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進め!魔法学園2  作者: 木こる
12000回目の自殺
86/96

1年目10月

隼斗は1人ダンジョンに潜り、

実戦を通して戦闘技術を研鑽していた。

相手はお馴染みのコボルトだが、

今はハンデを付けた状況で特訓に励んでいる。

ザコだからといって油断してはいけない。


素手パリィ!


拳パリィの最高難易度版である。

もはや拳武器すら装備せず、まさに己の身一つで

敵の攻撃を受け流すというハイリスクな技だ。

腕を保護する物が何も無いので、攻撃を受けた際の

衝撃が非常に大きく、ノーダメージを実現するには

コンマ数秒のズレも許さないシビアなタイミングで

確実にそれを実行しなければならない。


まあ、今後この技術をメインに使う予定ではない。

あくまで拳パリィの精度を高めるための練習だ。

それは言い換えればタイミングの強化であり、

拳パリィはもちろん、カウンターや掴みなどの

隼斗の得意分野を伸ばすことに繋がるのだ。


ただまあ、毎日毎日コボルトだけでは味気ない。

この魔物の攻撃タイミングだけに慣れたところで

“コボルトキラー”などの微妙な称号を得るだけだ。

真のパリィストを目指すならば、どんな状況でも

全ての魔物から確実にパリィを取れるようになるまで

練習を積み重ねておくべきだろう。


まあ、真のパリィストなんて目指してはいないが。




というわけで第4層にやってきた。

コボルトの次に武器を持っている魔物といえば、

この学園ダンジョンではストーンナイトになる。

他のダンジョンならばゴブリンや半魚人などの

コボルトと同等の強さの魔物が存在するのだが、

ここはそういう環境なのだから諦めるしかない。


そしてそのストーンナイトだが……

オークの壁を越えているのだ。

つまり、人間が素手で倒せる魔物ではない。

甲斐晃とかいう例外も存在するが、

その特殊な一例を基準にしてはいけない。


ストーンナイトは、格闘技の歴代チャンピオンたちが

絶対に勝てない相手だと認めた魔物なのである。

右手に槍、左手に盾、そして全身鎧を装備しており、

裸同然の人間が相手にするには分が悪すぎる。


その事実を念頭に置き、隼斗は装備を整えた。

『武器と防具さえあれば勝てる』という概念は、

歴代チャンピオンたちも認めているところだ。



そして早速標的を発見したので、

充分なスペースのある玄室まで誘導する。

()()ではないぶん、この作業はコボルトよりも容易だ。

それに移動経路が単純である点もやりやすい。

ストーンナイトは侵入者を発見していない場合、

“壁まで来たらUターン”を繰り返すのだ。

レトロRPGでありがちな兵士の動きそのものである。


邪魔者のいない空間に標的を誘き寄せたので、

まずは最も安全な盾受けから試してみる。

受け流しではない。

敵の攻撃を真正面から受け止める“ブロック”だ。

ただ盾を構えて踏ん張るだけなので

技術的なことをしているようには見えないが、

これもれっきとした防御技術の1つである。


ガン!ガン!と盾越しに衝撃が伝わってくる。

やはりストーンナイトの攻撃力はコボルトなんかより

ずっと重く、遥かに強力なのだと実感させられる。

そして攻撃速度も若干速い。

事前にわかっていたことだが、全てが上回っている。

コボルトがレベル3程度の魔物だと仮定すると、

ストーンナイトはレベル20相当の存在なのだ。

強くて当然。それは覚悟していた。


ここで盾パリィ!


成功!


これも当然だ。

隼斗はただ攻撃を防いでいたわけではない。

盾受けしながらリズムを見極めていたのだ。

相手がどれだけ格上の存在であろうと、

タイミングさえ合えばそれは可能なのである。


隼斗はこの隙に左手の盾を捨てて拳武器に切り替え、

標的の顔面へ渾身の右ストレートをぶち込んだ。

もちろん素手ではない。

そしてレンタルグローブでもない。



“鉄拳”──もう名前そのまんまの拳武器であり、

ただ金属板を重ね合わせただけの無骨な外見が特徴。

格闘家タイプの冒険者がレンタル品を卒業する際、

最初に選ぶ装備品として広く知られている。

拳武器にしては重いという欠点を抱えており、

どちらかというと実戦より鍛錬向きな代物でもある。



その鉄拳による一撃で標的を撃破……はしておらず、

体勢を立て直したストーンナイトは攻撃を再開する。


パリィ!パリィ!パリィ!


一度タイミングを掴んだ隼斗の手にかかれば、

あとはもう消化作業であった。

鉄拳の重量による影響で腕の疲労を感じつつも、

今すぐにスタミナが尽きるほどではない。

日々積み上げてきた努力の成果である。



8回目のパリィ致命でストーンナイトを撃破した。

決まり手はボディーへの左フックだったが、

この魔物は全身のどこに攻撃を当てても

ダメージが等しく蓄積されてゆくので、

部位による弱点というものは存在しない。

槍、盾、鎧も魔物の体の一部という性質につき、

装備品を狙って攻撃し続けるのも有効である。


隼斗はハンマーでストーンナイトの死体を砕き、

槍と盾、そして石片を入手してその場を後にした。




次はカウンターだけで倒してみよう。

そんなことを考えながらフロアを彷徨っていると、

何やら石人形の群れが1箇所に固まっていた。

いわゆる魔物溜まりというやつだろう。

冒険者があまり出入りしないエリアでは

頻繁に発生する、ごく自然な現象である。


対処しやすいストーンナイトと1対1ならまだしも、

延々と石矢を撃ち続けるストーンアーチャーや

魔力攻撃を行うストーンメイジが混ざっていては、

どう考えても自分1人で捌き切ることはできない。

これは無視するに限る。


そう判断して通り過ぎようとしたのだが……


「誰かーーー!!」

「助けてーーー!!」


「えっ……」


魔物溜まり……ではない。

あの石人形の群れの向こうには人間がいて、

おそらく逃げ場の無い状況に陥っているのだ。

いるのかどうかもわからない『誰か』に

助けを求めているのが何よりの証拠である。


絶体絶命。


こちら側から見えるだけでも敵は10匹以上。

それを1人で処理できるとは思えないが、

他の冒険者パーティーを探している時間は無い。

だがこのまま放置するわけにもいかない。

助けを求めている者を見殺しにはできない。



隼斗は石人形の群れに飛び込……まず、

冷静に状況の確認から行なった。


声のした位置は玄室の隅、北東の角なので

壁を背にすれば西と南からしか攻撃が来ない。

助けを求めていたのは2人だ。

正確なパーティー人数はわからないが、

まだ動ける人間が2人いるなら時間は稼げる。


「大盾は2枚あるか!?

 もしあれば、それで西と南を塞げ!!」


「え!?

 誰かいた!!」

「お願い、早く助けて!!

 囲まれて動けないの!!」


「質問に答えろ!!

 そっちの状況を知りたい!!」


「あっ、うん!!

 今まさに大盾でブロック中!!」

「でももうとっくにバリア機能失ってるの!!

 みんなほとんどMP切れてて何もできないし、

 これじゃあいつまで持つかわかんない!!」


回復役(ヒーラー)は動けるのか!?」


「MP切れてるって言ってるでしょ!!

 いいから早く助けなさいよ!!」


「こっちはソロなんだ!!

 無茶すれば俺も死ぬ!!

 切り抜けるには計画的に動く必要がある!!」


「ちょっ、4層ソロって……

 あ〜、えっと、一応ヒール使いはいます!!

 専門家ってわけじゃないけど1人動けます!!」


「それなら今からそっちに“パキット”を投げ込む!!

 使い方はわかるな!?」


“パキット”──それはMP回復用のアイテムである。

経口摂取して魔力を回復させるポーションとは違い、

製品を破壊することで周囲に大量のマナを発生させて

数秒間だけ魔法を使い放題になるという仕様だ。

使用時に『パキッ』と鳴るのが商品名の由来であり、

かつて魔法学園の対人戦でポケットに忍ばせておいて

不正を行なった生徒がいたとかいないとか……。


さておき、隼斗はパキットを北東の角へと投げ込み、

少ししてから『パキッ』と音が鳴る。成功だ。


「ヒール!! ヒール!! ヒール!!」


こちらから現場を目視することはできないが、

とりあえずこれで盾のバリア機能は回復したはずだ。

長くは持たないだろうが、少しは時間を稼げた。




隼斗はまずメイジ4匹の処理から始めた。

自身にとって一番厄介な相手だからである。

魔力を持たない隼斗は魔力攻撃の威力を軽減できず、

メイジは『杖を振る』ような行動をしてくれないので

カウンターやパリィを狙えないのだ。


なので隼斗は標的の背後に忍び寄り、

力の限りハンマーを振り下ろして頭部を破壊する。

メイジたちは魔力を持っている先客に夢中であり、

魔力ゼロの隼斗には一切関心を示さなかった。

気分はまるで暗殺者である。



メイジの次はナイトの処理だ。

6匹見えるが、一度に全員を相手にはできない。

なので先程回収した石片を当てて1匹ずつ釣り出し、

丁寧にカウンターを狙って確実に仕留めてゆく。


パリィからの致命では8発かかった相手だが、

カウンターなら3発で撃破することができた。

やはり相手の攻撃力を活かす方がダメージが大きい。



最後にアーチャー2体の処理を行なった。

一応ナイトよりも攻撃力が高い難敵なのだが、

自分自身の体を削って石矢を作り出す性質につき、

防御に徹していれば勝手に自滅する相手でもある。

しかし自滅を狙うにはそれなりの時間を要するので、

一刻も早い救助を必要としている現状では

素直に討伐して戦闘を終わらせるべきだろう。


隼斗は石の盾を構えながら標的へと近づいた。

『魔力を持つ人間を優先的に狙う』という

基本的な性質は他の魔物と同じではあるが、

ナイトやメイジよりも索敵範囲が広いので

慎重に動くに越したことはない。


そして処理の方法だが……“同士討ち”である。

隼斗はアーチャーの背後から腰に手を回し、

もう1匹に石矢攻撃が当たるように向きを変えたのだ。


しばらくすると攻撃を受け続けたアーチャーは

ゴロンと地面に転がり、二度と動かなくなった。

そして隼斗は密着中である最後の1匹を仕留め、

これにて無事戦闘終了だ。




窮地から救い出された5名の女子は、

ヒーローの姿を見て大層驚いていた。


それもそのはず。彼女たちは皆2年生であり、

てっきり3年生に助けられたのかと思いきや

1年生、しかも魔力を持たない大上隼斗が

たった1人で敵を全滅させたというのだから、

目の前の現実を受け入れるのは難しい。


だが事実だ。

隼斗は上級生パーティーのピンチを

見事に救うことができたのである。

これは誇ってもいい。


のだが……


(安土なら、あの妙な剣術で一掃したんだろうな……

 アキラさんなら、ナイトをヌンチャクにして……)


いまいち実感が湧かない隼斗であった。



救い出されたパーティーのリーダーは

早乙女(さおとめ)花凛(かりん)と言い、隼斗とは初対面である。

が、隼斗は彼女の顔を知っていた。

よく音楽室でモーツァルトを演奏している先輩……

勝手に変態だと決めつけていたあの人だ。


だが、隼斗がそう思ってしまうのも無理はない。

ショパンの先輩は初日こそ不穏な動きを見せたが、

それ以降はまともな選曲をし続けている。

しかし、モーツァルトの彼女はどうだ。


早乙女花凛は決して有名な楽曲を弾こうとはせず、

敢えてふざけたタイトルの曲ばかり演奏するのだ。

モーツァルトに限らず、である。

それはクラシック作家に変態が多い証明でもあるが、

曲を選んでいるのは間違いなく彼女自身なのだ。


やはり早乙女花凛は変態である。



帰り道、隼斗は早乙女パーティーの護衛をするべく

最後尾を歩いていた。

彼女たちは背後への警戒を怠ったせいで

石人形から挟み撃ちに遭ったとのことなので、

当然といえば当然の配置であると言えよう。


だが、隼斗には別の狙いがあった。


(みんな小尻だな……

 女からすれば憧れのnice hipなんだろうが、

 俺にはボリューム不足だと言わざるを得ない)


隼斗はデカ尻が好みなのだ。


『俺の尻を舐めろ』なんて曲を弾いていた早乙女とは

もしかしたら気が合うのかもしれないが、

隼斗が興味あるのはあくまで肉の部分であり、

その穴や中身に強い関心があるわけではない。

ちなみにモーツァルトは後者だと云われている。


尻好きにも色々あり、一枚岩ではないのだ。


尻は奥が深い。

基本情報

氏名:鳩中 剣 (はとなか けん)

性別:男

年齢:16歳 (7月20日生まれ)

身長:163cm

体重:59kg

血液型:A型

アルカナ:力

属性:雷

武器:レプリカリバーPRO・雷神モデル (片手剣)

防具:戦士の鎧 (軽鎧)


能力評価 (7段階)

P:4

S:7

T:5

F:5

C:4


登録魔法

・サンダーボール

・ヒール

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