1年目6月
新入生が攻撃魔法を使えるようになってきた。
とはいえまだ使いこなせるレベルには及ばず、
体内の魔力をわずかに出力できる程度である。
それでも生徒たちは自分が魔法能力者なのだと
改めて再認識させられ、俄然やる気を出していた。
攻撃魔法は視覚的にわかりやすい。
炎氷雷のボールやストームが発生するのだから、
「あ、今あいつ魔法使った」という情報を
周りの人間にすぐ伝えることができる。
それ以外の補助魔法は目に見えない物ばかりなので
ちゃんと効果が発生したのかどうかわかりづらく、
練習のモチベーションが低い傾向にある。
そんなわけで新入生が最初に習得する魔法は
何かしらの攻撃魔法である場合が多い。
そう、攻撃魔法……敵にダメージを与える技術だ。
それが魔物に対して行使されるのならば問題は無い。
だが、中にはいるのだ。
人間に対して使ってみたいと思う輩が。
「きひひひ!
とうとう俺様も使えるようになったぜぇ!
一撃必殺のサンダーストームってやつをなぁ!
こいつで安土の野郎を地獄に落としてやんよぉ!」
高木は調子に乗っていた。
攻撃魔法を覚えたての生徒にはありがちな変化だが、
それ以外の要素もあって攻撃性が高まっていたのだ。
彼は少し前にイカサマでカモを嵌めようとした結果、
逆にイカサマ返しをされて完全敗北してしまい、
罰ゲームで隼斗に食券2ヶ月分を奢る羽目になった。
誰が悪いのかといえば高木自身と相棒の嶋田だが、
彼は『安土が知らない魔法でイカサマをした』と
思い込んでおり、その件を根に持っていた。
要するに逆恨みだ。
「おい、やめとけ高木!
また返り討ちにされるだけだぞ!
もう充分痛い目に遭って思い知っただろ!?
弱者には弱者の生き方があんだよ!」
相棒の嶋田はすっかり反省しており、
小悪党から小物へとランクダウン……
否、人間的にはランクアップしていた。
「つうか高木、お前も反省してただろ!?
世の中には手ぇ出しちゃいけない奴がいるってさ!
あの時の屈辱を思い出せ!
……ほら、大上からも何か言ってやってくれよ!」
「えっ」
キラーパスである。
隼斗は今月分の食券代を受け取りに来たのだが、
高木が何か悪巧みしているのを察して
おとなしく成り行きを見守っていた。
だがまあ仕方ない、お望み通り何か言ってやろう。
「高木は安土に対人戦を申し込む予定なのか?
こないだの鳩中戦での無双っぷりを見る限り、
1発や2発攻撃魔法を放てるようになったところで
勝ち目があるとは思えないな」
もちろん違うのだろう。
高木は正面から堂々と強者に挑むような奴ではない。
何かもっと卑怯な方法を企んでいるはずだ。
たとえば闇討ちとかだ。
「きひひひ!!
この俺様が正々堂々とやり合う男に見えるか!?
闇討ちすんだよ闇討ちぃ!!
安土が階段歩いてる時とか狙って、
ビリッと一発サンダーを当ててやんのよ!!
そしたら奴はバランスを崩してジ・エンドォ!!」
なんてゲスい……。
毎年それで数名の逮捕者が出ているという事実を
高木に教えてやるべきだろうか?
いや、既に座学で習ったはずだ。
相棒の嶋田もそれは承知しているだろう。
「おおっ、その手があったか!!」
こいつもだめだった。
隼斗は高梨いちごに連絡を取り、
今日は訓練室に来なくてもよいと伝えた。
すると放課後、訓練室前の廊下に安土が姿を現す。
例のムカつく立ち方でだ。
改めてストーカーバリアの偉大さを思い知るが、
その検証のために彼を近寄らせたのではない。
「安土
俺以外にもお前の首を狙ってる奴がいるようだ
まあ闇討ちなんかでくたばりはしないだろうが、
俺は奴らには手を貸さないとだけ伝えておくぞ」
「ふん、そんなことか
どうせなら大上も襲撃に加わればいいじゃないか
たしかお前は俺と戦いたかったんだろ?
そして俺は思い上がったザコ共を一掃できる
互いにとって悪い話じゃないと思うが」
「俺は1対1でやりたい
それだけだ」
「話は終わりか?
俺はもう行くぞ
お前と違って忙しい身なんでな」
(待ち伏せしといて何言ってんだこいつ……)
後日、隼斗は指導室に呼び出された。
先生から怒られる部屋という印象があるが、
当学園においては主に生徒と訓練官が
内密な話をしたい時に利用する場所である。
今回は内密にしなくてもよい話だった。
「喜べ大上、
今日からお前もダンジョンで活動していいぞ
1学期が終わるまでは様子を見るつもりだったが、
あの室戸に完全勝利を収めたのなら大丈夫だろう」
「おお……ありがとうございます!
これからも精進いたします!」
「うむ、いい意気込みだ
だが無茶はするなよ
お前は普通の人間なんだ
いくら拳を鍛えたところで限度がある
素手で岩の塊をぶち壊すことなど不可能だ」
「ええ、わかってますよ
俺は第2の甲斐晃なんて目指してないので、
そんな非現実的な戦い方をしようとは思ってません
使える物はなんでも使っていくつもりです」
「ほう……
それが聞けて安心した
あいつの真似をして拳を壊した生徒を
何人も見てきたからな……
とにかく安全第一を心掛けていけよ
今日もゼロ災でいこう、」
「ヨシ!」
そして初の冒険活動中、事件が起こる。
安土が妙な剣術で斬撃を飛ばすのを間近で目撃し、
隼斗は驚きと感激で純粋に褒めてやったのだ。
「安土……
すごいな、お前
どうやってるんだ?
古武術の遠当てみたいなもんか?」
対する安土の返答は……
「お前に褒められても嬉しくない」
その台詞には聞き覚えがあった。
それだけではない。
これまでに安土が放ってきた数々の台詞、
「お前と一緒にするな」
「お前に用などない」
「俺は暇じゃない」
「お前など俺の足元にも及ばない」
など、その全てに聞き覚えがあったのだ。
そしてあの立ち方だ。
腕組みしながら壁にもたれかかり、
目を瞑ったまま嫌味を言うあのスタイルは……
変身ヒーロー“メタルハーツ”のライバルキャラ、
“クロムシャー”の黒木剣そのままである。
間違いない。
安土もあの深夜番組を知っているのだ。
それもただぼんやり観ていただけの視聴者ではない。
キャラ再現をしてしまうほどの重度のファンなのだ。
それがわかると少しニヤリとしてしまう。
何を勘違いしたのか亀山千歳と猪瀬牡丹が
「どんまい」とでも言いたげな視線を送ってきたが、
隼斗はこの瞬間、落ち込んでいたわけではない。
割と楽しい気分だったのである。
その後の活動で隼斗が初めて魔物を倒したり、
安土と神楽と犬飼杏子が倒れてしまったり、
首切姫がヤバい代物であると発覚したりと
色々あったが、大収穫の日であったのは確かだ。
後日、廊下で全身包帯姿の2人とすれ違う。
嶋田と高木である。
何があったのかは聞くまでもない。
どうせ安土に奇襲を掛けて返り討ちに遭ったのだ。
「くっそ〜、やられちまった……」
「やっぱり闇討ちなんてするもんじゃねえな」
「いや、俺に報告しなくてもいいぞ
その悲惨な姿で一目瞭然だし……」
「しっかし安土も手加減しない性格だよな〜」
「ダンジョン内で吹き飛ばされて全身ボロボロだよ」
「まあ突起物だらけの地形だからな
……というか安土は手加減しただろう
もしあいつが本気出してたら、お前ら死んでるぞ」
「死……」
「もう二度と安土には手ぇ出さねえ!!」
再び反省する嶋田と高木であった。
基本情報
氏名:高梨 りんご (たかなし りんご)
性別:女
サイズ:C
年齢:15歳 (12月26日生まれ)
身長:147cm
体重:40kg
血液型:B型
アルカナ:恋人
属性:炎
武器:ショートショートソード (短剣)
防具:戦士の鎧 (軽鎧)
能力評価 (7段階)
P:4
S:5
T:5
F:3
C:3
登録魔法
・ファイヤーボール
・ディーツァウバーフレーテ




