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進め!魔法学園2  作者: 木こる
未来を切り拓く意志
70/100

亡霊

他人(ひと)の金で食う焼肉ほど美味(うま)い物はない。

それを体現するかのように、都内の高級焼肉店にて

鳩中たち4人は特上肉のフルコースを堪能していた。

支払いは大先輩である進道千里が全額負担。奢りだ。


まあ彼は金持ちのボンボンなので痛い出費ではない。

だが、他に思うところがあって険しい顔をしていた。

そんな彼に対し、黒岩真白がビールジョッキ片手に

ほろ酔い気分で話しかける。


「ねえねえ、どったの?

 久々の焼肉なんだし、暗い顔やめよ?

 今夜は仕事なんて忘れてパアッとやろうよ!」


「お、おう

 おれもそうしたいのは山々なんだが、

 どうしても引っかかることがあってな……

 裏ダンジョンで鳩中たちに戦わせた時、

 一体誰が攻撃デバフをばら撒いてたんだ?」


「誰って、そりゃあミナでしょ?

 それ以外に使い手がいないんだからさ!」


「いや、それは違う

 おれは魔力探知のスペシャリストだ、

 魔法に関する調査で絶対にミスは犯さねえ

 あの日並木は一度も攻撃デバフを使ってないし、

 魔力残滓を分析した結果、別人の物だった

 つうか痕跡が完全に消えちまってた

 ともかく、あの場所には確かにもう1人いたんだ

 おれたちと活動を共にしていた誰かがな……」


「ちょっ、それって冬の怪談的なやつ!?

 ほら、雪山で遭難した4人が山小屋で!!」


「ああ、それに近いかもな

 お前も当時の状況をよく思い出してみろ

 鳩中パーティーが5人だったような気になるはずだ

 それがさも当然のことであったかのように……」


「やっ……怖い怖い!!

 でも当たってる!?

 何これすごく怖い!!」


「カメラが生きてりゃ一発で確認できるんだが、

 あのフロアではなぜか映像が乱れるからな……」


そう2人で盛り上がっていると、

困惑した顔の鳩中が会話に割り込んできた。


「あ、進道さんも同じ違和感を覚えてたんですね?

 実は俺たちもなんか変だよなあって思ってて、

 もしかしたら……って話をしてたとこなんですよ」


「もしかしたらって……そりゃどういう意味だ?」


鳩中は真剣な表情で答えた。



「あれは、名倉の亡霊だったんじゃないかと」



場が静まり返る。


名倉友紀が行方不明になってから約1年。

警察や調査隊による懸命な捜索も虚しく、

彼に関する手掛かりは一切得られなかった。


当初、彼は魔物との戦いに怖気付いて

学園から逃げ出したという説が囁かれたことがある。

しかし入学前の人物調査によると彼は勇敢な性格で、

自分の力を世の中の役に立てたいと発言しており、

その言葉に嘘は無かったように思える。

もし仮に気が変わったのなら辞退すればいいだけだ。

わざわざ行方を晦ませる必要がどこにあろうか?


「あれだけ警察が捜しても見つからなかったんです

 名倉はきっとダンジョンで魔物にやられて──」


「いや、それはねえよ

 このおれが名倉の個人情報を徹底的に調べ上げて

 学園や近隣のダンジョンで魔力波長を照合したが、

 記録通りあいつが潜った痕跡は見られなかった

 他の専門家たちによる調査結果も全く同じだ

 もし死んだとしても、ダンジョンの中じゃない

 それだけは確実に言えるぜ」


そして警察による捜索でも『痕跡無し』だ。

今年の4月3日、関東魔法学園1年2組の名倉友紀は

午後2時に戦闘訓練を終えた後、1階の自動販売機で

500ml入りのコーラを購入してから男子寮へと戻る。

校内の防犯カメラで確認できたのはそれだけだ。

その後はいくら待てども名倉友紀の姿を確認できず、

学園敷地内の全ての施設を調べても何も出てこない。


尚、名倉友紀の部屋には飲みかけのコーラと

一口も手をつけていないカップ麺が残されており、

お湯を注いだ後そのまま放置していた物と思われる。

訪問があったという記録や誰かと争った形跡は無く、

部屋を荒らされたり何かを盗まれたりもしていない。


家族や小中学校時代の教師、元同級生などの話から、

彼は快活で社交的な人柄であるため友人が多く、

誰かから恨まれたりするような可能性は極めて低い。

一応、交際していた女子と少し揉めたことはあるが、

彼女とは1年以上前に円満な話し合いの末別れており、

名倉友紀が消えたとされる4月3日午後3時には

地元の喫茶店で寛いでいたというアリバイがある。


身代金の要求が無いので誘拐の線も薄い。

そもそも名倉家の収入はごく平均的なラインであり、

言い方は悪いが、取れる物があまり無いのだ。

限りなく低い可能性を想定するならば、

どこかの金持ちの変態が道楽でデスゲームの参加者を

無作為に選出して連れ去った……という可能性だが、

それならば似たような失踪事件が発生しているはず。

だが、それも無いのでやはり違うのだろう。


とにかく何もかもが不可解な消失。

それが“名倉友紀失踪事件”なのである。






後日、調査隊の並木美奈は仲間には内緒で

東京都港区の高層マンションへと足を運んだ。


そこは最下層でも年収1千万円以下の入居者はお断りな

富裕層限定の住居……通称“セレブタワー”だった。

上層になるほど住民の“格”が高まるシステムが存在し

最上階ともなれば、まさにセレブの頂点と言えよう。


そこは不動産王・森川可奈子の自宅となっているが、

実際に住んでいるのはその娘と、娘の友人である。

並木美奈はその2人に用があったのだ。



ピンポーンとチャイムが鳴り、最上階に住む2人は

PCゲームを続けながらジャンケンをする。

負けてしまった方は「チッ」と軽く舌打ちしてから、

いかにも面倒臭そうに来客モニターを覗き込んだ。

すると、そこにはニコニコと笑う元同級生の姿が。


「げえっ、並木美奈!

 何しに来たのあいつ!?」


「え、嘘、やだ!

 絶対に出ちゃだめ!

 居留守使って!」


魔法学園時代の知り合いが訪ねてきたというのに、

彼女たちはそれを快く思っていなかった。

並木美奈は一時期苦楽を共にした戦友ではあれど、

それほど親交が深かったわけではない。

むしろインドア派の2人にとって苦手な存在なので、

並木美奈は完全に招かれざる客であった。



執拗なチャイム攻撃は10分間続けられた。

その間2人はヘッドホンの音量を最大にして、

目の前のゲームに集中することで耐え凌いだ。

だが画面内では操作中のキャラがダメージを受け、

普段ではあり得ないミスを犯して怒りが込み上げる。

全く集中できていない証拠だ。


そして今度は電話攻撃が開始される。

10秒間隔で振動するスマホが非常に鬱陶しいが、

大事な連絡が来るかもしれないので電源は切れない。

並木美奈はその辺の事情も理解しているのだろう。


「ちょっとしつこすぎない?

 普通、こんだけ拒否されたら諦めるよね

 もしかしたら真剣な話があるのかも……」


「騙されちゃだめ!

 あの女は面白がってるだけだから!

 前回はそれで散々な目に遭ったでしょ!?」


2人の脳裏に嫌な思い出が蘇る。


彼女たちは共に優れた冒険者になれる資質はあったが

その道には進まず、一般人として生きる選択をした。

それから外界との接触を極限まで避けながら、

ひたすらゲーム三昧の生活を続けてきたのだ。


港区で最も太陽に近い塔での日陰暮らし。

彼女たちはその生き方を気に入っていた。

しかし並木美奈と再会を果たしてしまい、

平穏が脅かされる結果となったのである。


並木美奈は一見地味な女だが鋭い洞察力の持ち主で、

少ないヒントからこちらの隠したい秘密を暴き、

それについて根掘り葉掘り質問してくるのだ。

しかも無理矢理聞き出そうとするのではなく、

話しやすい空気を作る会話術を巧みに織り交ぜて

自ら秘密を暴露する流れになってしまう。


2人はそうやって弱みを握られてしまったのである。



来客モニターを覗くと、なんか行列が出来ている。

1階のエントランスには10人ほどが整列しており、

タワーの住民が順番待ちをしているのだと理解した。

彼らは不満そうな顔をするだけで文句ひとつ言わず、

ただひたすら並木美奈が消えるのを待っていた。

彼女が“最上階の来客”だから何も言えないのである。


「うわ、下々の者たちが困ってるよ

 なんて迷惑な女……」


「はあぁ…………

 しょうがない、入れてやるしかないね」


こうして彼女たちはオートロックを解除したのだ。




森川早苗は前述した通り不動産王の娘であり、

実質この部屋の現場責任者と言っても差し支えない。

母親は仕事人間なので滅多に家に帰ってこないが、

決して親子仲が悪いというわけではない。

むしろお互いに一番やりたいことを優先させ合える、

ある意味完璧な信頼関係にあると言えるだろう。


杉田雪は居候の立場だが、ほぼ住民みたいなものだ。

単に森川早苗の親友というだけの存在ではなく、

ネットゲーム上では彼女の相棒、そして妻である。

とはいえそれはゲーム内での話であり、現実世界で

女性同士の恋愛に興味があるわけではない。


「ちなみに2人はゲームの大会で何度か優勝してて、

 その賞金を基にゲーム製作会社を立ち上げて

 自分たちが納得できる物を作ろうとしてるのよね」


「誰に対しての説明なの?」

「それよりなんの目的で来たの?」


「あと、2人はある雑誌のインタビューで

 アキラ君の元カノであるかのように匂わせて、

 奥さんからシメられたことがあったのよね」


「本当に何しに来たの!?」

「やっぱり入れるんじゃなかった!!」


憤慨する2人を前に、並木美奈はケラケラと笑う。

どうやら彼女に悪意は無かったようで、

ユーモアを交えた挨拶のつもりだったらしい。



「あんたたちが相変わらず元気そうで安心したわ

 今日は頼みがあって来たんだけど、いいかな?」


「すごく聞きたくないし、どうせ断るだろうけど、

 私たちが話を聞くまで帰らないんでしょうね」

「もういいからさっさと用件を伝えてちょうだい

 そして速やかにお引き取り願いたい」


招かれざる客は肩を竦めながらフゥっと息を吐き、

真剣な顔つきになってから用件を伝えた。


「名倉友紀失踪事件は知ってる?

 私たちの後輩が行方不明になっちゃったやつ」


「まあ、それくらいは知ってるけど……

 散々ニュースで取り上げられてたしね」

「まさか、その事件を解決するために

 手伝えとか言い出すんじゃないよね?」



「その事件を解決するために手伝え!!」



「言い出しやがった!!」

「何この人ふざけてんの!?」


「いやいや、大マジよ

 今まで何も手掛かりが無くて行き詰まってたけど、

 この度、進展っぽい出来事がありましてねえ……

 そこでユキちゃんの力を貸してもらいたいのよね」


「え、ユキの?

 私には関係無い話ってことだよね?」

「ちょっと待って

 それってつまり私に魔法使わそうとしてる?」


「うん

 あ(・)の(・)場(・)所(・)の秘密を暴くには、

 空間魔法の使い手が必要だと思ってね

 そもそもあの場所を開通した張本人なんだし、

 他に空間魔法を操れる人間なんていないしさ

 まあとにかく、そこで調べ物してほしいわけよ」


「ふーん、なるほどね……

 ユキ、大変だろうけど頑張って!」

「いやいやいや!!

 あの場所って、つまり、裏ダンジョンでしょ!?

 無理無理、絶対に無理だって!!

 冒険者辞めてから何年経ってると思ってんの!?

 私はもう一般人なんだってば!!」


無理難題を申しつけられて取り乱す杉田雪、

自分には無関係な話なので安心する森川早苗、

そんな2人を見て内心ニヤリとする並木美奈。


「一般人としてひっそり生きてるとはいえ、

 冒険者免許はまだ持ってるんでしょ?

 単なる身分証ってだけでなくマウント取れるからね

 一昔前は呪いのカードみたいな扱いだったけど、

 最近じゃ冒険者の評価がすっかり向上したおかげで

 憧れの職業TOP10以内にランクインしてるし」


「そうだよユキ!

 あなたはみんなの憧れなんだよ!

 私は陰ながら応援してるからね!」

「ちょっとは援護して!?

 ってか、早苗も免許持ってるじゃん!!

 マウント取りたいがためにさあ!!」


「あ、もしよければ早苗ちゃんも一緒にどう?

 ゲーム漬けの生活で運動不足なんじゃない?

 たまには体を動かさないとね」


「いえ結構、お構いなく

 私はユキ以上にブランク長いからね

 現場に出ても足手まといになるだけだよ」

「そんなことないよ早苗!!

 あんたはイメトレだけで痩せた女だし!!

 きっと現役の頃より強くなってるんじゃない!?」


「え、何その面白そうなエピソードは?

 これは詳しく聞き出す必要があるわね……」


「聞かんでよろしい!!

 とにかく私は行かないからね!?

 連れてくならユキだけにして!!」

「早苗……この裏切り者!!

 ええい、こうなったら道連れだ!!

 行ってやろうじゃないの、裏ダンジョン!!

 早苗も強制参加させるからよろしく!!」


「よし!!」


「冗談じゃない!! 誰が行くもんか!!」

「私の空間魔法からは逃げられない……!!」


こうして調査隊は協力者を2人得たのだった。

基本情報

氏名:杉田 雪 (すぎた ゆき)

性別:女

サイズ:A

年齢:24歳 (2月14日生まれ)

身長:145cm

体重:40kg

血液型:A型

アルカナ:世界

属性:無

武器:毒針 (槍)

防具:フェアリーテイル (衣装)


能力評価 (7段階)

P:2

S:3

T:5

F:7

C:8


登録魔法

・テレポート

・セブンスサイン

・バタフライエフェクト

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