ロヂャース回
鳩中パーティーは本日の冒険活動を切り上げ、
学園に帰還したのは午前11時半だった。
彼らのように休日の朝っぱらからダンジョンに潜り、
レベルアップを目指す生徒は珍しい。
大半は平日の放課後に暇な者同士で手を組み、
その目的は小遣い稼ぎであることが多い。
なんにせよ彼らは純粋に冒険者としての成長を望み、
その実力は学年内でNo.3の座に納まっていた。
No.1は言わずもがなチームブラックである。
「さ〜って、腹減ったな!
まだ12時前だけど飯にすっか!」
鳩中がそう言うので一行は食堂へ向かおうとするが、
柿沼美和子はふと思い立ち、足を止める。
「ねえ、みんな
少し遠いけど、ロヂャースに行ってみない?」
「ロヂャース?」
「なんだ、ファミレスか?」
「聞いたことないなぁ」
「ロヂャースはね、ディスカウントスーパーなの
人件費などのコストを極力抑えることで
通常のスーパーよりも安く商品を提供できる
というのがディスカウントスーパーの魅力よ」
「へえ、そんなのあったんだな」
「スーパー王国の埼玉には他にも優良店があるけど、
今回はロヂャースを紹介させてもらうわ」
「うーん、でもスーパーなんだろ?」
「わざわざ遠出するほどかねぇ?」
「ええ、その価値はあるわ
今の私たちは学割の恩恵を受けられているけども、
卒業したらそれも無くなっちゃうからね
自由に動けるうちに安い店を知っておけば、
後々の無駄な出費を抑えられるはずよ」
「なるほど、一理あるな
せっかくカッキーが誘ってくれたんだ、
俺は行ってみるぜ!」
鳩中に続き、猿渡と高梨りんごも賛同した。
そして現地に到着した一行は早速驚かされる。
「はえ〜……思ったよりでかいんだな
コストを抑えてるって言うから、
もっとこぢんまりしてるのかと思ってたぜ」
「立体駐車場もあるぜ
なんでかワクワクして好きなんだよ、立体駐車場
あの離陸前のパイロット感というかさ……
いつか自分の車買ったら来てみるかな」
「へえ、中も綺麗じゃん
乱雑な風景を想像してたけど、
下手すると普通のスーパーより整然としてるかも」
「企業努力の賜物よ」
調味料コーナーで鳩中が足を止めた。
「おっ、マジか!
スコーピオンソース置いてあんじゃん!」
「なんだそれ?
って、うわ……10倍の辛さのタバスコかよ」
「クルッポは激辛好きなん?
甘党の私には絶対無理だな〜」
「いや〜、俺も昔は辛いの苦手だったけど、
中学の先輩から罰ゲームで食わされてるうちに
いつのまにか耐性が出来ちゃったみたいでさ、
普通の辛さじゃ満足できなくなったわけよ
今までネットで取り寄せてたけど、
これで仕入れ先の選択肢が増えたな」
「この豊富な品揃えも魅力的でしょ?」
飲料コーナーで猿渡が足を止める。
「おお、トマトジュース安っ!
150円切ってるのなんて初めて見たぜ
今日は特売日だったのか?
とりあえず2本買っとくか!」
「500mlのお茶系なんて50円以下だぜ!」
「エナジードリンクが100円切ってる!」
「これぞディスカウントスーパーの醍醐味よね
プライベートブランドとの提携や大量仕入れにより
物流コストを抑えているおかげで、
ここまでの安さを実現できているのよ」
ふと、高梨りんごが尋ねる。
「そういやここって2階建てだよね?
1階は食料品のフロアとして、上には何があるの?」
「薬や日用品、それに服や靴などを販売しているわ
日常生活で必要な物が大体揃っているから、
他の店とハシゴしなくてもいいのが助かるわね」
そして一行は弁当コーナーへとやってきた。
「うおお、本当に300円以下!
それも1種類だけじゃない!」
「こりゃたまげたな……具材も豊富だぜ
例えばこのアジフライ弁当なんて
磯辺揚げとウインナーにコロッケが付いてきて、
キャベツ、きんぴらごぼう、桜漬け、と
野菜の面でも抜かりがない
まあ大柄な俺には少し物足りなさそうだから、
他にも単品でおかずを追加させてもらうけどな」
「うちの近所のスーパーで売ってる弁当なんて、
申し訳程度にレタスが1枚入ってるだけだよ
それで400円だの700円だの取られるんだよねぇ
もう絶対にあの店では買わない」
「みんなボリュームと値段に驚いてるようだけど、
味の方もちゃんと美味しいから安心してね」
とりあえず一通り必要な物が揃ったので、
柿沼美和子はマイカイカードにて会計を終える。
「それって電子マネーみたいなもんか?
いちいち現金出さなくていいから便利だな」
「ええ、しかもマイカイ会員だと特定の商品が
値引きされて、更に安く買い物ができるのよ」
「へえ……って、うおお!
結構色々買ったはずなのに、
3千円以内に収まってるぜ!
こりゃ本当にお買い得だな!」
一行は最寄りの公園で激安弁当を堪能し、
上機嫌で本日の感想を述べ合った。
「今日はありがとな、カッキー!
いい店を紹介してもらったぜ!」
「俺は正直期待してなかったんだが、
スーパーの弁当も案外いけるもんなんだな」
「来てよかったよ、カッキー
そういや他にも優良店があるとか言ってたし、
いつかそれも紹介してもらおうかな」
「満足していただけたようで何よりだわ
やっぱり連れてきてよかった!
またいつか一緒に来ましょうね!」
「ああ!」
「おう!」
「もちろん!」
「ふふっ」
「「「「 みんなも行こう、ロヂャース! 」」」」
私の自宅から最寄りのロヂャースまでは
徒歩40分の距離なので、往復1時間20分かかります。




