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ボクっ娘小説家のトラブル解決ログ  作者: 卯月 絢華
Phase 02 刀は知っている

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5

 呆気ない結末を迎えた「日本刀連続殺人事件」の解決から数日後。

 僕と城戸口杏奈は――藤崎沙織のマンションにいた。当然だけど、テーブルには藤崎沙織もいる。

 藤崎沙織は、スイカを食べながら話す。

「――それで、あの後どうなったのよ?」

 事件の顛末について説明したのは、僕の方だった。

「ああ、沖野聡一は殺人の罪で現行犯逮捕された。銃砲刀剣類登録証を持っていたから銃刀法違反には抵触(ていしょく)していないんだけど、それでも矢っ張り刀で人に危害を加えることは――あってはならないと思う」

「それはそうよね。仮に私がそういうモノを持っていても、『これは危険物だ』って分かるんだからさ」

「確かに。――でも、中々面白い推理ショーだったって杏奈ちゃんから聞いてるわよ?」

 藤崎沙織の言葉に対して、僕は――謙遜した。

「そんな大それたモノじゃない。僕はただ、杏奈の手助けをしただけだ」

「なるほどねぇ……まあ、いいんじゃない?」

 城戸口杏奈が、僕と藤崎沙織の会話にツッコミを入れた。

「それ、マジで言ってんの? まあ、絢ちゃんがいなければこの事件は解決するどころか、迷宮入りしてた可能性も考えられるけど」

 それはそうか。――僕は、城戸口杏奈の言葉にそっと頷いていた。

 テレビからは、昼のワイドショー番組が流れている。コメンテーターが、一連の事件について解説していた。僕は事件の仔細を知っているので、コメンテーターの的外れな意見を――鼻で笑っていた。

 それはそうと、僕は藤崎沙織に――例のことについて聞いた。

「沙織、少しいいか」

「冬ちゃん、急にどうしたのよ?」

「あの時、どうして――京都に来られなかったんだ」

「ああ、事件を解決した日ね。――ゴメン、ちょうど父親とビデオチャットしてたの」

「ビデオチャットか。――どういう用件だ?」

「これ、冬ちゃんに説明しても大丈夫かしら?」

「ああ、余程のことがなければ」

 しかし、藤崎沙織の説明は――僕が考える「余程のこと」に抵触していた。

「実は、冬ちゃんから見て祖父に当たる人物――冬月定雄(ふゆづきさだお)さんがもう長くないのよね。定雄さん、末期の胃癌(いがん)なのよ」

「……、そうか」

 冬月定雄。――僕の祖父に当たる人物である。彼は冬月家の現在の当主であり、僕に対して悪魔祓いのロザリオを託した張本人でもある。厳格な性格をしているが、僕が不登校だったことを知っているから、その件に関しては見逃してくれていた。

 そんなおじいちゃんが、危篤(きとく)状態? しかし、今更実家に帰ったところで、僕は歓迎されるのだろうか? 多分、「帰ってくれ」って言われるのがオチだろう。

 それでも、僕は実家に帰るべきか。主治医が藤崎医院なら、お見舞いも行きやすいだろう。

「――沙織、僕は豊岡へ帰るべきだろうか?」

 僕の質問に対して、藤崎沙織は覚悟を決めて答えた。

「帰った方がいいと思うわ。多分、定雄さんは喜ぶはずよ?」

 ――ああ、そうなのか。矢っ張り、帰るべきなのか。しかし、僕はここ5年――未知の疫病が発生してから――豊岡に帰っていない。一応、ビデオチャットで両親の顔は見ているが、それでも物理的な接触を取っている訳ではない。

 色々と考えた結果、僕は――決めた。

「――ここは、沙織の意見に従うか」

 僕の答えに対して、藤崎沙織は――喜んだ。

「そうね。『冬ちゃんが来た』って知ったら、定雄さんの寿命も少しは伸びるんじゃないのかなって思って。『犯罪者の未亡人』として冷たい目で見られるから、私は豊岡へと帰れないけど――冬ちゃん、詳しいことは追々ビデオチャットで説明してほしいわ」

「分かった。明日にでも、豊岡へ向かおう」

「そうね。早ければ早いほどいいわ」

 そういう訳で、僕は――急遽、里帰りをすることになった。スマホの日付を見ると、2024年8月23日(金曜日)と表示されていた。


 *


 翌日。僕は――バイクのギアを入れていた。万が一のために喪服も入れようと思ったが、それは実家でも間に合う。

 カワサキグリーンのバイクに跨り、2号線をひたすら西へと向かう。本来なら高速道路に乗るべきだろうけど、それは姫路からでいいだろう。

 姫路に着いたところで、僕は――高速道路へと上がった。確かに、バイクなら下道の方が良いのだけれど、その日は急いでいたので仕方がない。

 バイクは中国山地を抜けていく。その風は、心地よいを超えて吹き飛ばされそうになる。

 やがて、中国山地を抜けて生野(いくの)の方に入ると――風は()んだ。生野から豊岡まではすぐなので、僕は法定速度を守った上でギアを上げていった。

 高速道路の終点で降りて、僕は――豊岡のちっぽけな風景に失望した。子供の頃の僕は「豊岡で見えているモノ」が答えだと思っていたけど、それは間違いだった。「豊岡で見えているモノ」は箱庭の中の景色でしかなく、神戸や芦屋、西宮と比べると――あまりにも小さな世界である。

 シャッター街を通り越して廃墟と化した駅通りを通りつつ、僕は実家の方へと向かう。僕の実家は花街の名残がある場所なので、スナックだったモノが看板を外して鎮座している。

 そして、スナックだったモノの並びから右に曲がると――古びた鉄筋コンクリート造りの家が建っていた。それこそが僕の実家であり、冬月家の本来あるべき場所でもある。

 恐る恐る、僕はインターホンを押していく。

 インターホン越しから、母親の声がした。

「――あら、絢華。帰ってきたん?」

「帰ったで。何か悪いんか? それはともかく、おじいちゃんが危篤ってホンマなん?」

「せやで。――まあ、中に入って」

 そういう訳で、僕は――およそ5年ぶりに実家の中へと入った。

To Be Continued……

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