2年目5月
嶋田と高木の評判が地に落ちる一方で、
小田切もある意味有名人になっていた。
“宝くじの貯金が残ってる奴”として……
「おい、小田切ぃ〜
ちょっと俺に金貸してくんねぇ?
今月ちょっと財布がピンチでよ〜
倍にして返すからいいだろぉ?」
「や、やめてよ室戸君!
今月はまだ始まったばかりじゃないか!
ちょっと貸しただけじゃ、きっと乗り切れないよ!
それに、何倍なのかはっきりしてない!
ゼロ倍で返すことも、君には可能なんだ!」
「おっ、いいねえそれ!
じゃあゼロ倍で返してやるから金貸せよ!」
「無理……できないよ!
支払いプランが変わったんだ!
僕は毎月1万円を出すつもりだったけど、
先輩は一括20万円でいいって言ってくれたんだ!
その方が僕にとってはお得だから、
この2年間は銀行から引き出す必要が無いんだ!
君にお金を貸せるようになるのは23ヶ月後だよ!」
「ゴチャゴチャとうっせえなあ!!
銀行に金あんならそれを出しゃいいんだよ!!
ぶっ飛ばされてえのかテメエはよーーー!!」
「ぶっ飛ばされたくはないよ!
でも、僕が銀行からお金を引き出さない限りは、
君は僕からお金を借りることはできないんだ!
主導権は僕にあることを理解するべきだよ!」
「ぶっ殺すぞコラァ!!」
「ひいぃぃ〜〜〜!!」
室戸は頭に血管を浮き上がらせながら拳を振り上げ、
小田切は恐怖で身が竦み、その場に固まった。
顔も腹もガラ空きであり、もはや殴り放題である。
だが、室戸の拳が小田切に届くことはなかった。
小田切に情けをかけたわけではない。
室戸は本気で半殺しにするつもりでいたのだが、
背後から誰かに腕を掴まれて攻撃できなかったのだ。
「クソッ、邪魔すんじゃねえええ!!
テメエもぶっ殺されてえのか!!」
振り返ると、そこにはチンピラ2人が立っていた。
否、嶋田と高木である。
「おいおい、上級生に対して失礼な奴だな
礼儀がなってないぞ、礼儀が」
「つうか、室戸……?
お前もしかして、室戸亜鈴の弟か?
去年ソッコーで退学したあいつの……
よく見りゃ顔が似てるし間違いねえな」
室戸亜鈴……懐かしい名だ。
冒険者としての素質に優れる逸材だったが、
ノーマークの隼斗からボコボコにされたクズである。
どうやらその弟も同類だったようで、
カツアゲなんてクズ行為に手を染めているあたり
救いようのない兄弟であることは言うまでもない。
「おやおや、これはこれは……
悪名高いチンピラーズのお二人でしたか
ぶっ殺すとか言ってすいませんねえ
なにせ後ろにいたもんで、見えなかったんスよ」
「なんだよチンピラーズって……
新入生たちの間でそう呼ばれてんのか俺ら……?」
「なんだかお笑いコンビみたいだな
……って、んなこたぁどうでもいいんだよ
室戸、小田切にちょっかい出すのはやめとけ
そいつは俺たちの財布なんだ
それに手つけたら、ただじゃおかねえぞ」
「へいへい、わかりましたよ」
チンピラーズの睨みが効果あったのか、
室戸は不自然なほどすんなりと引き下がり、
廊下の奥へと消えていった。
数分後、室戸が完全に立ち去ったのを確認した2人は
同時に大きなため息を吐き出し、その場に座り込む。
気づけば湿った頬に髪の毛が引っ付いており、
いつから冷や汗を掻いていたのかはわからない。
おそらく室戸はその醜態を見逃さなかっただろう。
『こいつらビビってる』と。
嶋田と高木は互いの顔を見合わせ、
相棒が涙目になっていることで安心感を覚えた。
所詮はチンピラみたいな顔をしているだけの男子、
本物のワルと喧嘩したことなど一度も無い。
そんな2人が室戸のような不良に啖呵を切るのは、
どれだけ勇気の要る行為であっただろうか?
「せ、先輩!
ありがとうございました!
おかげで今日も無事に乗り切れました!
これからもよろしくお願いします!」
「お、おう……
そういう約束で金貰ってるからな
報酬に見合うだけの働きはするぜ
割に合ってない気もするが……」
「しっかし、まさか室戸に弟がいたとはな……
これからはあいつの動向にも注意しねえと……」
小田切から20万円をカツアゲした2人ではあるが、
『他の人からカツアゲされないように守る』という
ミッションを律儀にこなしているようだ。
これは通常の護衛依頼と大差ない働きぶりである。
彼らはいつも悪どいことばかり考えている奴らだが、
『取り分は山分け』というルールを破らないし、
なんだかんだで根は真面目なのだろう。
物陰から一部始終を見守っていた隼斗は、
2人に蜘蛛の糸を垂らしてやることにした。
なぜそう思い立ったのかといえば、嶋田と高木が
血も涙もない極悪人のような扱いをされているのが
無性に我慢ならなかったからである。
彼らは確かにカツアゲ行為をした問題児ではあるが、
結果的に被害者の身の安全が保証されるという
不思議な状況を招いたのも事実だ。
そして何よりも彼らは悪党ぶった小物に過ぎず、
決して極悪人と呼べるほどの大物ではないのだ。
その過大評価は訂正しておかねばなるまい。
後日、隼斗に呼び出された2人はメモを受け取り、
それが何かの名簿であると認識して首を傾げた。
「おい大上、なんだこれは?
知らない名前ばっかなんだが……」
「まあ、お前らが知らなくても当然だろう
それは過去に小田切から金を奪った連中のリストだ
36名中21名は同じ人物だが気にするな」
「えっ、それってつまり……
こいつら全員カツアゲの加害者ってことか?
そんなのどうやって調べ……
あ、小田切から聞き出したんだな」
「情報源については話せない
とりあえず、確かにリストは渡したぞ
それをどう使うかはお前らの自由だが、
できれば正しい使い方をしてほしいとは思ってる」
「正しい使い方……って、なんだ?」
「それは自分たちで考えろ」
隼斗はそれ以上何も言わずに立ち去った。
少しキザだったかなと思いつつ、クールに去った。
そんな隼斗の背中を見送る2人の表情は真剣であり、
今自分たちは人生の岐路に立たされているのだと
深く心に刻みつけるのだった。
それから2週間後、学園に来客があった。
しかしアポ無しでやってきた彼は歓迎されず、
生徒たちは迷惑そうな視線を向けるだけで
誰一人として彼に近づこうとはしない。
無論、関わりたくない相手だからである。
「オイコラァ!!
嶋田ぁ!! 高木ぃ!!
うちの弟が世話になったようだなァ!?
お礼してやっから今すぐ出てこいやあぁぁ!!」
室戸亜鈴、再来。
なんとも嬉しくないイベントが発生してしまった。
彼の背後では室戸弟がニヤニヤと笑っており、
先日の一件が原因であるのは間違いない。
人数合わせ……という感じはせず、おそらく室戸弟は
兄に嶋田と高木をやっつけてもらいたいのだろう。
室戸弟は残念ながら体格に恵まれているとは言えず、
兄と比べると全然迫力が無いのだ。
おそらく喧嘩も弱い。
だからこそ兄を連れてきたと考えると合点が行く。
なんとも恥ずかしい生き様である。
生徒たちが困惑しているのは明白だが、
教師や訓練官はしばらく静観することにした。
このような不測の事態に生徒はどう対処するのか、
それを見定める義務がある……というわけではなく、
ただ単に珍しいイベントを楽しんでいるだけだった。
そして、1人の生徒が室戸兄弟の前へと歩み出る。
すると室戸兄は指をポキポキと鳴らし始め、
邪悪な笑みを浮かべながら勇者に問い掛けたのだ。
「やっとご登場か……待たせやがって
んで、オメエが嶋田か? それとも高木か?
まあどっちでもいいが、もう1人はどうした?
まさかビビって逃げたんじゃねえだろうなぁ?
いいからさっさと連れてこいや
まとめてぶっ飛ばさねえと気が済まねえんだよ」
「あはは、ごめんね
僕は嶋田君でも高木君でもなくて、
生徒会長をやってる金子だよ
とりあえず場所を移してから話そうか?
君は殴り込みに来たんだよね?
それなら殴り合いに適したリングが訓練室にあるよ
今頃は大上君が使ってるかもしれないけど、
事情を話せば空けてもらえるだろうからさ」
大上と聞いて、室戸兄の表情が歪む。
去年の出来事がトラウマになっているのだ。
格下の相手を力でねじ伏せようとしたものの
次の瞬間にはあっさりと転倒させられており、
起き上がろうとしたところで顔面へのキック……。
暴力の世界に生きてきた男が完全敗北してしまった。
そんなつらい思い出がこの学園にはある。
できれば来たくはなかったが、これも弟のためだ。
嶋田と高木は弟の名誉を汚した連中だと聞いている。
家族を馬鹿にした奴を捨て置くことはできない。
そういう理由があって馳せ参じたのである。
「いや待て、生徒会長さんよう……
こいつは男と男の喧嘩なんだ、
俺たちにリングなんていらねえよ
嶋田と高木はこの場で始末する……いいな?」
「だめだよ、許可できない
学園のルールに従ってもらわないと困るよ
生徒同士の喧嘩ならともかく、部外者だからねえ
しかも冒険者免許を持たない一般人相手となると、
安全面の確保は最重要課題なんだ
君も元生徒ならそのへん理解してるでしょ?
入学前に説明受けて同意書にサインしたはずだし、
言い逃れしようとしても無駄だよ」
「ぐっ……!
だ、だったら場所の移動はしてやる!!
だが訓練室はナシだ!!
俺が用あんのは嶋田と高木で、大上じゃねえ!!
練習の邪魔する気はこれっぽっちもねえよ!!
そのリングってのは他の部屋にもあんのか!?
あんならそこに移動ってことでいいよなぁ!?」
「う〜ん、あったかなぁ……?
訓練室自体は他にもあるんだけどねえ
対人格闘技術を磨くための部屋となると、
大上君が毎日入り浸ってるあそこしか……」
「毎日入り浸ってんのかよ……!!」
大上隼斗は素手で人を殺す技術を磨き続けている。
そう考えると青褪めるしかない室戸兄であった。
なんだかさっきから様子のおかしい兄を見かね、
室戸弟が余計な口を挟む。
「おうおう、さっきから黙って聞いてりゃ
ルールだのなんだのとゴチャゴチャうっせえな!!
いいから兄貴の言う通りにすりゃいいんだよ!!
さっさとあいつら連れてこいよヒョロガリ!!」
この男は何を聞いていたのだろう?
場所を移してから話すという方向で進んでいるのに、
役者を揃えるという、1つ前の話題を口にしたのだ。
おそらく喧嘩が弱い上に頭も悪い。
救いようのない弟である。
「はは、元気な新入生のようで何よりだ
でも先輩に対しての態度じゃないね
口の聞き方には気をつけた方がいいよ
もう学園の生徒じゃないお兄ちゃんはまだしも、
君はここに通い始めたばかりのひよっこなんだ
少しは礼儀を弁えないと後悔することになる」
「ぁアン!?
なんだとテメエ!!
生徒会長だかなんだか知んねえけど、
兄貴に勝てると思ってんのかぁアン!?」
「勝てるよ
……え、君の発言それでいいの?
聞かされたこっちが恥ずかしくなっちゃうよ
そこは『俺に勝てると思ってんのか』でしょ」
「うるせえ!!
俺を馬鹿にしやがって!!
ええい、もう我慢できねえ……!!
兄貴ぃ!! やっちゃってくれ!!」
と、やっぱりここでも兄頼り。
この弟にプライドは無いのか。
そして兄は、
「…………」
無言で弟を見つめるだけであり、
金子に襲い掛かる気配は無い。
「……え、兄貴?
ほら、早くこいつシメちゃおうぜ!
俺のこと馬鹿にしてやがんだ!
二度とナメた口聞けないようにしてやろうぜ!」
と促されるも、兄は動かない。
動く理由が無いのだ。
「俺は嶋田と高木って奴をぶっ飛ばしに来たんだ
それ以外の無関係な連中に手出す気はねえよ
今のはお前が個人的な感情で吹っ掛けた喧嘩だ
お前自身の手でケジメをつけるべきだろう」
室戸弟は大きく口を開けたまま固まった。
ルール無用の喧嘩にもルールは存在する。
彼はその事実を知らなかったのである。
室戸兄弟のやり取りをひとしきり観察した金子は、
とりあえず戦闘準備に取り掛かった。
とはいえ、見せかけだけのパフォーマンスだ。
特に準備などせずとも制圧することは容易いが、
せっかく大勢が観ているのでサービスしたいのと、
生意気な後輩に格の違いをわからせる必要があった。
右手に氷の剣、左手に氷の盾、
そして全身は氷の鎧という氷装備一式が揃う。
いずれも魔力で作り出した武具であり、
実体ではないので殺傷力は無い。
たとえバッサリ斬られても痛い思いをするだけで、
命を奪うような事態にはならないので安心だ!
「ちょっ、待て待て待てぇ!!
なんだよそれ……魔法かよ!?
喧嘩に魔法使うとか卑怯だぞ!!
男なら正々堂々と素手で勝負しろよ!!」
室戸弟は必死に訴えた。
べつに男らしい勝負がしたいわけではない。
まだ魔法を使えない彼が勝つにはそれしかないのだ。
唯一の勝ち筋は近接戦闘だけであり、
遠距離から魔法を撃たれたら為す術が無い。
隠し持ったアーミーナイフの出番が訪れないのだ。
「何言ってんの君?
ここは魔法学園だよ?
魔法を使った喧嘩なんて日常茶飯事だし、
刃物を隠し持ってる相手には用心しないとね」
バレてた。
金子は不良の世界とは程遠い存在ではあるが、
それなりに修羅場を潜ってきた冒険者なのだ。
死と隣り合わせの戦いを経験した身からすれば、
戦闘素人の思考を読むことなど造作もない。
この勝負は始まる前から結果が決まっていた。
金子は素人の遊びにつき合ってやっただけである。
「うおおおお!!」
先手は室戸弟。
チャッと取り出したナイフを構えての突撃。
隠し持っているのがバレバレだったので開き直り、
もう破れかぶれの勢いでアタックするしかない。
対する金子も突撃……というか急接近を試み、
なぜか室戸弟の足が止まるという珍事が起こる。
この展開に新入生の多くは首を傾げたが、
半数以上の上級生にはカラクリが理解できていた。
室戸弟にとってナイフは脅しの道具であり、
チラつかせれば相手は怯むものと思っていた。
しかし、金子は怯むどころか距離を詰めてくる。
このままでは相手を刺してしまうかもしれない。
取り返しのつかない怪我を負わせるかもしれない。
傷害事件。逮捕。裁判。慰謝料。実名報道。
室戸弟の頭の中はそんな言葉で埋め尽くされ、
せっかく出したナイフを引っ込めるという
何がしたいのかわからない行動に走らせる。
早い話、室戸弟はビビったのだ。
金子は適切な間合いまで来ると氷の剣をピッと一閃。
その太刀筋は観客のために青白く彩られており、
キラキラと舞う氷の結晶が実に美しい。
それは無防備な室戸弟の首を完全に捉えており、
もし実物だったならば確実に息の根を止めていた。
(あ、俺死んだ)
そう思い込んだ室戸弟はその場にドサッと崩れ落ち、
白目を剥いたまま動かなくなった。
これにて試合終了である。
室戸亜鈴は弟の弱さに愕然とした。
弟は「俺を見下してる連中がいる」と言っていたが、
これだけ無様な負け方をする奴はナメられて当然だ。
「いきなり2人組が襲ってきた」とも言っていたが、
どうもそれは嘘なのではないかと疑念が湧いてくる。
「なあ、会長さん
嶋田と高木ってのはどんな奴らなんだ?
俺とは同学年だが、話したことはねえんだよな
弟と何があったのか知ってるか?」
「ん〜、そうだなぁ
あの2人は見た目で誤解されるタイプ……なのかな?
最近後輩をカツアゲしたって噂が流れたんだけど、
逆に後輩をカツアゲから守ってるみたいなんだよね
これは僕の憶測だから真実はわからないけど、
君の弟はあの2人にカツアゲを妨害されて
逆恨みしてるんじゃないかな?」
「逆恨み……
なんだかそんな気がしてきたぜ
あとで問い詰めてやらねえと……」
室戸の中から嶋田と高木に対する敵意は失せ、
今は弟に対する殺意で満たされている。
彼は退学後、自動車の整備工場に勤めており、
本日は有給休暇を使ってこの場へと来ていたのだ。
それがもし弟がくだらない嘘をついていたのならば、
貴重な休日を無駄に過ごしたことになる。
その怒りは計り知れない。
「その……騒ぎを起こして悪かったな
俺はこれで退散するぜ
嶋田と高木の件は綺麗さっぱり忘れるし、
もう二度とここへは来ないと約束する」
「いやあ、また来てくれても構わないよ?
大上君がスパーリング相手を求めてるからねえ
君みたいに本気で他人を殴れる人材は適任だよ」
再びその名を耳にして、室戸の肩がビクリと跳ねる。
(この様子じゃあスパー相手は無理か……)
生徒会長である金子は去年の出来事を把握しており、
室戸が完膚なきまでに惨敗した件を知っている。
彼には是非リベンジマッチを挑んでほしかったが、
どうやらその願いは叶いそうにない。
かつて“狂犬”と呼ばれ恐れられた室戸亜鈴だが、
その獰猛な牙はすっかり抜け落ちてしまったらしい。
午後8時頃、小田切の部屋に来客があった。
玄関を開けると2人のチンピラ──嶋田と高木だ。
よく見ると彼らは顔面に青アザを作っており、
口や鼻の周りには血を拭いたような形跡がある。
着ているアロハシャツはボロボロに擦り切れており、
まるで交通事故にでも遭ったかのような惨状だった。
「せ、先輩!?
なんかすごいことになってますよ!?
違うシャツに替えた方がいいですよ!!」
薄々感じていたが、小田切はどこかおかしい。
なんかこう、ズレまくっているのだ。
ここはまず怪我の心配をするべき場面である。
「ああ、部屋戻ったら着替えるから心配すんな
それより……ほら、受け取れ」
と、小田切は封筒を手渡されて困惑する。
切手が貼ってないし、宛名も差出人の名前も無い。
そして封筒なのに封がされていない。
先輩たちは郵便物を届けに来たわけではないようだ。
「中身は……えっ、お金!?
これは一体どういうことですか!?
もしかして冒険者って月給制だったんですか!?」
まったく頭が痛くなるリアクションだ。
というか実際痛い。不良に殴られたからである。
嶋田と高木はこの2週間、渡されたリストを頼りに
過去に小田切から金を奪った連中を探し回り、
金を奪い返す作業に専念していた。
それが本日になってようやく完了したのだが、
最後の1人がよりにもよってバリバリの不良であり、
30人近く仲間を呼ばれて多勢に無勢の状況となった。
魔法を使えば楽勝だったが、2人はそうしなかった。
身元が判明しては困るからである。
アロハシャツを着ているのはそのためだ。
冒険者が一般人を傷付ける行為は重罪であり、
それは喧嘩上等を謳っている人種にも適用される。
普段は他人に危害を加える生き方をしていながら、
自分が傷付いたら警察に泣きつく者は意外と多い。
それと魔法学園の関係者に迷惑をかけたくないので、
生徒の証である制服を着るわけにはいかなかった。
今回はあくまで“嶋田と高木”個人の戦いだったのだ。
「まあ、とにかくだな……
お前が中学時代に奪われた36万、
きっちり回収しといてやったぞ」
「ちなみに俺たちが預かってる20万だが……
それは卒業前に返してやるから安心しろ
その、大事に保管してるというか……」
まとまった金を手にした2人だが、
どうやらすぐに使い切ってしまったらしい。
これなら毎月1万円を受け取る方が賢い選択だったが、
今更文句を言ったところで金は戻ってこない。
「え、奪われたお金の回収って……
そんなことまでしてくれるなんて、
なんて優しい先輩たちなんだ!!
すごく嬉しいです!!
本当にありがとうございます!!」
結局2人の儲けはゼロになるわけだが、
それでも悪い気はしなかった。
自分たちの行いの結果、誰かに感謝されている。
その事実がたまらなく嬉しいのだ。
「これで……このお金があれば、
大学の4年間も無事に乗り切れそうです!!」
「おいおい、マジかよこいつ……」
「そのプラン見直した方がいいぞ」
嶋田と高木の苦難は続く。
その後、小田切が奪還劇を全力で触れ回った結果、
嶋田と高木の悪評は覆った。
だが、『チンピラが不良から金を巻き上げただけ』
という見方も多く、英雄視されるほどではない。
しかし、それでも2人は誇りに満ちた顔をしており、
以前のような陰気さは感じられない。
彼らは変わりつつあるのだ。
もう道を踏み外すような行いはしないだろう。
そう願いたい。
そして小田切は“少なくとも36万円の貯金がある奴”
として有名になり、急に友達が増えたのだった。
基本情報
氏名:猪瀬 牡丹 (いのせ ぼたん)
性別:女
サイズ:K
年齢:16歳 (8月15日生まれ)
身長:178cm
体重:62kg
血液型:A型
アルカナ:太陽
属性:炎
武器:なし
防具:ブラインドガーディアン (盾)
防具:ブラックダイヤモンド (重鎧)
能力評価 (7段階)
P:7
S:5
T:5
F:3
C:5
登録魔法
・ファイヤーボール
・ファイヤーストーム
・マジックシールド
・ヴェクサシオン
・エクリプス
・アナライズ




