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進め!魔法学園2  作者: 木こる
12000回目の自殺
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1年目5月

今年の新入生の中に“狂犬”と恐れられる男子がいた。

名を室戸(むろと)亜鈴(あべる)

治安の悪い地区で生まれ育った彼は

当然の如くガラの悪い連中とつるむようになり、

不良同士の抗争に明け暮れてきた人種である。

彼は恵まれた骨格の持ち主であり、

中学を卒業する頃には身長が190cmを超えており、

体重イコール強さの世界では無敵の存在だった。


ただ己の強さを誇示するためだけに

不良以外の者を血祭りに上げるような悪童なのだが、

どこで間違えたのか天が二物を与えてしまった結果、

彼には飛び抜けた魔法の才能もあった。


まともな高校ならそんな危険分子を受け入れたいとは

思わないだろうが、ここは魔法学園である。

魔物を殺す才能があるのならなんだって構わない。

実際、こういう輩がプロ冒険者の世界では

なかなかいい仕事をしてくれるのである。



その巨漢が校舎の廊下を我が物顔で闊歩し、

威圧された生徒たちは通行の邪魔にならないように

そそくさと壁際へと退避して視線を逸らす。

なんだか大名行列を彷彿とさせる光景だ。


そして教室から2人の女子が出てくると、

室戸はさも当然のように彼女たちの肩に手を回して

両手に花状態を周りの男子たちに見せつけながら

ゆったりと廊下を練り歩くのだった。

まあそれは羨ましいといえば羨ましい光景なのだが、

どちらの女子もケバケバしい化粧をしているので

悔しがる男子は1人もいなかった。


そんな室戸に対して正面から堂々と話しかける者が

……まあ、落合訓練官である。

今まで不良上がりの生徒なんて大勢見てきたし、

仮免のひよっこ相手にビビるようなタマではない。

もし室戸から攻撃されたとしても制圧は容易い。

そんな大人の余裕が滲み出ていた。


「室戸、ちょっといいか?」


「ぁん?

 なんすか先生

 くだらねえ説教とかやめろよな」


なんとも礼儀がなっていない。

が、どうでもいい。

そういう躾は訓練官の仕事ではないのだから。


「今月から対人戦闘訓練が始まるんだが、

 その初戦に出場してみないか?

 相手は1組の安土桃太郎を予定している

 現状で最強スペック同士の組み合わせだ

 きっと盛り上がるぞ」


その情報は確かだった。

先月行われた戦闘訓練や冒険活動のレポートなどから

総合的に判断して、現時点での最強の新入生は

この2人以外にはあり得ないと判断したのだ。

だが……


「やんねえよボケ

 どうせ俺をかませ犬にしようとか考えてんだろ?

 誰がその手に乗るかってんだよ」


「ほう、意外だ

 お前は安土みたいなハーレム野郎を

 放置しない奴だと思っていたが、

 負けるのが怖くて逃げ出すとはな」


「あ〜はいはい、安い挑発ね

 その手にも乗ってやんねえよ

 俺は弱い者いじめが好きなだけであって、

 強いとわかってる奴とやり合う気はねーのよ

 それに俺は謙虚なんでね

 女なら間に合ってるし、ハーレムなんざ興味ねえ」


「謙虚、ねえ……」


両手に花で立ち去る室戸の背中を見つめながら、

やれやれとため息を吐く落合訓練官であった。






ある日のこと、隼斗は廊下で鳩中と鉢合わせ、

ダンジョン内の様子を教えてもらったりして

冒険者トークに花を咲かせていた。


しかし、不運にもそこへ室戸が通りかかる。

恐れをなした鳩中はすぐに壁際へ飛び退いたが、

隼斗は迫り来る室戸の存在を感知していながらも

その場から動こうとはしなかった。


「おいどけ邪魔だ」

その言葉と同時に右ストレートが飛んでくる。


が、隼斗はスウェーで回避。

「通れるだろ」



唐突に睨み合いが始まり、顔面蒼白の鳩中は

膝をガタガタ震わせながら壁伝いに逃げ出した。

対する隼斗は自分より遥かにデカい相手を前にしても

怯む様子は無く、それどころか内心喜んでいた。


この1ヶ月でどれだけ成長できたのか試せるのだから。


「おいチビ

 今なら財布よこすだけで勘弁してやるよ

 あと全裸で土下座しろ

 それと半殺しだけで済ませてやる」


「お前は男の裸が見たいのか?

 悪いけど俺は女が好きなんだ

 趣味が合わなくて残念だったな」


そしてこの挑発である。


室戸が狂犬と呼ばれているのは知っていたが、

隼斗もまた、心の中に狂犬を飼っていたのだ。



再び右ストレートが飛んでくる。

さすが喧嘩慣れしているだけあって、

コンパクトな動きで的確に急所を狙ってくる。

隼斗はそれをダッキングで回避。


すると室戸は隼斗の顔面を狙って膝を振り上げた。

後ろへ逃げればその攻撃はかわせるが、

体勢を崩して相手にチャンスを与えることになる。

なので隼斗は被弾覚悟で前進する道を選び、

ヘッドスリップで攻撃をかわしながら反撃に出た。


渾身のパンチ……ではなく、ただ押しただけだ。

片足で立っている室戸の上半身を強く押し込み、

バランスを保てなくなった巨漢は両手をバタつかせて

背中を床に強く打ちつけたのである。


思わぬ反撃を受けた室戸は激しく動揺するも、

すぐに立ち上がろうと身を起こ──せなかった!


隼斗のサッカーボールキックが室戸の顔面に炸裂!!


非常に危険な技である。

良い子は真似してはいけません。



強烈な一撃を喰らった室戸は鼻の骨が折れ、

前歯を失い、血と涙をダラダラと流しながら

匍匐前進でその場から逃げ出そうとした。

が、背中を踏みつけられて身動きが取れなくなる。


これからトドメを刺されるという恐怖に耐えながら

首を横に向けてなんとか勝利者の顔を見上げると、

そこには無表情でこちらを見下ろす男が立っていた。


それが一番怖い。


怒るでも笑うでもなく、なんとも思っていない表情。

人間は理解できないものを恐れるように出来ている。


あれは人を殺したことがある奴の目だ。

この男は何をしでかすかわからない。

……というのが室戸の視点だったのだが、

隼斗はただ慎重に敵を観察していただけである。


まあ、それもそれで怖いのだが。


「なあ、室戸

 踏みつけながらで悪いけど、

 お前に頼みがあるんだ」


「ぶぇっ!?

 ひゃ、ひゃい!!

 なんでもききましゅ!!」


「財布も土下座もいらないから、

 また俺と戦ってくれないか?」


「やっ……もうかんべんしてくだしゃい!!

 おりぇがわるかった!!

 ころしゃないで!!」


フラれてしまった。


隼斗は『怪我が治ってから』再戦したかったのだが、

室戸には『今すぐ続きをやろう』と聞こえたのだ。

口語表現の難しさである。




後日、室戸は人知れず自主退学してしまった。

元々授業や訓練をサボる不真面目な生徒だったので、

『単にやる気が無くなって辞めたのだろう』

というのが同期生たちの反応であった。

防犯カメラの映像で一部始終を把握した訓練官たちは

「注目を浴びたくない」という隼斗の意思を尊重し、

この一件は内密に処理された。


「な、なあ大上……」


5組の教室へやってきたのは鳩中だ。

彼は見るからに申し訳なさそうな顔をしており、

室戸に恐れをなして1人で逃げ出した件を

後悔しているのが丸わかりだった。


「ああ鳩中、こないだの件か?

 俺なら見ての通り何もされてないよ

 あの後、室戸が転んだ隙に逃げ切ったんだ」


「ほ、本当か!?

 いや〜、よかったよかった!

 あれからずっとお前のこと心配してたんだぜ!

 でも、どんな顔して会えばいいのかわからなくてな

 とにかく無事だったなら結果オーライだな!

 もしまた同じようなことがあったら、

 その時は一緒に逃げると約束するぜ!」


「一緒に戦ってくれるんじゃないのか?

 まあ、それでもいいけど」


鳩中は臆病な一面を晒したが、悪いことではない。

いち早く危険を察知して現場から遠ざかる行為は、

まさしく安全第一の理念に則っている。

彼はいい冒険者になるだろう。



そして鳩中はいい仕事をしてくれた。

今月から開始された対人戦闘訓練にて、

安土桃太郎がどれだけ強いのかという

素朴な疑問を解消してくれたのだ。


結論、今は勝てない。

基本情報

氏名:高梨 いちご (たかなし いちご)

性別:女

サイズ:C

年齢:15歳 (12月26日生まれ)

身長:147cm

体重:40kg

血液型:B型

アルカナ:恋人

属性:炎

武器:ロングロングソード (両手剣)

防具:星読みのローブ (衣装)


能力評価 (7段階)

P:3

S:3

T:3

F:3

C:3


登録魔法

・アナライズ

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