安土にしちゃあ笑える冗談だな

 お察しの通り、修学旅行の下見なんかじゃない

 俺たちはお前を連れ戻しに来たんだよ

 上からの命令で仕方なく、な」


場所は京都の無間ダンジョン第7層終点。

これがゲームなら最終セーブポイントがありそうな、

ラストバトルの準備を整えるには絶好の位置である。

だが、隼斗たちの目的はラスボスの撃破ではなく、

単身で突入した安土桃太郎を保護することにあった。


その保護対象はなんとも悪趣味な着物を纏っている。

全身の至る所に金銀宝石が散りばめられており、

背面には黄金の逆五芒星が刺繍されているのだ。

こいつのファッションセンスの無さは知っていたが、

ここまで突き抜けていると逆に清々しくすら思える。


「安土、お前こそこんな所で何をしてるんだ?

 そんなふざけた衣装まで用意しちゃって」


「俺の衣装はふざけてない

 俺はただ、敵情視察に来ただけだ

 それを周りが勘違いして勝手に騒いでるだけだ

 ソロで安土桃之進に勝てるなんて自惚れてないし、

 もし自殺をする気ならもっと楽な方法を選んでる

 それより、ふざけてるのはお前らの方だろう

 なんだそのバイクは?

 ダンジョン内で乗り物を使用するという行為が

 どれだけ危険なことか理解しているはずだ」


「ああ、当然理解はしているとも

 不安定な地形でバランスを崩して転倒、

 狭い箇所を強引に通過しようとして衝突、

 地面の突起物がタイヤに刺さってパンク、

 排気音や熱源に引き寄せられた魔物に囲まれる……

 そういう様々なリスクがあることは重々承知の上だ

 だがそれでも、俺たちはスピードを取った

 せっかくの機会だから検証も兼ねて、な」


「検証……だと?」


するとこの場には似つかわしくない運送業者の男が

突然バイクのタイヤをバンバンと叩き始めたので、

一同の注目はそちらに集まった。


ご存じ、モノクル運送の山田である。


「これだよ、これ!!

 なぜかあの不破開発が手掛けちゃった、

 ダンジョン内での走行に耐え得る特殊なタイヤ!!

 弊社がやってるダンジョン配達サービスが

 どういうわけか大好評でねえ!!

 『バイクで運べたらもっと効率的になるのでは?』

 なんて馬鹿なこと言い出す輩が現れたわけよ!!

 で、僕には実地検証の業務が押しつけられ、

 興味を持った大上君たちが協力を申し出てくれて

 現在に至るってわけさ!!」


この試みが成功すればモノクル運送の株は上がり、

会社内での山田の評価も良くなろうというものだ。

これはまだ本人には知らせていない情報だが、

担当部署を離れたがっている山田のために

上層部は新たな部署を設立しようと考えている。


それは仮の名を“ダンジョン回収サービス”と言い、

ダンジョン内で忘れ物を探したり、予定時間までに

戻ってこなかったパーティーを迎えに行ったり、

場合によっては全滅した者たちを回収する業務だ。

はっきり言って配達よりも危険な仕事ではあるが、

山田ならば上手くやってくれるだろう。

そんな期待感がある。


冒険者の世界から遠ざかりたい山田にとっては

迷惑以外の何物でもないが、会社に悪気は無い。

これはただの部署異動ではなく出世なのだ。

山田の実績を正当に評価した結果がそれなのである。



まあそれはそれとして、今は目の前の仕事に集中だ。


「とにかく安土、帰るぞ

 鬼島先輩もそのつもりで来たんですよね?」


「ええ、10億円は諦めることになるけど、

 身近な人間に死なれちゃ寝覚めが悪いわ」


「ん……10億円?

 一体なんの話ですかそれは?」


いきなり神楽が途方もない金額を口走るものだから、

ラスボス討伐の報酬について聞かされていない一同は

お互いに顔を見合わせて首を傾げる。

それは保護対象の安土桃太郎にとっても寝耳に水で、

詳しく知っておくべき情報であると判断した。




神楽の説明が終わり、現状を把握することができた。

現在このダンジョンには50名以上の冒険者がおり、

そいつらはほとんど金目当ての連中ではあるが、

ここまで辿り着くことができずに燻っている。

そのおかげで上手い具合に戦力が各階層に分散して

退路の確保という重要任務をこなせているのだが、

うかうかしているとそのバランスは崩れてしまう。


懸念すべきは、日本魔法学園からの援軍である。

一体どれだけの人数が駆けつけるのかは不明だが、

彼らの到着により燻っている連中は確実に動き出す。

なにせ金目当ての連中なのだ。

10億円欲しさにラスボスに近づこうとするだろう。

現在担当している持ち場に未熟な生徒たちを残して、

少しでも前へ進もうと頑張ってしまうだろう。

そして無理して這い上がってきた連中のせいで

次の階層でも同じ現象が起きる。


その結果、後半になるほど味方の質は向上するが、

前半には現在より実力の低い人材が配置されるので

戦線を維持するのが困難になってくる。

そうなると前半の味方が撤退する可能性が浮上し、

それは退路の確保を放棄することに他ならない。

後半の者から撤退を行うのが原則であるが、

その順番を間違えると大変なことになる。


いくら手練れとて、大勢の魔物と戦闘を行いながら

崩壊中のダンジョンから脱出するのは不可能だろう。

だが、退路を確保できていなければ必ずそうなる。

たとえラスボスの撃破に成功したとしても、

ダンジョンに飲み込まれる未来しかない。

退路の確保はそれほど重要なのだ。


援軍そのものはありがたいが、

無闇に人数を増やすだけではいけない。

適材適所を心掛けなければ最悪の事態を招く。

社長安土桜夜はそこまで考えていなかった。

現場の冒険者たちも目先の利益に囚われ、

まるで大局が見えていない。



そして、最前線に立つ若者たちの中からも

金の魔力に魅了される者が現れる始末だ。


「10億円かぁ……

 そんだけありゃ一生遊んで暮らせるな

 オイラは豪邸やら綺麗なドレスにゃ興味ねえから、

 食い物やPC周りの強化なんかに目一杯使えるぜ」


「ちょ、ちょっと待ってよ佐倉さん!

 僕たちは5人パーティーなんだから、

 1人当たりの報酬は2億円だよ!」


「それでも充分な金額よねぇ

 とりあえず私は新しいペンタブ買おうかしら

 アロエは何に使うー?」


「えー、いきなり聞かれてもなぁ……

 まあのんびりと世界一周旅行でもしながら、

 有意義なお金の使い道を考えるとしますかね」


安土桃太郎を連れ戻しにやってきた彼らだが、

その目的を忘れて都合の良い未来を想像している。

どうやらラスボスと一戦交える気になったようだ。


そして、勝てると思っているのだ。


これにはさすがの安土も黙っているわけにはいかず、

彼らが愚行を犯さないように対処せざるを得ない。


「おい大上、先輩たちを止めろ

 安土桃之進は500年間無敗を誇る化け物なんだ

 行き当たりばったりで挑んでいい相手じゃない

 どうしても奴と戦いたければ引き止めはしないが、

 せめて戦力の解析が終わってからにしろ

 その作業は俺1人で行う……今日はそれだけだ

 挑むのは後日改めて、しっかり準備を整えてからだ

 でないと無駄死にするだけだぞ」


こんな時でさえ偉そうな命令口調だが、

彼なりに先輩たちの身を案じているのだろう。

それが顔見知り程度の間柄であっても、

見殺しにするのは寝覚めが悪い。

そういうことなのだろう。


「自分で言えよ」


すると安土は眉間をつまんで黙り込む。

どうやら本気で引き止めるつもりはないらしい。

まあいい、隼斗にも少し考えたいことがあった。


ピアノと防音室はいくらで揃えられるだろうか?

基本情報

氏名:犬飼 杏子 (いぬかい きょうこ)

性別:女

サイズ:L

年齢:17歳 (4月15日生まれ)

身長:140cm

体重:40kg

血液型:AB型

アルカナ:塔

属性:雷

武器:エメラルドソード (短剣)

防具:プリテンダー (盾)

防具:ブラックレイン (衣装)


能力評価 (7段階)

P:3

S:3

T:3

F:4

C:7


登録魔法

・ヒール

・サンクチュアリ

・ライジングフォース

・エクリプス

・サンダーボール

・サンダーストーム

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